Episode1
―――ここは世界屈指の貿易国、島国リュウキュウ
今日もよく晴れた一日だ。暑いのだが気持ちいい暑さなので決して不愉快な気温ではなかった
貿易国というのだから様々な文化を取り入れた国である。元々昔から貿易が盛んで輸入物が多かった
そんな国なので今日も港から多くのコンテナが輸入される。一体どんな物があるのだろうか
漁港だってたくさんある。今日も港では様々な魚を獲り市場へと出荷していく…
このリュウキュウ、4つの国のひとつアマリリスと提携を結んでおりアマリリスまでの直行便があったりする
首都シュガー市では今日も街は大賑わい。様々な種族がいる。大通りは人で昼間でも一杯だった
この国に住む種族はみんな陽気で明るく暗い雰囲気が無い。そんな国だ
どこの家も毎日のように歌って踊って楽しく夜を過ごしている。犯罪というのもそこまでない
実際ここに住みたいと思う種族も結構あって毎日と言っていいほど開拓ラッシュが続いている
様々な種族とはいうが、一部種族はこの国にはいない
ハーフアニマル…エイリアン…ネレイド…インセクター…そしてジパングの龍人と兎人だ
この国は様々な種族とは言えどもうひとつ、妖魔がいないとのことだ
それ以外の種族ならこの国はたくさんいる。もちろん人間もいるし暑さに強い悪魔だっている
暑さに苦手な天使だっている。ここは天使協会と悪魔協会がある不思議な国だ。ジパングにはこの2つの協会は一切ない
もちろんどちらかと言うと悪魔協会のほうが多いのだが、天使協会もあることはある
そんなこの国はサフィーラで言う特別保護族ではないものの精霊と仙人を尊重とした国のひとつでもある
四元素を司る精霊…自然を吸収する仙人…この国にしかおらず、そして今日も暮らしている
首都から離れた自然豊かな場所。アンザー町。ここは都会の喧騒から離れた静かな場所
首都と比べるとちょっとした丘になっておりポツンポツンと家や静かな店が並ぶそんな町である
その町の一軒家に、新しいパートナー婚をした2人がいる。一軒家と言われても2階建てではない、1階建ての家だ
しかし1階建てとは言えど広く2人だけで住むには十分すぎる広さだった。築10年だろうか。借りて暮らしている
2人の披露宴が終わったその翌日。2人はリビングでのんびりと昼間を過ごしていた
まだ引っ越す際に置いたダンボールがある。それも整理しないといけない。太陽の日差しと同時に涼しい風が吹く
もちろん首都から離れた場所だが電気もきちんと通っており不愉快な気分にはならない家であった
ドキドキ…ドキドキ…
2人はソファーに座り相手の様子をうかがっている。だがもう婚約したのだからそんな緊張はしなくてもいいはずだ
仙人の婚約者、メイが言う
メイ「…私たち、本当に結婚して華奈と住むのね」
華奈「そうね…あの披露宴はほんと楽しかったわ。だって、色んなゲスト来たもの…」
メイと華奈の披露宴には様々な人が来た
メイなら仙人の友達。華奈なら会社の人たち。色んな種族を超えた人がこの披露宴に来た
普通に披露宴は進んだものの会社の人が出し物をしたり仙人がマジックショーしたり面白い披露宴だった
メイのほうでスペシャルゲストとして仙人の頂点に立つ大仙人が出てメイは恐縮してしまった
だがその大仙人も2人の関係を心から祝福していた。大仙人はさすがに歳を取っていたのか車椅子での出席である
最後に華奈の親からの手紙を読んでくれて華奈は涙した。メイも涙を流した
二次会も大いに盛り上がり、2人にとっては忘れられない披露宴となった
…そんな披露宴だった。メイのほうは大仙人が来たことが一番のサプライズであった
メイ「でも楽しかった。だって色んな人からおめでとうと喜んで言ってくれたもの」
華奈「うん。メイとの婚約がこれほど嬉しいなんて…」
そう言うと華奈はリビングから通じる庭へと目をやる
華奈「ねえ、メイ?私、夢だった庭で野菜とか果物を育てるっていうのできる家でとても嬉しいわ?」
メイ「だって華奈、植物育てるの得意じゃない?土の精霊なんだし。だからちょうどいいと思ってここを選んだのよ?」
