第8話 絶望を可能性に変えて

目の前の敵、総数百以上

普通なら死んでもおかしくないな


救助の可能性はなしか…


やるしかないな

俺一人で


五歳だぜ?無理やろ

普通ならな!


作戦があるのだよ…ふっふっふ


作戦は…

この森の神話級アイテムを取りに行く!


その名も【再生の護符】

効果は再生、エネルギーならなんでも良いので護符に流すと装備者の体力、生命力、を回復してくれる。


再生速度は熟練度に依存

初期でも腕が吹っ飛んだって五分でなおる

切り傷ならすぐだ


コイツの利点としてまず

1:体力を回復してくる点だ

2:再生時に体が強くなる。再生だからな

3:コスパがいい、邪気でも神気でも周りの生命力でもゴミでもなんでもいいとりあえずエネルギーがあれば発動する



デメリットはすぐに回復できないくらいだな


という事で取りに行きたい

入手法方はマップのどこかにある祠に火を五個つければ良い


ちょうど五個つけると星みたいな形になる。


それで真ん中に行くと護符が飾られているのだ。


ちなみにこの星を発動すると中の厄を一掃でき安全地帯へと進化する。


コレで半分くらい削れたらいいな


善は急げ。俺は勢いよく駆け出した


あれから一時間、火もラスト一個

視界に三級がうつる


(まずっ!)


気づけば俺は百メートルほど吹っ飛ばされていた。


「ゴフッ…カハッ!」


ふざけ威力しやがって、速すぎなんだよ

幸い吹っ飛んだ方に祠があったのはラッキーだな


(これで最後だ)


火がつく

火はゆらりと揺れ光が一直線に伸びる

さぁ浄化だこの野郎ども

さすがに三級は死なないだろうが五級はだいぶ減らせた、あと半分くらいだろう


痛む体に鞭を打って歩き出す。

目の前に輝く再生の護符を手にとる

そこに神気を流し込み護符を発動

みるみる体が再生する

筋肉は、より強くなる骨は、より硬く再生する



あとは戦うだけ、安全地帯は確保した

ご飯はいらない、再生の護符で繋ぐ、ここからは地獄のボスラッシュだ


俺は双剣を手に駆け出した


まず三級は相手にしてはいけない、死ぬ

なので三級を避けながら五級の霊どもを駆除するしかない。

悲しいことに五級ですらすぐには倒せないけどね



霊の厄(五級)は厄介だが倒せないわけじゃない。


ようは再生できないレベルまで損傷を与えればいいのだ



方法は二つ

一つ連撃で、倒す

二つ一撃の威力を上げて倒す



一つ目はあまりやりたくない、どうしても時間がかかる

二つ目はあまり現実的ではないが双剣の戦技レベル2が解放出来たらできる


今は考えてもどうにとならん。

厄の群勢はもうそこまできている。

今使える技は

俺が編み出した血神強化、それと

双剣熟練度レベル1の戦技、円弧


この二つのみ


(もうきやがった)


厄が腕を振り上げ襲ってくる

ひらりと回避し反撃を入れる

何度も何度も繰り返す

森には金属がぶつかる音と衝撃波のみが辺りに響く、三級の気配がしたら逃げる


囲まれたら円弧で周りを一掃

円弧は一瞬で最大速度まで加速し円状に斬撃を放つ技だ。わりかし使える。


それでも決定打に欠ける…与えた攻撃はすぐに再生され、体力は削れているだろうがこちらの神気が尽きるのが先だろう。



何より再生の護符は、体力は回復すると言っても痛みはあるし、精神的にはすり減っていく。


今ではせっかく減らした厄どもの数は元の百体より多いだろう。


あ〜ちくしょう、囲まれた

しかも何で…


「お前がいんだよクソ将軍」


背後にいつのまにか三級がいた。警戒していなかったわけじゃない

この距離では逃げられない


『まぁ随分と好き勝手してくれたのぉクソガキ』

三級以上となれば個としての意志を持つようになり知性も人間も同等にある。


「じゃあ返してくれないかね?」


軽口をたたいて恐怖に嘘をつく


『それはできん頼みだ、ここまで暴れたのだ。絶望の一つぐらい味わって死んでくれんと』


「やなこった!」


キンッ


「な⁈」

『盛んよのぉ、痛い目みんとわからんか?』


俺の渾身の奇襲は容易く受け止められ、殴り飛ばされた


ズドーーーーーンと音が後からやってくる

音より早く飛ばされる…



右腕を見ると俺と泣き別れしていた

強烈な痛みが体を駆け巡る

叫びそうになるのを必死にこらえる

目はグニャグニャぼやけ視界も赤く染まっている

痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!

再生の護符で止血をしながら再生する。

痛みが少しづつ引いていき痛みが和らぐ


(右手の修復には時間がかかるな、体の状態は?)

(クソ、肋骨が何本か折れた、左腕も上がらない)


しばらく動けないなこれは…やばいマジで死ぬ


『あっけないのぉまだしょせんガキか、しかしこの年でこのセンスは危険じゃ。殺すか』


将軍が腕を振り上げる

俺は襲ってくるであろう痛みに目を閉じる

しかしいくらたっても痛みは来ない


なんだ?


『ん?なに?緊急会議じゃと?このガキを殺してからじゃダメか?ダメ?今すぐ?仕方ないのぉ』

『おい、そこのガキを殺しておけ』


将軍はいきなり現れた黒い厄とともにそれだけ言って消えていった。


助かったのか?


まぁ絶望的な状況なのは変わらないな。

周りには五級の厄がうようよいる


「いいぜ、やってやんよ」


切る、避ける、吹っ飛ばされる立つ、切る切る切る


そうやって戦い続けることはや三時間

頭の中にふと技が浮かぶ、これが熟練度のレベルアップか!初めての感覚に困惑するもいまは…

双剣戦技レベル2舞踏鬼人舞ぶとうきじんぶ


きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ


この技は攻撃するごとに速さと重さが増す技

舞のように踊り、鬼人のごとく戦う。この技は途切れさせると効果は消える


つまりここを切り抜けるには永遠に戦い続けなければ生き残れない。

再生の護符で戦い続けることはできる。

再生によって体もより強靭になる


いつまで戦い続けるかはわからない



それでも


この絶望的な状況は、将来きっと役に立つ

あの理不尽に勝つために、三級の将軍、あいつはいつか超えてやる

未来を変えるためにここで鍛える、いつか天音を守るために…











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