40話 昔話
俺たちは無言で師匠についていく
何とも言えない緊張がその場を支配するも師匠は淡々と歩いて行った
師匠についていくこと20分
周りはそれなりに高い木々が生い茂っており木製の大きな門が俺たちを待ち構えていた
緑の学校の入り口みたいな感じだろうか丸太や木材が使われた簡素な門、自然にとここんだ違和感のない感じのやつである
ここからどうやって冥府に行くのか不思議でしかない
「どうするんですか?」
俺の疑問に師匠は笑いながら
「まぁみとれ」そう言った
師匠は懐から小さな指輪を取り出し「開門」と一言
すると先ほどまで木の家が見えていた門がグニャリと歪んで荒れ果てた地が顔をのぞかせる
四次元的な仕組みなのか門の外側から奥を覗けば普通に木の家がたたずんでいる
「ここから先は冥府じゃ、冥府の住人には失礼のないようにするように」
師匠はそう俺たちに注意するとまたもや淡々と歩き始める、いつまでも立ち止まっているわけにもいかず俺たちも師匠についていった
それからすぐに前俺が仮死状態になってハデスとあった場所、謁見の間みたいなとこに着いた
「待っていたぞ陽成、さっそくその至急の知らせとやらを聞こうか」
王座らしき場所に座ったハデスがパチンと指を鳴らすとまるで手品のごとく豪華な椅子が現れた
師匠はそこに腰かけると俺たちにも座るように施す
「阿修羅が動いた」
瞬間ハデスの顔が曇る
「はぁ、ただでさえカルマ値マイナス5万の奴が今こっちに来たばかりなんだ、勘弁してくれ」
カルマ値?なにそれ知らない…
カルマだから、業?得?後で質問すればいいか…
そのあとは師匠とハデスの会話が続く、何のことを言っているのかあまり理解できなかったがとにかくなんかやばいらしい
「修、天音、今からお主らにちと昔話をせなならん」
そうやって師匠とハデスの口から語られた物語
昔々あるところにと語られるは二柱の神が日本を作る日本神話である、しかしこれは神しか知らないはずの日本神話、遠い昔の少年と少年
それと一人と二人の友情のお話
日本神話ではイザナミとイザナギがセック…いや、イザナミの穴をイザナギがふさいでアンやピーやで島やら神やらを産んでいくわけだが、
その殺した時にもいろんな神が生まれるわけだが…ここで初めて歪みが産まれた
母が自分のせいで死に、父には恨まれ、兄や姉にも疎まれる
自分を責めて恨んで嘆いて、しまいには父親に殺される
負の感情が支配した
そして堕ちた
永遠に兄弟と父、そして自分…全てを恨み続け厄を生み出す邪神、いわゆる禍津神に堕ちたのである
しかし
それはなぜか
もともとは火の神だからである
そのため奴は巻き込んだのだ
そこで生まれたのが九体の厄災
地震…階級代一位
津波…階級代二位
台風…階級代三位
大雨…階級代四位
洪水…階級代五位
高潮…階級代六位
豪雪…階級代七位
竜巻…階級代八位
噴火…階級代九位
これらが一級の厄を裏から統治し長年人々を苦しめてきた
すべては殺された
そこで神々は考えた人間や自分たちの身が危険にさらされている、しかし神は厄に干渉することができない。 理由は下界に入りることができないからである。
それなら人間に倒してもらおうと神々は考えた
イザナミにも協力を願い出て黄泉の国を分割、監視のもと閻魔やハデスが管理する地獄などを作り、死者の選別、カルマ値の付与と共に魂の純度をはかり厄に浸食されぬよう徹底した
(カルマってなんぞ?それに阿修羅ってやつが今階級代一位を名乗ってたはず…)
そこから何年もの月日が流れた
人々は厄に対抗すべく神気を使い、神器を借り受けて戦った…
ある日とてつもなく大きな力を持った一人の少女が誕生した
これが最初の巫女、
その巫女はとても強かった、圧倒的な力は時に人々は恐れるものだ
しかしそんな少女は孤独ではなかった
なぜなら、いつもその少女の隣には一人の少年がいたからである
その少年の名はわからない ただ清水の苗字のみが残っている
二人はいつも一緒だった
やがて七人の巫女がそろえども少年と最初の巫女は離れなかった
少年は弱かった、授かった神器は双剣であったからだ
それでも少年は気にしなかった、周りから陰口をたたかれようが気にしなかった
