Episode14

かのりとミイの農場…

ここでは夏野菜を中心にしたでかい農場があった。基本的に2人で管理している

かのりは土の精霊なので土壌を良くして…ミイは水の精霊なので水を良くするまじないをかけて…

二人三脚で農場をよりよくしていた。2人だが、決して他の人の手は借りず大きくした

夏野菜は外で、春野菜はビニールハウス。果樹もビニールハウスだ

毎日さんさんと降り注ぐ太陽と水で野菜と果樹は美味しくなっていた。そこがこの2人を育てた植物だった

今日もかのりはビニールハウスで野菜と果樹のチェックをする。どれも元気でありまた収穫できそうだ

かのり「ふむふむ。キャベツ…異常なし。ラディッシュ、異常なし…」

あまりにも多くの野菜と果樹を育ててるのか紙にかいてチェックする。ひとつでも抜けていたら枯れてしまうかもしれない

次にかのりは外にある夏野菜を見た。全部見たが特に何も無し。また収穫できそうだ

そして最後に果樹。パイナップル、すいか、さくらんぼとチェックをする。これも収穫可能だろう

収穫できるものが多くて幸せな忙しさだ。一気に収穫して早速売ってしまおう。そう思ったかのりであった

かのり「よしよし。じゃあ早速収穫して…」

ミイ「かのり…」

ふと気がつくとミイは側にいた。静かな彼女は静かに移動していた

かのり「ミイ?どうしたの?」

ミイ「今日も…たくさんの…野菜と果実が収穫…できるわね…。あと…水やり、やったわよ…」

彼女は静かな口調でやったことを報告する

かのり「うふふ。ありがとミイ。やっぱりミイのまじないをかけた水じゃないと大きく成長しないのよ」

そう言うとミイは言う

ミイ「でも…スプリンクラー…しないのね?」

スプリンクラー…確かにいい案だが、あえてかのりは否定する

かのり「だってスプリンクラーなんか設置したらミイのまじないが意味無くなるじゃない?ボクは正直それは設置しないわよ」

かのりが言うとミイは嬉しそうな顔をする

実は水の精霊のまじないはきちんと溜まった水でないと効果は発揮しない。流水ではだめだ

それゆえ、スプリンクラーには頼らずシンプルにジョウロで溜めた水でまじないをかけて水やりをしている

ミイ「…ありがと。でも…華奈さんと…競争するって…言ったけど…自信あるの…?」

そう言うとかのりは難しい顔をした

かのり「うん…実はミイには言ってなかったけど華奈にはどうしてでも負けてる部分があるんだ」

ミイ「負けている…部分…?」

かのりはミイの顔を見て言う

かのり「彼女、頭が良いのよ。高校時代…どうしてでも勝てなかった部分なの。ボクはそこが悔しくて今でもそれは思うの。

だから…頭の良さでボク達を超えるような物を作る。そんな予感がしてね…」

かのりはそう言うと頭を手でポリポリした。しかし、ミイは言われても動じず、静かにかのりを抱きついた

ミイ「全然…大丈夫…私がいるから…心配なんて…しなくていいわよ…私の…かのり…」

ミイが抱きつきながらかのりに言う。そんなかのりを愛しく思ったのかミイの頭を撫でる

かのり「…ふふふ、そうね。心配なんてするもんじゃなかった。ありがとうミイ。ボクは嬉しいわよ」

幸せそうな2人は少しの間抱き合っていた


昼過ぎ。華奈は静かに畑へと向かっていた。精神状態はイマイチ良くない

だが、相手は畑なので欠かさずに行かないとだめだ。精神薬を飲んでいるがそれでも調子が悪いときは悪い

悪夢を見ないでよかった。それだけは言える話。うつ病をぶり返してしまったか

やはり原因であるかのりと会ったのがまずかった。おまけに一緒に畑を経営してる。この時点で運が悪い

全てに対して土の精霊として上だった彼女は太陽の存在。私は月にも満たない存在

だからこそこの競争には自信というのが全く無い。どうすれば変えられるのか…

いつの間にか自分たちの畑に着いた。華奈はとりあえず収穫できるものは収穫しておく

そしてある程度収穫したときに高校時代の思い出が蘇った。悪い思い出の記憶が

