Episode15

4人が畑を持ち、野菜が収穫できて半月が経過した

相変わらずかのりとミイの育てた野菜などが売れ行きが好調で嫉妬するしかなかったが、4人の野菜も負けてはいなかった

今はまだまだ夏のシーズン。夏野菜だって売れる話であった。あまりそこらへんは変わっていない

だがこの競争、いつまで続くのだろうか。諦めたら終わりだろうか?ゴールにするのか、わからない

4人だって負けてはいられない。相手は2人だ。こちらは4人。知恵を出し合えばきっと何かできる

…そんなことを考えつつメイは一人組合センターへと足を運び指定された苗を買おうとしていた

自分達の育てた野菜の売れ行きをチェックしつつ目的の物を買う。それだけだった

メイ「えーと。ブルーベリーの苗とひまわりの苗。しかしここはなんでも売ってるわね~」

その一方で育てた野菜の売上金を受け取る。意外とお金にできた。メイはほっと一安心していた

不審者のように辺りを見渡す。今日はかのりとミイがいない。また嫌味を言われそうで嫌だったからだ

華奈がいたらまたうつ病を発症してしまう。正直、今後もあまり会いたいとは思わない

そそくさ帰ろうとしたらすぐに帰れない事案が発生してしまった

加古「あら。メイ。今日は一人?」

先輩の加古であった。メイは仕方なく話をすることにした

メイ「はい。農場でまた新しいのを植えようかと思ったんです」

そう言うと買った苗を加古に見せた

加古「いいわね。そういう心構え、大切よ。やっぱり貴女達をあの畑を紹介したのは正解ね」

メイ「いえいえ。かのり達には負けたくないので」

ライバルを言った。だが加古は冷静な口調で言う

加古「かのり達?彼女らは大きい農場を持ってるからそれ一筋で頑張ってるからね。勝つには難しいと思うけど…

ただ、貴女達ならきっとかのり達を超えるような作物が作れると思うわ。応援するわ」

先輩に応援された。その期待に答えないといけない。メイの言う言葉はひとつだ

メイ「ありがとうございます!頑張ります!」

そう言うと加古はふと、思い出したことを言う

加古「そう言えば貴女達の畑の側に実はもうひとつ畑があるのよね」

え?なんだ急に。メイは初耳レベルのことを聞く

メイ「そうなんですか?」

メイが言うと加古は説明する

加古「貴女達の畑の更に向こう側。畑から5分程度かしら。そこには何も手につけてない畑があるのよ

昔、老人がそこを耕していたけど今誰もいなくてね。もし、貴女達が使いたいというなら案内してあげるわよ?」

どうしようか?だが、かのりには負けたくない。答えはひとつだった

メイ「もしよければ案内してもらえます?」

メイが言うと笑顔で加古は言う

加古「ええ!じゃあ、早速だけど案内するわね。後、他の人にもこれは伝えてね?」

メイは苗を買って加古の案内でその畑へと向かうことになった


4人の畑…ここまでたどり着く。メイは普段の車で、加古はバイクでここまで来た

自分達の畑を確認してメイは小屋にとりあえず苗を置いた

メイ「…で、その更に向こうですか?」

加古「ええ。ここまで来たら徒歩で案内できるから着いてきて?」

乗ってるバイクと車をそこに置き2人は更に向こうの道へと歩いた

5分程度だろうか?

