第6話 お遊戯会

あれから幾許か練習をつんで、ついに当日になった。

舞台のセットは完璧…たぶん

客席満員!俺健康!準備万端だぜ



「皆さん、残念なお知らせです。青山君が今日、風邪をひいてお休みです」

「え〜主役がいないの?」

「どうするのー」



アイツ…

確かに風邪ひいてしまえと思ったことはあるけど今日じゃないだろ…



「仕方ないので代役で王子をやってくれる人〜」


「あの僕、王子様のセリフ家臣役だったから暗記してるよ」

「おぉぉ、いいんじゃね」

「いや、でもあんまり上手くできないし僕主役はやだな」



そんなこんなで緊急会議が行われる仲、新たな意見が出てきた。


「あのさ、豚公爵を主人公にしてみたらどう?美女と野獣てきな。」


みんなに電流は奔る!



「「「「「「ありかも〜」」」」」」



(いや、ありじゃないわ!)

え、待って早まんないでくれ!たのむ



「天音ちゃんはどう思う?」


「ん?私?」


よし天音、そのままやんわり否定してくれ!

そう願いながら頼みの綱である天音に目を向ける


「修君が主人公…うへへ、いいよ!やろ」


対戦ありがとうございました

終わった…


いやまだだ!

「セリフとか流れとかって…」

「考えてあるわ!まぁ困ったらアドリブでお願い。」


「そんなぁぁぁぁぁ!!!!!!」




ここから俺の地獄は始まった



少ない時間でセリフを頭に詰めこみ、よくわからない所は聞き直し、アドリブとかふざけたセリフシーンも頑張った


こうして俺の頑張りによってお遊戯会の劇は順調に進んでいった。あと、お姫様姿の天音可愛い…

ここ重要


_____________________________


「私はあなたを信じます」


ここは姫が豚公爵の過去を知って、豚侯爵に寄り添うシーンだ


「この醜い豚の呪いを受けた私を信じる…?」



「それはあなたが民を守った証です、すべての呪いを自分が肩代わりしたあなたの心を、私は信じます」


ズドーン  のカタカナを持った子たちが現れ王子役の子が入ってくる


「そこまでだ!豚公爵!姫は返してもらおう!」


段ボールで作った剣を掲げて王子が叫ぶ


「貴殿は…南の王子か…」



「姫をさらった悪者め!退治してくれる!」


いよいよ終盤

本来は王子が豚侯爵を倒しめでたしなのだが軌道修正された物語では…



「ふははは、私はもうこのなりだ…周りにさげすまれ否定され続けた。だからもうどうでもよかった」

「でもな、生きてみたいと思ってしまったんだよ。もう一度くらいは…この豚にチャンスをくれてはもらえんかね…?」


戦闘シーン


剣と剣がぶつかり合う(段ボール)


豚公爵が劣勢


「追い詰めたぞ」


本来ここで何とか逆転し勝つはずだった


しかし簡単にはいかないのが物語の鉄則だ。


ガシャン


「え?」


天音の間の抜けた声が会場に響く

その次の瞬間、天音が乗っていた高台が崩れてしまった



「あぶない!」


とっさだった

血神強化も使った。

(ばれたっていい!天音が助かるなら)


「とどけぇぇぇ!!」


落ちる天音を受け止める

五歳児には大変負荷が大きい動きに体が悲鳴を上げる

歯を食いしばり天音の安全を一番に守る。




ドッシャーン


大きな音とともに高台が完全に崩れた。


豚公爵の被り物は段ボールを加工したもののため壊れてしまった


「だいじょうぶ…「助かりました公爵」


「!!!」


(続けろってんのか?)(コクコク)


周りは高台が崩れたことで保護者がざわつく中、天音が叫ぶ



「侯爵!呪いが!」



あぁそうか、豚公爵の被り物が壊れたから、もういっそ呪いが解けたことにするのか。


頭いいなその考え乗った!


「あぁ呪いが…解けた…のか」


そこでナレーション(先生)がすかさずフォロー



「なんと豚公爵は姫を思う気持ちにより、呪いという名の鎖を破り、真の力を取り戻したのでした。」


ナイスだよ先生…しかもちゃっかり豚公爵が勝つルートを指定してくれた


【真の力】と


「さぁ反撃だ!」

王子役の子にアイコンタクト


「ふん、呪いが解けたくらいでなんだ」



どうやらきちんと伝わったようだ

俺は再びセリフを述べ剣を構えるのだった

____________________________


そのあとは何事もなく進んだ



「こうして公爵と姫は静かに幸せに暮らしました」



パチパチパチ


ふぅ、何とかなったな


ちなみに高台は老朽化が原因らしい


「清水君助かったわ、ありがとう」

「いやみんなが合わせてくれたから」


クラスメイトがワイワイと寄ってくる


「姫百合さんのキャッチよく間に合ったな!」

「そうそうすごかった」

「かっこよかった」


それぞれ幼稚園児らしい感想が述べられる

血神強化の件がばれないか不安だったが大丈夫のようだ


「修君修君」


「ん?」


ふりかえると


チュッ♡


頬に柔らかい感触が一瞬走る

そこには天音がいた


「助けてくれてありがとっ」


天音は顔を赤くしながら上目遣いをしてくる


ボフッっと聞こえそうなほど一瞬にして自分の顔も赤くなったのがわかる

顔が熱い


A=美少女とする

(キス+赤面+上目遣い)×A=惚れる



はい証明!これで惚れない男は同性が好きな人とかだ


俺もあと数年遅かったら危なかった。ちなみに惚れてはいるので問題ない。まだ五歳と幼い姿で助かったぜ。

息子が反応せずに済みそうだ



周りが茶化してくるがどうでもいい


ただただ可愛いその一言にすぎる


この時、親が、キスされて赤面しているところをビデオに収めていたなんて俺はまだ知らない。


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