11話 最強の男


全身から力が抜けていく、まるでツケが回ってきたと言わんばかりに痛みが駆け巡る。


再生の護符を使おうにも神気はもうほとんど残っていない


いつのまにか黒い神気は見る影もなく消えていた。


黒いオーラはなくなっていた。

手足が取れそうだ、そんな痛み

息もしにくい


俺は倒れる、薄れゆく意識の中、天音の声が聞こえた気がした。



「…くん…じょ…だい……は…く…たす…」












知らない天井だ

え、マジでここどこ?

気づけば俺は温かい毛布に包まれていた。


病院か?



体を起こすと天音が足元で規則正しい寝息をたてている



俺の服と護符がない

服はいつのまにか病院とかで着る服になっている。

どこいった?


とりあえずすることもないので俺の天使(天音)を眺める…眼福や


椅子に座りながら寝るのは体を痛めそうなのでベッドに天音を寝かせてやる

子供だけあって温かい。ひさしぶりに人の温もりを感じることができた

この日は二人で一緒に寝た。


翌日、窓から差し込む光で目を覚ます。隣には愛しの天音が服を乱れさせたまま寝ていた


朝チュンってやつか

父さん…俺、大人の階段登ったよ…


とまぁ、そんなふざけたこと言ってないで起きようか。


天音を揺すって起こす


「天音ちゃん、朝だよ」

「ん、むにゅう、もうちょっと…」


「ほら、起きないと先行っちゃうよ」


天音は瞼を擦りながら目を開ける

「え⁈、な、なんで?修君は眠ってるんじゃ…」


天音の綺麗な目が見開く、深い紫色だ

驚いた顔も可愛い


「修君…?」

「なに?」

「修君が動いてる…夢?」

「夢じゃないよ」


俺は夢じゃないことを証明するべく天音の頭を撫でる


約一年ぶりの天音の頭は、サラサラでとても心地が良かった。


「あ、あぁ…、修君、死んじゃっだがどおぼったぁぁうわぁん」

「生きてるよ、ただいま」



しばらく泣き止むまで頭を撫で続けた


「私心配したんだからね!」


天音はそうやって頬をプクッと膨らませて怒る。


何しても可愛いので怖くなかった。


ガラッ


「修!目を覚ましたのか!」

「あ、父さん、ただいま」

「修ちゃん!お帰り、お帰り」


母さんは泣きながら俺に抱きついた


しばらく家族とのひさしぶりの再会を楽しんでいると、俺が病院にいる理由を父さんが話してくれた。


どうやら俺と将軍の異常なまでの神気と邪気のぶつかり合いを察知した厄徐の面が近くにいた天音チームに調査依頼を出したとのこと。


何故天音がいるのかと言うと、俺が飛ばされた後に無事巫女認定をされたため、強くなるための実習をしてたのだとか…


さらに天音は俺が飛ばされてから物凄く不機嫌だったらしく、このままでは強くするのに支障をきたすとのことで俺はずっと探されていたらしい。


捜索費は青山家負担だ。


それでなんとか天音の感情が安定したため実習をしようとした矢先に異常発生。


山の調査開始


で俺発見に至った。


「修君ボロボロだったんだよ?全身血だらけでしかもなんか神気を流すかいろ?っていうのがズタズタでとっても危険だったんだって」


神気を流す回路か…


「だから今はまだ神気使っちゃダメよ?お母さんの言うこときける?」


「うん、わかった」


あとで使えばわかるかな(何もわかっていない)


「俺たちはあの森の処理が忙しいから一旦帰るぞ」


「私もそろそろ帰らなきゃ、バイバイ」


「バイバイ、父さん、母さん、天音」


ひとまず俺がどんな状況だったかはある程度わかった。


一回神気使ってみるか?


「これこれやめとけ死ぬぞ?」


「…⁈」


なんだこの爺さん音もなく入って来やがった!


「あんた誰?」

「ホッホッホ、そう警戒するでない。わしは式龍 陽成しきりゅう ようせいじゃ」


式龍 陽成⁈


わかったこいつあのエロジジイだ!


