第14話 トランスジェンダーのキサラギケイ、いや、メグミの苦しみ。小学校に上がる前から、身体の性と心の性が合わないって悩んでいたんだよね。

 「ユキちゃんは、本当に、優しいんだね。あの、学校の先生のことを、思ってあげられるなんてね」

 「…だって」

 「そうだね。あれのあれ、だからね」

 「…コームインは、自分自身の力では、生きていく力がないんです」

 「そうだね」

 「…」

 「ユキちゃんには、責任感もある」

 「そんなんじゃ、ないですよ」

 「君を、もっと、太陽に元で、輝かせてあげたいな。陽の光を、浴びてみない?それだけでも、楽しいと思うし」

 しまった!

 余計な言葉、だったんだな。

 もう、やめにした。

 さすがに、ユキちゃんが、泣いてしまうかも、しれなかったからだ。

 自身のことを、考えた。

 「俺だって、言われたら、悩むよな…。俺は、こういうトランスジェンダーのつらさには、慣れてたけつもりだけれどな。女性の体を隠して海水浴にいくときは、ダイバーみたいな格好で、ぶかぶかでいたもんだ。でも、あの子は、違うんだよ」

 幼いころのことを、思い出していた。

 キサラギケイ、いや、メグミは、小学校に上がる前から、身体の性と心の性が合わないことに、悩んでいた。

 「かわいい女の子でちゅねえ」

 まわりに言われ、腹も立った。

 ちっとも、うれしくはなかった。

 心が男の子になれば、身体も、自然と、男の子になっていった。それでも、身体は、女の子なんだ。

 「お母さん?」

 「どうしたの。メグミ?」

 「あの、さ…」

 話すのには、ハードルが高すぎた。中学生となった今になれば、敷居が高いなあって言って、笑われたことも、思い出しちゃうくらいに。

 「お母さん…」

 「どうしたのよ?」

 子ども心に、相当な勇気をもって、打ち明けたものだ。




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