森に囲まれた場所にぽっかりと空いたスペースが見えた。メイはそれを見て驚く

もう随分と長く管理されてなかったのか雑草があり、耕したのがほとんど無くなってる状態だった

メイ「ここも…畑だったんですね?」

加古「実はね。ここも昔は野菜が採れた場所だったんだけど…ここを管理してる人が老衰で亡くなってしまって…

誰も手つかず。って感じで放置されてしまったのよ。でも…貴女達ならまた蘇らせることができそうだから…」

うーんなるほど。メイは納得する。自分達が持ってる畑は夫婦だったがこちらは老人だったか

メイ「でも、私達でもう一度…ここを野菜が採れる場所にしたいです」

その言葉を聞き加古は喜びを感じた

加古「貴女ならそう言ってくれると思ったわ。もう、何も手続きしなくていいから貴女達が使ってちょうだい」

もう使用許可がおりた。そうなるならもうやってしまったほうがいいだろう

メイ「何から何までありがとうございます先輩」

加古「構わないわよ。少しでもかのりに負けない畑を作ってね。ところで買った苗はどこで使うの?」

メイ「ん?んーとまだ使用してないスペースを耕して植えようと思いました」

加古「そんな面倒なことするよりここで使いなさい。そうしたほうが楽よ」

確かに。雑草抜きが面倒だがそうしたほうが良さげだ

メイ「わかりました。残りの3人に伝えておきます」


加古はバイクで去っていき、メイは華奈と真衣とベリシャを集めてその畑のことを言う

まだ農地があったのか。と驚いた3人だった。だが華奈は言う

華奈「嬉しいニュースじゃない。なら今日は早速第2の畑へ行って草抜きしましょう」

ベリシャ「まさかまだあるなんてね…」

真衣「わーい。新しいとこあるとか嬉しいな」

メイ「早速行きましょう。苗とかも準備してね」

4人は第2の畑へと向かうことにする

そして着いた。雑草だらけで凄いがこれも抜けばいい話なのでそこまで苦労はしないだろう

周りをよく見た。おや?ここも小屋らしきものがあった。メイは早速中を見る。施錠もしてなかった

メイ「うわ!ホコリ臭い!…でも私達の畑と同じような用具が揃ってるじゃない」

用具があれば既に使用済みだったか肥料もあった。メイはチェックしたが腐ってるというわけでも無さそうだ

もう早速使えるかも。ホコリ臭いとこを除けばまだまだ使えるものばかりだった

施錠はしてないものの決して用具が盗まれて欠損してるというわけでもなかった。それも幸いだろう

あっちとこっちでいちいち用具を持っていく必要も無い。その時点で運がいい

確認を終えたメイは小屋を出て3人に言う

メイ「じゃあ私買った苗をここへ持っていってまた別の野菜を育てることにしましょう」

真衣「そうだね!そうしよう!」

ベリシャ「えーと。他に夏野菜の候補は何かしら?」

華奈「レタス、ピーマン、唐辛子、ナス、らっきょう。ね」

ベリシャ「らっきょうはいいとして後他の野菜にしましょう」

メイ「そうね!じゃあ私早速買ってくるわ!」

華奈「ええお願い。私達は雑草を抜いてるわね」

メイはそう言ってその場を離れてまた組合センターへと向かうことになった

残った3人は早速作業を始めようとする。最初は雑草抜きだ。3人は軍手をして準備万端

自分達の畑と同じぐらいの大きさを持つこの畑。とにかく雑草は雑草なので抜いていく

その雑草も深く根付いた雑草でもないため女性の力でも簡単に引っこ抜くことができた。抜いた雑草はゴミとして処分

テキパキとこなし黙々と続ける。そんなことあってかどんどん畑がキレイになっていった

真衣は途中雑草を抜くと土の中から以前絶叫をしてしまったものが飛び出てきた

真衣「あ。ミミズさん」

しかしもうなれたのか。悲鳴をあげずうねうねしたミミズを見てるだけだった

真衣「ミミズさんは土に帰ってね」

ミミズを土にかぶせてそのままにした。ここにミミズがいるのだからきっと良い土だ。そう思った真衣だった

しばらくして雑草を抜いていた。そしてある程度雑草抜きが終わる。キレイな畑へと変わった

ベリシャ「華奈、雑草ほぼ全部抜くことができたわ」

華奈「お疲れ様2人とも」

そのタイミングだったか。メイが車でここまで来た

メイ「おーいみんなー。苗、買ってきたわよ!」

そう言うと3人はメイのところへ向かう。車の後部座席に苗を置いたみたいだ。後ついでにブルーベリーの苗とひまわりの苗

メイ「ピーマン、レタス、茄子。それぞれある程度買ってきたわ。それでさっきの苗を合わせるとちょうどいいかも!」