なぜなら少年の隣には最強の少女がいて、二人でいられるのなら他は気にならなかったからである
しかし絶望とは何とも無慈悲で…
ある日、巫女の影響でなかなか攻めあぐねた厄災たちが動いたのだ
それはたった一夜の出来事
巫女のいた屋敷は火の海になり厄災全員が攻めてきたのである
そのころにはもう厄除の面は結成されており厄災とは全面戦争となった
戦いは熾烈を極め厄除の面は多大な被害を出しながら厄災を退けていく
その戦いで活躍したのはもちろん七人の巫女である
当時の巫女は現代の巫女の数十倍は強かったらしい
近年は厄の被害も大きなものがなく平和が続き衰退してしまったため巫女の強さも昔のほうが強かったのだ
特に強いのは一人の少女、姫百合 刹那 である
厄災五体に対し一人で相手取れるほどの力を持っていた
厄災たちは大いに苦戦し何か弱点はないかと探し回った
そして見つけてしまった
少年という名の弱点を
人間は大切なものをもつ
それは人と人がかかわれば必然的にできるもので
友人、家族、果てには恋人
これらは大切な人、失いたくない守るもの
厄災はソレに目をつけた
厄災どもは知っていた
圧倒的な力を持つ巫女が戦場の端にいる少年を常に気にかけ、厄災がその端に行かぬようずっと距離を作るように戦っていることを
そこからは速かった
厄災四体が巫女に一斉攻撃を仕掛ける
当然のごとく防がれるが残り一体が消えていた
巫女は死角に回られたのかと警戒するも、その姿は一向に見受けられない
残り一体を探すべく視界を巡らせる
ふと視界の端、少年のもとへ走る厄災をとらえる
巫女は焦った
全速力で駆ける
厄災はここであえてギリギリ巫女が間に合うように少年に襲い掛かる
そうギリギリだ
次の瞬間、低級の厄と死闘を繰り広げていた哀れな少年の視界は一瞬で真っ赤に染まる
驚きに硬直する、とてつもない衝撃で後ろに吹き飛んだほどだ、きっと攻撃されたんだろう。ゴロゴロと転がりうつぶせの状態で止まる
恐る恐る容態を把握すべく痛みの元を探すも異常はない
では…
誰の血だ?
ゆっくり顔を上げ、後ろを振りむく
そこには少年といつも一緒にいた、最愛の巫女
その胸から突き出された腕の元は厄災の腕。
あたりは血が飛び散り厄災はニタニタとほほ笑む
手には巫女の心臓と思われる臓器が握りしめれれていた…
引き抜かれる腕、巫女はそのまま重力に従って崩れ落ちる。体は心臓を失ったことでパニックを起こし、血を垂れ流す
巫女の体はなんとかしようと脳から無茶苦茶な信号を出し続け、体は痙攣しビクビクと跳ねていた
少年は目の前で起きたことが理解出来なかった
厄災のことなど見向きもしないで巫女に駆け寄る
血は止まらず風穴が開いた胸から流れる血は巫女の白い装束と白銀の髪を真っ赤に染めていく
痛いはずなのに、少年のせいで死ぬ羽目になったはずなのに、巫女は少年が生きていると知ると、にっこりと微笑んだ
血が足りない
そんな状態では目なんか見えるはずもない
霞む意識をなんとかかき集め腕を少年にの頬に手を添える
もちろん腕の感覚はない
それでも少年が握り返す温もりは何故か鮮明にわかる
ありったけの神気を少年に押しつけて
「だい…すぎ、ずっと…すきで…し…た…」
途切れ途切れで、枯れていて、どこにいるかもわからない少年に
巫女は精一杯の愛を囁く
次の瞬間にはもう…少女は動かなくなった
それから少年は何をしたのかわからない
あまりの怒りが思考と理性をかき消した
気づけば厄災どもに致命傷を与えて少年は死んでいた
少年は悔しかった、甘かった。
臆病で、いつも思いを伝えられなくて。
弱くて、いつも守られて。
甘くて、いつも怠けてしまう。
もっと自分が強ければ、もっと自分が勇気を出せたなら
結果は変わらずとも巫女を愛せた
巫女の隣に立って戦えた
もし次があるなら、才能はいらない、力は自分で頑張るから。だから、せめて…少女の隣に立ちたい
次があるなら…次は自分が少女を庇って!
次があるなら…少女をとことん愛して!
次があるなら…こんな絶望を終わらせたい
この日一人の最強と、一人の最弱が死んだ
その二つの死は厄除の面に大きな衝撃を与えることになる
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