68話 戦犯は処すべし

「これより、姫百合 昭 の処遇についての判断を言い渡す」


ココは厄除の面本部


高い天井を何本もの木の柱によって支えられており、木材を基調とした和風な作りの建物だ。


サッカーの観客席のような感じで、椅子が並んでおり、中央に行くにつれ床が低くなる逆三角形のような感じだ。


真ん中にはもちろんあのジジイがおり、観客席っぽい所にお偉いさんが座っている。中でも最も位置が高い場所にデデンッと座っているのは、我らが師匠だ。こういう時は割と風格がある。


ちなみに俺らは比較的ジジイに近い席で、俺、天音、雪音、幸子さんの順で座っていた。


「今回の騒動にあたり、貴様は担当者の役割を放棄し、我ら厄除の面の存在を公表せざる負えない状況に追い込んだ。さらに、あまつさえ巫女を虐げ、戦闘の邪魔も行った。これを踏まえ、我らは貴様をどう扱うか決める必要がある」


師匠がギロッと昭を睨む、いつもシワシワな顔にさらに深みが増し、かなり怖い。


「ひっ…も、申し訳ございません‼我らが表舞台に出てしまったのは、この私の責任です!権力に溺れ、自らが任せられた任務を全うできなかったこと、大変申し訳ありませんでした!!!!!!!!」


「はぁ~…」


師匠が深いため息をこぼす。


「いずれ表舞台には出る必要があった、それが多少早まっただけのこと、特に咎める必要はない。」


昭の顔色がパァっと明るくなった。


「この件は規則に基づき、権限を三週間停止処分とする」

「あ、ありがとうございます」


「それだけなら…な?」

「え…?」


「わしは言ったはずじゃ、と…」

「し、しかし私は役割の放棄による失態以外は…」

「あるじゃろう?」

「…ッ!せ、精鋭を無駄死にさせてしまった件につきましては…」



「たわけ!!!!!!!!」


「「「「「……ッ!!!!!!!!」」」」」


師匠の威圧するような声に、周りは圧倒された。


「貴様は巫女を虐げ、傷つけ、利用したであろう!!!!!!!」

「……ッ!」


「貴様は言っておったな、私の孫娘のことは我々がきちんと育てると。それを言い訳に我ら上層部のコンタクトを遮断し、巫女の身分を盾に好き勝手しおって…」

「そ、それはあなた方上層部が私の愛しい孫娘を引き抜こうとしたからであって…」


「愛しい孫娘?この期に及んでまだあがくか!では貴様は姫百合 天音という人間をどこまで知っておる?」

「…ッ、い、いつも冷静で、聞き分けが良く、手のかからない優秀な子ですよ」


「と言っているが、わが弟子、そうか?」


ここで話を振ってくるか!


俺は大量の視線が一気に俺に集まるのを感じて、内心大パニックを起こした。

と、とにかく天音の良い所を言えばいいんだよな?


それならいける、百個でも一万個でもいえる自信がある


「そうですね俺から見た天音は、まず可愛いです。間違いなく世界一の美少女です。容姿をほめるのはどうかと意見もあるかもしれませんが、見てくださいこのサラサラな髪!」


俺は天音の銀色の髪の毛を、優しく持ち上げる。


「サラサラでつやつや!ちゃんお手入れをしている証拠ですね。ここまで長い髪をこのレベルで保つには相当の努力が必要です。まずこの時点で天音は女子力が高く、努力家だということがお分かりいただけるでしょう。そう、天音は努力家なんです。才能に溺れず、きちんと研鑽を積める子なんです」


会場の誰もが困惑した、こいつ何言ってるんだ…と

しかし修は止まらなかった。


「続いてこの腕!もう握ったら折れそうなほど細いのに、程よくついた筋肉は太刀での戦いに最適な筋肉です。触ればわかります」


会場の誰もが思った。

((((((いやわかんねぇよ!))))))


