Episode13

4人が畑を持って1ヶ月が経過した…

畑を持った4人は決して間を空かずに管理をしていた。主に管理をしているのは華奈とメイである

華奈は基本在宅ワークなのでちょこちょこと見に行ってた。メイは吸収と造園の合間を縫って管理

真衣は元々自宅にいたため畑を見に行ってた。わからないところは華奈かメイに聞いて畑の管理をしてた

ベリシャは仕事があるのでそこまで行けなかったが休日になると真衣と一緒に畑を見に行ってた

管理を徹底して4人で育てた畑の野菜はすくすくと成長。ようやく収穫できそうなほど野菜が大きくなった

そんな待ち遠しい思いがあった日。いよいよ収穫だ


華奈、真衣、ベリシャは自宅の前でメイを待っていた。メイはトラックを持ってくると言って組合センターに行ってた

トラック…軽トラだろうか。多分それだ。少し時間がかかる。3人は待っていた

真衣「ねえ華奈、メイが持ってくる車って軽トラ?だよね」

華奈「そうね。そう言ってたわ」

ベリシャ「軽トラが必要なほどたくさん収穫できそうだなんて嬉しいわね」

華奈「この1ヶ月、待ち遠しかったわ…あ、来た」

メイが運転してる軽トラが来た。自宅の前にとりあえず止める

メイ「おーい持ってきたよー」

3人が予想通りの軽トラが現れた。2人乗りの軽トラだ

ベリシャ「…で、私たちはどこに乗ればいいの」

メイ「後ろに乗れば大丈夫よ?」

真衣「…なんも言われないよね?」

メイ「首都の公道で走らなきゃ何も言われないわ!さ、行こう」

そう言うと3人は乗る。助手席に華奈。後ろのスペースに真衣とベリシャだ

メイ「あまりスピード出さずにガタガタする運転はしないようにするからちょっと我慢してね」

ベリシャ「ええ。わかったわ」

4人を乗せた軽トラは畑へ走り出す

畑への道はそこまでオフロードではないためガタガタするのは避けれた

真衣「こうやって後ろに乗るの、普通の座席とは違って楽しい~!」

ベリシャ「うん。私も楽しい気持ちだわ」

そして畑へとたどり着く

4人は車を降りるとそこには待っていた実りの畑となっていた

真衣「す、すごい…!もうたくさんの野菜が収穫できるじゃん!」

そこには素晴らしい光景があった。トマトはたくさんの実が赤く染まり美味しそうなトマトに

きゅうりは美味しそうなちょうどいい実になっていた。ズッキーニも実が太く、美味しそうなのは間違いなかった

庭の畑ではできなかったとうもろこしもちょうどいい大きさに、玉ねぎも恐らくもう収穫可能だろう

後で植えた唐辛子も赤くなりたくさん収穫すれば量はあるだろう。そんな畑になった

メイ「いや~。どこから手を出せばいいんだろうねえ」

華奈「ひとつひとつ、丁寧に収穫しましょう」

4人は小屋から早速ハサミを出して収穫する

トマト、きゅうり、ズッキーニとハサミを使い収穫。とうもろこしも手でちぎって収穫

唐辛子はハサミで。玉ねぎは試しにひとつ抜いてみたらちょうどいい大きさになってたのでほとんど収穫

その収穫時間を使って集めたらあっという間に腕いっぱいの野菜が収穫できた

こんな嬉しいことはない。4人は喜ぶ

華奈「ここまで収穫できるなんて…!嬉しいわ!」

メイ「みんなで管理したおかげよ!」

真衣「畑を育ててこんなに野菜ができるの嬉しい!」

ベリシャ「嬉しいわね」

4人は言うとメイは言う

メイ「早速組合センターに行って野菜を置きましょう」

ベリシャ「もう、売出しは可能なのね?」

メイ「新鮮なものほど売れるのよ!早速行こう!」

意気揚々に4人は収穫した野菜を後ろに置き、組合センターに行った

相変わらず真衣とベリシャは後ろだったが不満は一切なかった


組合センターに到着。早速登録した場所に野菜を置く。それだけだった

ここはひっきりなしに人が来る場所。当然今も客がたくさんいた。安く、安全で、美味しい野菜はすぐに売れる

4人で収穫した野菜が室内で販売された。客が野菜を買おうとして4人で採った野菜をレジに持っていく

その様子を見ていたが次々と売れていつの間にか人気なトマトときゅうりがあっという間に無くなった

こんな順調でいいのか?そう思っても買ってくれる客に感謝しないといけない。4人はそう思った

トマトときゅうりが売れた場所に4人は近づく

メイ「すごいわね~!すぐに売れたわ!」

華奈「私たちで育てた野菜がこんなに売れたなんて…」

真衣「合計いくらになるんだろう!」

ベリシャ「私たちのやったことは、決して無駄ではない。その事がわかるわね」

4人は笑いあった。売れて、何よりも嬉しい。ただそれだけだった

華奈「後は、これから収穫をしてどんどん売って…」

?「おや、君は華奈かしら?君もここへ登録してるのかい?」

…?誰だ?4人はその声の主に向いた