『お前、土の精霊なのにかのりと全然違うじゃん!』

華奈「…違う」

『うっわ!競争してもだめなんだ!精霊ってこんなもんなんだ!』

華奈「…うるさい」

『あはは!貴女って全然そうでもないんだね!呆れてしまうよ!』

華奈「…うるさい!」

『かのりのほうが楽しいな!お前はつまんなーい!』

華奈「うるさい!!!!」

華奈は幻聴が聞こえたのか今持ってた収穫した野菜を土に思いっきりぶちまけた

華奈「うるさいのよ!!黙れ!!」

何か聞こえたのか。何を怒っているのか。華奈は怒りが収まらなかった

そこに1人は近寄った。その状況を見て驚いた。真衣であった。慌てて真衣は華奈に近寄る

真衣「か、華奈!!」

華奈「ふーっ…!ふーっ…!うるさいんだよ…!」

真衣「華奈!どうしたの!?」

真衣の発言で少し落ち着いたのか。華奈は真衣の顔を見て話す

華奈「幻聴が…幻聴が…聞こえた…私が…弱かったせいか…」

真衣「幻聴…落ち着いて華奈…せっかく収穫した野菜さんが傷ついて売れなくなっちゃうよ」

野菜…華奈は自分のやったことをここでようやく気づいた

華奈「あ…」

怒りにまかせて野菜を土のほうへ放りこんでしまった

華奈「…ご、ごめん…」

ぶちまけた野菜を丁寧にひとつずつかごに再び置く。幸い傷もなく野菜は無事だった。しかし華奈はまた落ち込むような顔をしていた

真衣「華奈…何かあったの?幻聴って、何?」

華奈「…悪い思い出が蘇った、かしらね。かのりに会って再びそんな感じになっちゃった」

真衣「かのりさん…ううん。かのりはそんなに華奈に悪いことしたの?」

真衣はかのりを敵と判断したのか呼び捨てをした

華奈「私を大きく超えた存在…土の精霊として、人気者だったのよ。そして私は影の存在…」

真衣「華奈は影じゃないよ。今メイと暮らして幸せじゃない!私だっているし、ベリシャだっている。それだけでも幸せじゃん」

そう言うと無理した笑顔を作った華奈

華奈「…ありがとう真衣」

真衣も同じようなことを思い出しもう一度言う

真衣「私もね。家族に何度怨念のごとく言われたか…ベリシャと結婚して家族に色々と言われたんだよ。悪夢を見たし…。

だから家族とは離れて暮らすことにしたの。でも華奈とメイに会って人生が面白くなった。2人には感謝してるんだよ?」

真衣は華奈とメイにお礼を言った。これは本当の話。それを聞くと華奈は微笑む

華奈「私は、それでも弱いの。だから今でも思い出す。…心が痛いわ…」

これは無理した笑顔…さすがの真衣でもそう思った

真衣「もう、私がやるから。華奈は家に戻って。これ以上華奈が壊れるのを見たくないよ」

悲痛な思いだった。華奈はそれを聞くと答える

華奈「…ありがとう真衣。じゃあ、よろしくね」

華奈は後ろを振り向き、自宅へと戻っていった。心配そうに真衣は見る

真衣「…私は、そこまでうつ病じゃないけど…。ただ…隣人さんが壊れるのは…見たくないだけ…」

真衣はその後無表情で畑の手入れをした


メイが帰ってきた。今日は特別何もないため樹木からエネルギーを吸収する日とした

しかし、帰ってきたら華奈に異変があったのは即気づいた。メイは慌てて華奈の側に寄る

メイ「華奈…!?そのやつれた顔はどうしたの!?」

華奈「…メイ?ううん。幻聴っぽいの聞こえてエネルギー使っただけ」

メイ「幻聴って…!貴女もしかして統合失調症とかいうやつじゃないよね!?」

さすがのうつのない前向きメイでも少しだけ精神病のことは知っていた

華奈「…そこまでじゃないわ。大丈夫。明日になれば治ってるわ。頓服薬も飲んだし」

そう言うとメイは華奈のことを抱きしめる。華奈は驚きもせずただ抱きつかれていた

メイ「お願い華奈…!貴女が元気無くなるのは私辛いわ…!だから…無理しないで…!」

華奈「ありがとうメイ…」

メイは力強く抱きしめる。私のパートナーが精神的に死ぬは絶対見たくないしそうはさせない…!