「それにですね、天音はこのキリっとした顔つきですが、相当の甘えん坊の寂しがりやです。このギャップがまた可愛いんですけど、最近は皆にとても明るく対応するようになったんです。ひまわりのような笑顔を独占できないのは悔しいですが、天音の成長を感じます。今までは親しい人にしか出せなかった優しさを、表に出せるようになったんです。そう天音ってすごい優しいんですよね!特に…ブツブツブツブツ」


「オーケーオーケー、我が弟子もうよい。お主の天音好きはよーくわかった!うん!だからもう黙ってくれ」


師匠に止められたため、頭に【?】を浮かべながら席に着く。


「あんた…さすがにやりすぎよ…お姉さま干上がってるじゃない。あともう少し続けてたら倒れていたわね」


雪音が俺にそう言ってきたので、天音を見てみると、手で顔を隠しながらうつむいていた。


横から見える耳はリンゴみたいに真っ赤だ。



「大丈夫か?天音」

「大丈夫じゃない、褒めすぎ…修君のばかっ…きらい」

「ホントに俺のこと嫌い?」


グッと近づいてそう言ってみる


「うっ…!ほ、ホントは…しゅきぃ大好きだからそんな耳元で囁かないでぇ」


案の定可愛い反応が返ってきた。そんな可愛い顔すると、余計にいじめたくなるじゃないか。


いたずら心に火が付いた俺は、最後にフッと息を天音の耳に吹きかけて、自分の席に戻った。

天音は許容オーバーとなったのか、ふにゃふにゃと崩れ落ちる。


「あんたわざわざ確殺入れるとか、性格悪いわね」

「性格悪いとは人聞きが悪いな、俺は天音に愛をもって接しているつもりだが?」

「じゃあ、あんたはドSってことね」

「そこまでじゃないだろ」


そんな感じで馬鹿みたいに話していると、とうとうあっちも終盤に差し掛かったらしい。


どうやら俺が語った天音についての話より多く、天音について語れなかったようだな。フッ雑魚め!


「少なくともあんたが思っていることで、ああなったんじゃないと思うわ」

「わかんないだろ!」

「逆にあんたを言い負かせるレベルでお姉さまのことを知ってたら、そいつは異常者ね」


解せぬ


「チェックメイトだ、もう終わったのだよ貴様はなぁ!」


師匠がドヤ顔で責め立てる、多分言いたかった言葉ランキングにでもさっきの言葉があったんだと思う。


「判決を言い渡す、責任者の権限剝奪、並び貴様は神器没収…つまり追放処分とする!」


バンッ!!っと効果音が出そうな感じで断罪する師匠。ノリノリだな


「それに伴い、今後の姫百合家の権限は姫百合 幸子に移行する。弟子ども、何か言いたいことがあるなら今のうちだ」


「あっ、はいはい!私が言っていいでしょうか?」

「おぬしは確か、嬢ちゃんの従妹だったか、よいぞ。なんでも言ってやれ」


何を言うんだあいつ?


「もうおじいちゃん帰ってこれないから、私がぁ…ふふっ」

「雪音!わしは信じていたぞ!」



「何言ってるのおじいちゃん?私が言いたいのは、おじいちゃんのだーいじにしまってあるへそくり…

     貰っていいよね♡」


「は…?」


みるみるうちに顔が青くなっていくジジイ


ここで雪音はさらなる爆弾を投下した。


「あ、でもアレって汚いお金なんだっけ?横領してたんだもんね!」


うわぁ、とどめさしに行きやがった…

雪音のほうがよっぽどSだろ。


「ほぅ、そうなると処分は変わってくるのぉ」


師匠の目がギラりと光る。


この後、俺たちは無事解散となった、ジジイがどうなったかは知らん。


余談だが、どこかの浜辺で老人の服と思われる和服と、セメントが少しこびりついた空の容器が見つかったとか…








_____________________

あとがき

テストとかいう厄災と戦うべく作者は修行に入ります。

それに伴い投稿頻度が落ちますのでご容赦ください。

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