メイが言うと真衣は目を輝かせて言う

真衣「わあ…!これ全部うちらの畑で植えるんだね!最高だね!」

華奈「雑草は抜いたから次は土を柔らかくしましょう」

今度は4人で畑の土を耕すこととなる

荒れている。とは言えど固まってるほどではないため必要分土を耕していた。そこまで力はいらない

すぐに苗を植えることができる土となった

華奈「じゃあえーと、ブルーベリー、ひまわり、ピーマン、レタス、茄子。それぞれを上手く植えましょう」

そう言うと4人は植えることになる

植えてるときに華奈はちらっと見たがここもやはり小屋の隣に水道があった。これで水やりができそうだ

真衣「ねーメイ?」

真衣は気になったことを言う

メイ「ん?どうしたの真衣?」

真衣は植えているひまわりを見て思った

真衣「このひまわりってなんで植えるの?」

メイ「ひまわりは枯れるとひまわりの種になるのよ。種にしやすいひまわりだからまとめて売ることができるかなって!」

真衣「なるほど~。ひまわりの種ってハムスターやリスが食べる種のイメージあるけどね」

メイ「そういう使い方でもいいんじゃないかしら?」

そう言うと引き続き4人は植える

すべての苗が植え終えた。改めて4人は第2の畑を見回す。自分らが持ってる畑とは違う雰囲気だった

収穫が楽しみで仕方ない。そして次は肥料だ。ちょっとの間放置されてた肥料だが大丈夫だろう

4人は肥料を撒く。真衣は注意しつつ肥料を撒いた。これだけでも一味違う。簡単に終える

そして最後に水やり。じょうろに水をくみ、野菜たちに水をあげる。たくさんの水をかけていた

だいたいの作業が終わる。あとはすくすくと育ってくれればいいだろう

かのりには負けないような、そんな畑ができた。その時点で嬉しいことだろう

4人は完成した畑を見ていた。そして華奈は言う

華奈「後は私のまじないをすればいいわ。みんな見ていてね」

そう言うと華奈は畑の中心部に行き、まじないをする

そのまじないは一瞬の出来事だった。一瞬光りが満ち、そして終わる

まじないが終わるとメイはすぐに華奈の元へ向かう。また一瞬だけ疲れるかもしれないからだ

メイ「華奈!」

華奈「大丈夫よ。もう慣れたのかしら。フラッとすることもないわ」

華奈は大丈夫だった。そしてもう一度、4人は畑を見る

メイ「まさかこんな畑がまだあるなんてね!」

ベリシャ「また貴重な体験をしたわ。今後どう育つか楽しみね」

真衣「たくさん収穫できる~!」

華奈「…」

3人は喜んでいたが、華奈は神妙な顔で空を見上げていた

メイ「どうしたの華奈?」

華奈「…ううん。なんでもない」

メイは思ったがやはりかのりのことが気になったのだろうか

そう思ったがメイが口には出さなかった。こちらはこちらだ。これ以上華奈に負担するようなことはしたくない


第2の畑はそのままにして最初の畑へと向かう

第2の畑から向こうの道は無く、第2の畑だけで行き止まりになっている。これ以上の畑は無いだろう

畑に着き、4人は収穫できるものを収穫する。またしても多くの野菜が収穫できた

これも早速売ってしまおう。車を用意して収穫した野菜を後部座席に置いておく

やはり収穫は楽しみのひとつとなっている。かのり達に果たして勝てるかどうかはわからない

ただ、やってみないとわからない。そんなことを考えていた

収穫した後水やりをしてこれで終わり。いつまで収穫できるか。といったことは考えないほうが良さそうだ

メイは車の野菜を積み込んでまたまた組合センターへと行く。残りの3人は家に戻っていった

華奈は自宅に着くと庭にある野菜のチェックをした。ここも一応育てているからだ

庭の野菜は自分達で食べるものであり売ろうとは思ってはいない。畑は畑。庭は庭だ

ちゃんと収穫できたが、もうそろそろ枯れてるのがあった。限界なのかもしれない

華奈「長い間収穫できてたからね」

この野菜は今日の食卓に並べるとしよう。そう思った華奈だった

土の精霊のまじないとは言えど限界がある。それはかのりもわかっているだろう

庭の手入れをしていたらスマホから通知音が鳴った。メイだった

もちろん着信に出る

華奈「もしもしメイ?」

メイ「華奈!嬉しいニュースよ!」

嬉しいニュース?なんだろうか

華奈「どんなニュースなの?」

メイ「あのね!うちらで採れた野菜がね、好評で色々な人が買ってくれたあげくほとんど売り切れだったのよ!