やはり…あのかのりという存在が良くないのだろう。再びうつ病を悪化させてしまった

競争と言ったがこれじゃあ競争どころのスタートラインにも立てない。華奈がこういう感じになると…

どうすればいい?2人はただただ、抱きついているだけであった

…数時間が経過した。華奈はまた今日もベッドに寝込んでしまい今日は立てるかどうかわからない状態になってしまった

メイはチラチラとベッドを見て華奈の様子を確認しているがずっと寝込んでいる

ため息をつくメイ。どうしたらいいものか…こういうときは静かにしたほうがいいかもしれない

下手に応援すると余計へこんでしまうかも。うつ病…なのか統合失調症なのか…今度一緒に精神科に行くしかないか…

そう考えていると玄関ドアのノックオンが。4回なのでベリシャだろう。仕事から帰ってきたのか

ドアを開く。ベリシャと真衣がいた。2人とも心配そうな顔をしていた

ベリシャ「真衣から聞いたわメイ…華奈はどうなの?」

メイ「ちょっと見てみる?」

そう言うとベリシャと真衣が玄関を上がり華奈の様子を見た

ひどく落ち込んでいるのか真衣とベリシャが来ても決して顔を上げることができない華奈

その様子を見たら刺激してはいけないと静かにその場を後にした3人だった。さすがのベリシャもこれにはため息をつく

ベリシャ「ひどく…落ち込んでるわね…」

メイ「私の愛しい人がこんなふうになると私も落ち込むわ」

真衣「華奈…もう畑へ行けないのかな…」

真衣がそう言うとベリシャは握りこぶしを固めて言う

ベリシャ「あのかのりとかいう奴…!今度会ったら呪術をやらないとだめみたいね…!会ったときから敵とみなせばよかったわ…!」

メイ「べ、ベリシャ落ち着いて。それ犯罪だから…!」

ベリシャが悪魔の目をしていた。これは本気の目だ

そう言うと3人の後ろから声が聞こえた。華奈の声だった

華奈「あ…あれ?真衣にベリシャ。どうしたの…?」

メイ「華奈!」

真衣とベリシャは華奈に近寄る

ベリシャ「華奈。大丈夫よ。真衣は守るけど、華奈だって守るわ。高位悪魔として」

真衣「華奈!あまり無理しないで!畑の管理は私でもできるから!」

そう言うと華奈から涙が溢れた

華奈「うう…ありがとう…とても良い隣人さんで…幸せな気分になるわ…!」

大切な隣人。そう思うと本当に助かっているし有難いこと満載だ。メイは改めてこの2人に感謝したいと思った

ふと、ベリシャが思いつき言う

ベリシャ「ねえ、メイ。ちょっと華奈をいいかしら?」

メイ「うん?」

ベリシャ「それと真衣、これは浮気じゃないから妬まないでね?」

真衣「うん。…え?もしかして?」

そう言うとベリシャは華奈の唇にキスをした

メイ「え、ええ!?」

メイは仰天した。真衣はあまり驚かなかった

少し経ってベリシャは華奈の唇を離れた。華奈は突然のことでぼーっとしていた

メイ「あ、あのー。ベリシャさん…?」

ベリシャ「華奈、効果はどうかしら?」

華奈「…なんだか、体と精神が軽くなった…?」

真衣「悪魔の癒やしのキス…!これは癒やしの効果がある呪術のひとつだね。天使のキスと同じ効果のあるやつだ!

