第16話 星宮 楓という名の少女5

「空くん、お疲れ様。」


同級生からいろいろ言われる日が来るなんて思ってもいなかった。まあ、納得して帰って行ったが。喫茶店でボッタくるどころか、逆に今度タダで奢る事になってしまった。

「……最悪だよ。」


「知り合いだったからラッキーじゃん。空くんの高校時代の話聞けて良かったよ。」

有咲さんにいろいろ言われた。


「はぁ、何で君が生まれ変わりって信じるんだろうか?」

本当に謎である。いろいろ説明する中で、自称幼馴染が、『私の前世が空くんの幼馴染何です。』って言って、それからしばらく説明しただけで何故信じる。


「それは、見た目も、昔の写真とそっくりだし。それに昔の空君の事知ってるからでしょ。」


……はぁ、幼馴染ね。

「……はぁあ。」


「それにしても尖ってたんだね。荒んでたんだね。高校時代の空くん。」


「うるさい」


「ごめんね。私がいなくて悲しくて荒んでたんだよね。」


「……幼馴染が急にいなくなったら、まあ荒んで捻くれるでしょ。」

まあ、うん。まあね。


「でも生まれ変わって戻って来たので、空くんの青春やり直せるね。」


「はいはい。」


「それで、何でめいちゃんと仲良かったんですか?空くん高校時代に友達いたんですか?」

話がコロコロと変わった。凄く幼馴染を感じた。しかし、一言言う事がある。


「バカにするなよ。」

友達はいた。普通にいた。


「だって昔も私以外と凄く仲良くしている事無かったじゃん。」


あの頃は、まあ幼馴染といるのが楽しかったし。私……彼女は幼馴染じゃない。生まれ変わり何てあり得ない。ありえないだけどな。

「幼馴染な。君は幼馴染じゃない。」


「空くん諦めないね」


「はぁあ、仲良くなった理由でしょ。」


「はい。」


「ざっくり言うといろいろあって、有咲さんがクラスメイトの中心人物に因縁を付けられた。その時に、幼馴染の誰かなら動くかなって思って動いた。」


「ある意味で私のおかげでめいちゃん先生は助かったんですね。」

自称幼馴染はドヤ顔をしていた。


「まあでも人を助ける方法とか分からないから、とりあえずクラスにいる全員に正論と屁理屈のナイフを振り回した。結果、有咲さんは助かりクラスが崩壊した。」


有咲さんがとある先輩に告白されて断り、それがクラスの中心の好きな相手で、それで地獄が発生した。その地獄を終わらせる為に、クラスの中心人物を口論で倒して、それに割り込んで来た人全てを正論と屁理屈で追い込んだ。アホだったと思う。絶対にもっと他に良い方法があったと思う。


「空くん…それでその後仲良くなったと」


「まあ、そんな所ですよ。これは良い話なのか悪い話なのか分からないですけどね。最初から仲良く出来るのが1番ですよ。」


自称幼馴染はしばらく黙ってこっちを見て、しばらくしてから

「……反抗期の空くん見てみたかったですね。」

そう言って笑っていた。流石に気を使っての発言だと言うことは分かった。まあ仕方ない反応に困るのだろう。


「前から、思ってたけど。気を使って言う冗談微妙だと思うよ。」

でも、この流れでそんな冗談を言うのはどうかと思う。


「前?やっぱり、心の底では認めてますよね。幼馴染って空くん。」

あっ、まあでも僕は今回の件でいろいろ損害を受けた。でも収穫もあった。


「有咲さんに勉強してないって吹き込んでおきますね。」


「ちょっと、やめてよね。空くん。」

自称幼馴染との会話は楽しかった。

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