優しくて涼しい風が吹き抜ける。今日は窓を全開にあけても決して強風にはならない
華奈「私の性質がようやく役に立つなんて…メイには感謝しきれないわ」
メイ「ふふふ。どういたしまして」
2人は笑顔になる。華奈は土の精霊なので畑を潤すという性質がある
華奈「ちょっと庭見るね」
メイ「あ、私もー」
そう言うと2人はリビングのすぐ側にある庭へと行く
その庭はちょうどいい、様々な野菜を植えられそうな庭であった。恐らく土壌も良いはず。ちょっと耕せばすぐに種を撒けそうだ
華奈はかなりワクワクしてたまらない。野菜だけでなく果物もできるかも?自分の能力を思いっきり使おう
火や水や風の精霊とは違う、土ならではの庭にしたい。ついでに花の種も買ってしまおうか。華奈は笑う
華奈「うふふ…今から楽しみで仕方ないわ。こんな良さげな畑があるなんてね」
メイ「だったら早速ホームセンターにでも行く?」
華奈「そうね。行きたいわ」
メイ「じゃあ車運転して行こ!」
そう言うと窓を閉めて玄関のドアを閉めて車へと向かう
車に乗る際に、華奈はふと隣にある空き家を見る。隣に家があるのだが、まだ誰も住んでいない
あまり観察はしてないが華奈とメイの住む家と同じぐらいかもしれない。一軒家で一階建てだ
華奈「…いつか、隣の家も誰か来るのかしらね」
メイ「そうね。でも、すぐじゃないでしょ」
そう言うと2人は車に乗る。メイが運転する。エンジンをかけて出発した。目的地はホームセンターだ
…だが、2人はよく見てはいなかった。空き家のドアに『売却済』という看板を
2人はホームセンターへ着く。住んでいる家のちょっと先にあるホームセンターだ
車を駐車場に停めて外に出る。早速ホームセンターに入り種を売っているコーナーへと行く
当然様々な種が売られてあった。華奈とメイはワクワクして色々と見た
華奈「えーと定番の野菜から…ちょっとマイナーな野菜…うーんどれにしようかな。トマトは確定ね」
メイ「きゅうりとナスなんてどう?私これ好きなのよ!」
華奈「じゃあ購入しましょうね」
メイ「あとズッキーニとか!あ、ネギなんていいかも!あと玉ねぎも!人参もそうだしラディッシュも!」
華奈「ちょ、ちょっとメイ!そんな選択肢を出さないで!」
さすがの華奈もあまりに多すぎると迷ってしまうほどだ
メイ「あ、ごめん。ついつい調子に乗っちゃったわ」
華奈「うーんでも…買えるぶんだけ買っちゃいまようか。種自体は安いわ」
買えるぶんの種を買って、他に成長を促すのも買う
華奈「えーと成長剤と…あと水まきのじょうろもね。おっと、スコップも必要だったわ」
メイ「これもどうかしら」
メイがかごにどこっと薬品を置く
華奈「メイ!これ除草剤!」
メイ「あ!ごめん文字をよく見てなかったわ!」
そう言うとメイは除草剤を持ち元の場所に戻す
華奈「雑草生えるのはだめだけど除草剤はよくないわよ…」
メイ「ごめん。除草剤の『剤』しか見てなかったわ」
華奈「んもうメイったら。おっちょこちょいな仙人さんね」
メイ「仙人の威厳が無くなっちゃった」
威厳…確かに仙人は威厳があるだろうが…
華奈「まあいいわ…後は支柱でも買って完璧ね」
トマトときゅうり用の支柱をかごに入れようやくレジに。メイが支払うことになった
車に乗り、家に戻る。運転はやっぱりメイだった
華奈「そう言えば支払ってくれてありがとうメイ」
メイ「意外と私、お金あるのよ~。フリーでやってる造園が役に立ってるわ」
華奈「あ~。そう言えばそんなことしてるんだよねメイって」
メイは仙人で自然のエネルギーを吸収して生きているのだが、造園の知識も持つ仙人でもある
たまーに来る造園の仕事をしてお金をもらっている。結構良い金額でもらえる
華奈「でも私も…仕事で良い金額貰えればなあ…」
メイ「大丈夫よ華奈。万が一があったら私就職するから」
華奈「…ありがとうメイ」
メイ「お礼なんていらないわ。だって、もう婚約してるんだから。2人で生きる。そう決めたでしょ?」