普通のキスなら高位悪魔は誰でもできるけどこの癒やしの効果はサキュバスにしかできないキスだね!」

淡々と説明する真衣。まだびっくりしてるメイ

メイ「呪術…!?」

ベリシャ「真衣以外のキスをしたけど効果はあったわね。ふふふ、メイごめんね」

華奈「ベリシャ、突然やられて驚いたけど気が軽くなったわ!」

そう言うと華奈は笑顔になった。呪術のひとつ…華奈のために呪術をしてくれたベリシャだった

メイ「そんな効果が…。ベリシャありがとう。呪術もなかなか良いものね?」

ベリシャ「私はサキュバス。人を呪う呪術だけじゃなくてこうやって癒やしの効果を持つ呪術だってあるのよ」

華奈「でも他の人からキスされるとなんだか照れてしまうわね」

ベリシャ「さ、メイ。次は貴女がキスする番よ。上書きしなさい」

そう言うとメイは更に驚く

メイ「え!私!?」

ベリシャ「でないと華奈は私に魅了されちゃうわよ?」

メイ「わ、わかった!」

そう言うとメイは華奈に近づく。華奈の顔に近寄る

華奈「め、メイ…」

メイ「華奈…」

華奈とメイはキスをした。ベリシャのキスを上書きするようなキスをした。もちろんディープである

華奈「ん…ちゅ…れろ…」

メイ「ちゅ…ちゅぱ…」

真衣とベリシャは黙って見ていた。2人ともあまり変には感じてはいない

ディープが終わったら華奈とメイは見つめ合う

華奈「よかった…すべてが良くなったわ…」

メイ「これでベリシャに魅了されない…でも…ありがとうベリシャ」

そう言うとベリシャは微笑みながら言う

ベリシャ「思いついた呪術だったけど効果はあって何よりだわ。だって親愛なるお隣さんだもの。助け合いは必要じゃない?」

真衣「ベリシャがやった行動に関しては私は何も言わないよ?」

2人は微笑みを絶やさずに言う。やっぱりも持つべきものは友というもの。本当に嬉しかった

華奈「本当にありがとう。大好きよ2人とも」

ベリシャ「あら大好き?呪術の効果がまだ残っちゃった?」

華奈「い、いやそういうわけじゃなくて!」

4人は笑いあった。なんだか都合の良いキスだ。でもサキュバスという存在に心から感謝をした華奈とメイだった


夜。ようやく復帰した華奈だったが今日もメイが料理を作ることにした

華奈はテレビを見ながら何か考えていた。何を考えているのだろう?メイはチラチラ見ながらそう思っていた

そんなことしてるうちに料理は完成。テーブルに置く

メイ「今日はアジの開きよ。美味しそうでしょ?」

華奈「こういう魚は好きなのよね。いただきます」

2人は食べ始める。そしてメイは言う

メイ「ねえ、華奈。何か考えてたの?」

華奈「うん。畑の周りってさ、耕してないでしょ?あそこを耕して新しい野菜、または果樹でも置こうかなって」

メイ「あ~。あの周りのスペースになってる場所?」

そう言うと華奈はごはんを食べた後また言う

華奈「そうよ。使える畑はとことん使わないと。開拓できるのならそうしようかなって」

メイ「わかったわ。今度4人が集まったらそうしましょう」

華奈「うん!かのりには負けないんだから!」

華奈がそう言うなら大丈夫だ。メイはそんな元気になった華奈を見ながら食事をした


隣の家。真衣とベリシャはソファーで座って話していた

ベリシャはワインを飲みながら優雅にしている。真衣は酒は飲まないので何も口にせず

もちろん食事は食べてあるのでただのイチャイチャタイムである

真衣「華奈、元気になってよかったね」

ベリシャ「ふふふ、思いつきでやったけど効いたわね」

ベリシャがそう言うと真衣は唐突に声を大きくして言う

真衣「あーあ!今日も疲れたなー!誰か私を癒やしてくれないかなー!」

真衣が言うとベリシャはすっとワイングラスを置いて隣の真衣をゆっくりと押し倒す

真衣はベリシャの瞳を黙って見ていた

ベリシャ「…誘惑、かしら?」

ベリシャはほんの少しだけ悪魔の目と表情をする

真衣「愛してる人、上書きして…?」

ベリシャ「真衣なら何度だってやるわ…」

そう言うと2人はキスをした


リュウキュウの夜

4人はこれからも負けじと畑を管理していくだろう




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る