こいつは厄徐の面トップにして最強の男


年齢不明、神器も不明、てか使ってるとこ見たことない。

二級にも余裕で素手で勝つまさに最強。


が、しかし欠点がある


そう、エロジジイなのだ!


主人公たちの前に度々現れてはなんらかの助言をしてくれたりする助っ人キャラ、非常に役に立つ。実は厄徐の面トップという設定。


が、現れるたび毎回ヒロインのお尻を触ったりセクハラ発言をしてくる。


性格も陽気で何考えてるかわからない。


それでも厄徐の面トップにして最強なだけあって戦闘時はとても心強くカッコいい。


まぁ、エロジジイなのでプラマイゼロむしろマイナス、天音に手を出したら殺す。


「エロジジイ…」

「いきなりエロジジイとは酷いのぉ」


あっ!やっべ心の声漏れてた。


「じゃあ厄徐の面のトップとして扱った方がいい?」

「よいよい、あんな堅苦しいのわし嫌〜い、というかよく知っとるの」


「あんた神器貰う時にいたじゃん。一番高いとこにさ」


「最近の若いもんは怖いの」


「で、何のよう?」


「そうそう本題の質問じゃ」

「まずはコレ」


ひょいっと投げられた物をキャッチする


「これ…再生の護符じゃん」

「お主のだろう?」

「そうだけど…」


てっきり取られたのかと思った

再生の護符は伝説級のアイテム、俺なんかが持ってたら没収されかねない。


「いやの、お主の装備はどれもアイテムだったんでな、一回こっちに来たんじゃ。その中にその護符があった時は大騒ぎじゃったよ」


「貴重なのは知ってる。だから没収されるかと思った」


「まぁ、没収の意見もあったんじゃが、子供が命懸けで手に入れた物を奪うなど言語道断、わしが叱っておいた」


「あ、ありがと」


「他の装備はお主の親に渡してある、後で受け取っておけ」


「わかった」


なんか意外と気が効くじゃないか

エロジジイの癖になんかカッコいい


「さて、次の質問じゃアレ・・はお主がやったのか?」


「三級のこと?まぁ俺が倒した」

「失礼、今のお主をみる限り到底技量が足らないと思ってな…」


「あぁ、なんかもう死ぬ!って時に神器が鼓動し始めて、黒い神気が体に流れてきたと思ったら勝てたんだ」


「黒い神気…じゃと?」

「うん、黒い神気だった」


「失礼だがお主の神器を見せてくれんか?」

「まぁいいけど…」


俺は龗神の闇刀を取り出しジジイに渡す。


「ほぅ、龗神の…いやはや運命とは実に面白い…あぁ、ありがとう」


何やら意味ありげなことを呟くジジイ残念ながらなんて言ったかわからない。


「それでは最後の質問じゃ、姫百合 天音…彼女をどう思う?」


「可愛いと思います、天使」

「おぉ、いい目しとるの、アレは上玉じゃ」

「天音はあげません」

「おぉ怖い怖い、彼女には手を出さないでおこう」


「して、改めて彼女をどう思う?それを踏まえてお主はどうしたい?」


先程までとは違う…本気だ

「彼女は天才です。でも完璧でも無敵でもない…だから支えてあげる人がいる。でも、天性の天才には天賦の天才じゃないと追いつけない。あいにく俺は天才じゃない。それでも、彼女を守れるくらい強くなりたい」


「それは茨の道どころか地獄のみちだぞ?」

「それでも‼︎彼女の隣は俺が立ちたい、他人に任せるなんかできない‼︎傲慢かもしれない。でも、彼女の隣にたてるなら、俺は傲慢だってなんだってなってやる」


「ホッホッホ、気に入った!気に入った!よかろう合格じゃ、わしがお主を鍛えてやる」


「え⁈本当?」


「本当じゃよ、この名にかけてお主を巫女に負けぬほど強くしてやる」


「ビシバシいくからへばるなよ?」

「当たり前だエロジジイ」

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