その声の主は黒髪で目が紫だった。身長もまあまああり体格もあった

声の主の隣には小さい体格の水色髪ロングヘアがいた。華奈はその姿を見て驚く

華奈「…土田かのり!」

声を少し大きめにその名前を言った。真衣とベリシャはよくわかってない

真衣「土田かのり?華奈、知り合いなの?」

真衣がそう言うと華奈はかのりの顔を見て言う

華奈「私の高校時代のライバルよ…!同じ土の精霊で、競い合った人物なの!」

ベリシャ「ライバル…」

そこまで言うとかのりは言う

かのり「そうよ。ボクと華奈はライバル…何もかも競い合ったのよ。まさかここで会うなんて…宿命、かしら?」

ここまで言うとメイはふと思い出す

メイ「あ!私たちの結婚式の二次会で華奈に近寄って会話してた人じゃない!」

メイは声を大きくして言う

かのり「ふふふ…ねえ、貴女たちも畑の登録して売れたの?ボクたちも彼女と一緒に畑を作って売ってるの。ねえ?ミイ?」

ミイと呼ばれる人物が反応する

ミイ「そうよ…愛しい人と…畑を作ってるの…」

華奈「彼女は一体?」

そう言うとかのりは説明する

かのり「彼女は水木ミイ。水の精霊よ。水の精霊ってわかるかしら?畑をよりよくするまじないをかけて美味しいものを作るのよ」

華奈「水の精霊…!」

華奈を除く3人はイマイチわからなかった

真衣「ね、ねえ水の精霊って?」

そう言われると華奈は説明する

華奈「水の精霊っていうのはね、水に強い精霊で水道水にまじないをかけて美味しくするし腐った水でも美味しくできるの。

また、そのまじないをかけた美味しい水は畑にも影響が出て植物の成長を促進できる効果があるの!」

ベリシャ「じゃあつまり水の精霊と土の精霊、一緒に畑を耕せば相当美味しいのが作れるのね」

華奈「つまりはそういうこと」

まだ華奈はかのりを見ていた

かのり「…まさかね。ライバルがここにいるなんてね。こりゃやる気が出るよ」

ミイ「でも…かのりとなら…全然…負ける気がしないわ…」

かのりとミイは笑顔で言う

メイ「私たちだって負ける気がしないわ!だって、夏野菜たくさん育てているもの」

だが、かのりは余裕しゃくしゃくで言う

かのり「んー?君たちは夏野菜『のみ』?ボクたちは夏野菜と春野菜、果樹も育てているわ。既に出荷して、今売れているよ」

え…!?真衣はその言葉を聞き売り場をよく見てみた

真衣「あ!この野菜と果樹、全部かのりさんのだよ!あれ、もうほとんど無いじゃん!」

な、なんと…じゃあ出荷数ならかのりとミイが育てた物が上だと言うのか

かのり「ボクたちが育てたのは、全部まじないをかけて育てた野菜と果樹。君たちは野菜のみ。ね?全然違うでしょ?」

そう言うと4人は何も言えなかった。2人が育てているのは4人はとはまた違う、2つのまじないをかけたものだからだ

だが、華奈は少し怒りながら言う

華奈「ふざけないで!あんたたち!私たちだって大切に育てた野菜があるのよ!あんたに負けてたまるものですか!」

華奈はかのりに指を指して言う。だがかのりは何も動じずに言う

かのり「ハッハッハ!それでいいわ。それでこそボクのライバルよ。ゆるく競争しようじゃないか!」

ミイ「競争…一度やってみたかったわ…でも負けないわよ…?」

室内に緊張が漂う。華奈とかのりはライバル同士。再び出会いそしてまたライバルとなった

かのり「じゃ。ボクたちはもう畑に戻るわ。華奈。ボクたちを超えるようなもの作って頑張ってね」

そう言うとかのりとミイは後ろを振り向き去る。ミイはかのりの腕を掴んで去っていった

2人が去った後、華奈はまだ険しい顔をしていた。ここでまた出会ってしまったライバル…まさかここで会うなんて

メイ「か、華奈…」

メイがそう言うと華奈は普通の表情に戻り、3人に顔を向ける

華奈「メイ、真衣、ベリシャ…ごめんね…こんなことになるなんて」

真衣「気にしてないから大丈夫だよ」

ベリシャ「相当…手慣れた人なのかしら?表情が余裕そうだったわ」

華奈「高校時代から冷静沈着なかのり…私とはまた違う土の精霊なのよ…悔しい…!」

華奈は手を握りこぶしにして力を入れる。その悔しさは3人にも伝わるほどの悔しさだった


一方ライバルのかのりとそのパートナーミイは車に乗り組合センターを後にした

その車内で運転してるミイはかのりがちょっとドキドキしてそうな顔をしていた。ミイは話しかける

ミイ「どうしたの…?華奈さんに会って…何かあったの…?」

かのり「…彼女、結構な負けず嫌いだから、ボク調子に乗ってあんなこと言っちゃったけど…後が怖いわねって」

ミイ「大丈夫よ…。私たちも…負けなきゃいいんだから…」

かのり「そうね…ミイといれば全然大丈夫よ。だって、土と水の精霊だもの」

ミイ「そうよ…。心配はいらないわ…」