土の精霊が育てた野菜って評判が良くて美味しいのは当たり前って理由で買ってくれる人が多いの!」

華奈は思ったが私は土の精霊だが一言も精霊とは言ってないはずだが…

華奈「そうなの?嬉しいけど私一言も土の精霊とは言ってないわよ?」

メイ「これは加古さんのおかげよ。フリップみたいなので土の精霊が育てた注目野菜!とか言うの書いてくれてたのよ」

メイの上司がそういうことをしてくれたとは…

華奈「嬉しいわね!なら後で加古さんにお礼を言いたいわ」

メイ「ええ!それに結構売れたから後でベリシャのとこも行って売れたお金を山分けするわ」

華奈「わかったわ。そうしてちょうだい」

メイ「うん!あと少ししたら帰宅するからね!じゃ!」

通話が切れた

華奈は思った。私のおかげでここまで野菜が売れたなんて。夢にも思っていなかった

そもそもあの加古という人は売れる野菜ならなんでも応援するのだろうか。かのりのほうも応援してそうだが…

だが嬉しい。ただそれだけだった。思いつきで始めたことがこんなにも好評だということがとてつもなく嬉しい

どのぐらい売れたのだろうか?メイの帰りを待つばかりであった


メイが華奈の待つ家に帰っていった。早速華奈の顔を見る

メイ「ただいま華奈」

華奈「おかえりなさいメイ」

彼女が持ってたのは封筒だった。もしかしてこの中にお金があるのだろうか?

華奈「それ、売上?」

メイ「そうよ」

そう言うとメイはテーブルに座り封筒を開けた。予想通りお金であった

華奈「わ!こんなにお金もらえたの…!?」

札束に近い数だった。メイはニコニコしながら言う

メイ「いやー。ここまで売れたなんて嬉しいわよ。貴女が土の精霊だから評判が良くなったのよ。

もちろん、加古さんの宣伝もあったけど売れるに売れてとても嬉しいわ」

なんだか金融関係でもうけたみたいな感じでメイは札を数えていた

華奈「凄いわね…こんなにお金になるなんて…思っていなかったわ…」

華奈が言うとメイは数えるのをやめて目を見て言う

メイ「華奈。貴女が凄いのよ。土の精霊だからなのよ。私は貴女をパートナーにしてとても嬉しいわ。心からそう思う。

そして…あいつに負けないようなこと、しましょう?」

メイはかのりのことを口にした。だが、華奈の表情は変わらなかった

華奈「うん。嬉しいわ。私こそ貴女をパートナーにして幸せだと思う。これからもよろしくね」

メイ「よろしく!じゃ、ちょっとベリシャのとこ行くわ」

そう言うとメイは隣の家へと向かっていった

華奈は喜びを感じていたが、ひとつ心では悩むことがあった。かのりのことだ

彼女も一応大きい農場を持っている。何か対策をしてくるんじゃないかと。こっちが売れないようなことを…

やはりうつ病なのか不安の度合いがあった。しかし今は考えなくていいだろう。そう思った華奈だった


ベリシャ「…まあ、こんなにもらえるの?」

メイ「そうよ!前に言ったじゃない。山分けするって!」

そう言うとメイは山分けされた札をベリシャに手渡す。ベリシャは喜んでいた

ベリシャ「私達も少しだけお金の問題あるから…こうやってくれるととても嬉しいわ」

メイ「へへー!これで何か美味しいものでも食べてよ!」

ベリシャ「ありがとうメイ。華奈にもよろしく伝えてね。感謝するわ」

メイ「うん!じゃあねー」

そう言うとメイは隣の家に戻っていった。ベリシャは貰った札を見て思った

ベリシャ「…ここに来て大正解だったわ。こうやって良い隣人さんと仲良くなれたんだから」

時刻はもう夕方。今日は何を食べようか。そんなこと考えてベリシャは玄関のドア静かに閉めた


リュウキュウの夕方

そろそろ涼しくなる時間帯だった


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る