華奈はなんて優しい人に婚約されたんだろうと心から感謝をした
家に帰った後、2人は早速庭の畑を耕した。ふかふかの土壌になるまで耕した
極端に広い畑ではないため華奈とメイの2人で簡単に耕した。そしてトマトときゅうりのための支柱も付けた
後は種をまいて水を種の上に注ぐ。そんなことをしたらあっという間に夕方になる
華奈「あら…夕方になっちゃった」
メイ「やっぱり畑を耕すの楽しいわね~」
華奈「後は…私の能力でこの畑を…」
華奈はそう言うと祈りをするように畑を狙ってその能力を送る。それは一瞬の出来事だった
華奈「…よし!これで大丈夫!後はすくすくと育つわ」
メイ「華奈のそういう凄い能力。私が惚れるのも無理ないわね~」
華奈「そう?でも土の精霊なら簡単にこんなことできるわよ」
そう言うと2人は家に戻っていく
2人は家に戻るとちょっとだけ荷物整理をした。まだダンボールがあるからだ
ほとんど華奈の前に住んでいた部屋の荷物だがメイも手伝ってくれた
荷物もある程度片付けた。今日は華奈は支払ってくれたお礼で料理を作ることにした。冷蔵庫だってもちろんある
華奈が料理を作り、メイはソファーに座り、テレビを見ていた。お酒はこの国の生まれの焼酎。グビグビ飲む
メイは仙人ながら酒に強い。実は華奈も酒に強い。晩酌は2人でしている
そんなメイだがテレビを見るとある国の特集をしていた
メイ「あ、ジパング」
その内容はこの国は龍人を祀る国であり、様々な龍人の特集をしていた。テレビで映った龍人はでかそうだった
メイ「龍人ってでかいわね。これ身長何センチあるのよ…」
そう言いながら手に持ってる焼酎を飲む
メイ「私はもうちょっと身長ほしかったなあ…」
そう言うとソファーとは違うテーブルに料理が完成してあった
メイ「あ!もうできた?」
華奈「うん!できたわよ」
メイはテーブルの椅子に座り、その料理を見た
メイ「わ~。今日はゴーヤチャンプルー!美味しそう~。いただきます!」
華奈「ふふ、たくさん食べてね」
いただきますを言い2人は食べる
2人は食べ終わると華奈は使った食器を洗い、ようやく華奈も晩酌にする。華奈の飲む酒は発泡酒だ
ソファーで寄り添いながら2人は思い思いの酒を飲んでいた
メイ「ねえ。これからの私たちの生活…どうなるんだろうね」
華奈「だって、メイがいるだけで幸せ感じるのよ」
そう言うとメイはグラスを置き、華奈を見つめた
メイ「私だって…華奈がいれば何もいらないわ。貴女だけを…愛する人になるわ…」
華奈「嬉しい…」
華奈も飲んでるグラスを置き、見つめ合う
メイ「私…愛したいって気持ちを持つ仙人なの…だから…とことん愛してあげるね」
華奈「私も…愛してほしいって気持ちが強い種族…愛してね。私のメイ」
まだ新婚ホヤホヤの2人…
きっとこの2人の未来は明るいのだろう。女性同士とは言えどここまで愛してるから…
2人は自然とキスをした。これからのこと。そしてずっと続く未来へ
キスを終えると華奈は言う
華奈「ちょっとメイ…貴女酒飲みすぎよ…アルコールの匂いしたわ…」
メイ「ごめん。なんだか飲みすぎた気がしたわ…」
華奈「うふふ…まあいいけどね」
そう言うと夜もふけてきた
メイ「…そろそろ寝ましょう?」
華奈「うん」
グラスを片付けて寝室へと移動する
寝室はでかいベッドだ。2人は一緒に寝るのは余裕あるベッドだ。寝間着に着替えて同じベッドで眠る
2人は寝ながら相手に語りかける
メイ「ねえ、華奈?」
華奈「何?メイ?」
メイ「…これから絶対に守ってあげるからね。これは永遠に。よ」
華奈「ありがとうメイ。貴女の優しさ、しっかりと受け止めるわ」
メイ「だから…よろしくね。私の華奈」
華奈「私も…よろしく。私のメイ」
そう言うと笑顔になった
2人は自然と眠っていた。静かな場所。ここはうるさくない
2人は手を繋いで眠っていた
リュウキュウ
2人を守るかのように涼しい風が吹いていた
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