かのり「ありがとうミイ」

車は走り去っていった


4人は自宅に戻った後、華奈は一人で畑を見に行った

しばらくしても華奈は戻って来なかったので心配になりメイは畑へと向かう

10分歩くと自分たちの畑へと着いた。華奈の姿があった。華奈は畑の前の道の外れに体育座りをしてポツンといた

きっとかのりに会って悔しかったのだろう…メイは華奈の側へと向かう。メイは隣に座る

華奈とメイが隣同士で座ってると華奈の口が開く

華奈「…メイ。私、どうしてでもかのりに負けたくないわ」

メイ「その気持ちはわかるけど、変に畑をいじるのはやめてね?それは真衣もベリシャも望んでないから」

華奈「私、かのりとはライバルで…だけどね…ほとんどの場合かのりが勝ってるの。私はほとんど彼女に負けた…」

華奈が思い出を語った。メイは黙って聞いていた

華奈「こんなときに、ましてや畑のことで…本当は出会いたくなかった。けど…競争を宣言しちゃった…」

メイ「…」

華奈「土の精霊としては、彼女が上なの。私はただの精霊。そのことがきっかけで気づいてみればうつ病にもなってしまった」

華奈の目から涙が溢れだした

メイ「貴女のうつって、あまり聞いたことは無かったけどそういうことなのね…」

メイが言うと華奈は涙を流す

華奈「どうしよう…!どうしよう…!嫌よ…!死にたい気持ちになってきたわ…!」

メイ「華奈…!!」

メイは座っている華奈の体を抱きしめた。久しぶりに聞いた。パートナーが死にたい気持ちというのを

メイ「大丈夫よ。落ち着いて。私がいるから。貴女は一人じゃないわ。真衣だってベリシャだっている。それだけでも十分よ。

何より…自分の心が痛ましくなる感情をぶり返すのは止めましょう?そんなこと考えても何も意味がないわ」

華奈「う…うわああああん…!」

2人はしばらく抱き合っていた。華奈がしばらく泣いていた。メイは黙って抱きつつ慰めていた

華奈「め、メイぃ…!うっ…うっ…」

まだ華奈は泣いていた。パートナーが泣くなんて…

やはり畑を持つのはだめだっただろうか?このことがきっかけで華奈がうつを再びぶり返してしまった

でも、私はあくまでも愛しい人を守る。ただそれだけを心に華奈を慰めていたメイだった


家に戻った華奈とメイ。華奈はうつ病を発症してしまったため備え付けの頓服薬を飲む

少し経ったらなんとか元通りになった。華奈はしばらくベッドで横になることになった

メイは思ったがこれはフラッシュバックというやつなのだろうか。しかしそこまで泣き出すのはメイも驚きだった

今日の夜のごはんは自分だろう。華奈があの感じだからちょっと無理だろう

そして夕飯の準備時間になった。今日は冷凍されたごはんがあったのでチャーハンでいいだろう

メイはチャーハンを作っていた。その途中、華奈がベッドから出て椅子に座っていた

メイ「華奈、大丈夫?」

華奈「うん。なんとかなったわ」

メイ「今、夜ごはん作ってるから待っててね」

華奈「うん…」

やっぱり元気が無い。明日は平日なので勤務できるが心配だ

チャーハンができた。盛り付けて華奈の前に置く

今日は2人は静かに食べていた。華奈がこんな調子だから無理に会話もできなかった

華奈はいつも飲んでる発泡酒は今日は飲まなかった。メイも焼酎はほどほどに飲んでいた


夜ごはんの後のイチャイチャタイム…は今日はできないだろうか?

2人とも、ソファーに座ったまま会話もしなかった。だが華奈は口を開く

華奈「ねえ…メイ」

メイ「何?愛しい人」

こういうこと言うと華奈は恥ずかしがるのだが今日は違った

華奈「うつ病…忘れるような…キスをしてほしいの」

メイ「…」

言葉を発することなく、メイは黙って華奈の顔に近寄る

お互い見つめ合う。そして自然とキスをする。唇の感触がとても良い

華奈「ん…ちゅ…」

メイ「んちゅ…ちゅ…」

キスでもディープのほうだ。舌を絡ませあい、唾液とともにキスをした

キスを終えると2人はまた見つめ合う

華奈「メイのキス、凄い大好き」

メイ「私も華奈とのキスが好きよ」

そう言うと華奈は首筋の方をメイに向ける

華奈「ここ…キスして?」

メイ「どこでもキスするわ」

メイが言うと首筋にキスをする。強いキスだった。華奈は少しだけ喘ぐ

華奈「ん…」

メイ「ちゅ…ん…」

キスを終えるとキス痕が残った。これは誰にも渡さない、愛する者のキスだった

華奈「ありがとうメイ。ずっと一緒にいてね」

メイ「華奈。貴女を離さないわ」

そう言うともう一回2人は唇同士のキスをする

夜はまだ長いようだった


リュウキュウの夜

果たして畑の未来はどうなるのだろうか?


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