第4話 「鬼滅のタンジロウって、のど飴みたいな名前だよね?」「…え?そこですか?」距離を置いた付き合いの思い出は、切なすぎた。

 距離を置いた付き合いの思い出は、切なすぎた。

 「仕方が、なかったんだ。だって、俺は、本当は、女の子なんだもん。あの、ユキちゃんっていう子と、一緒に帰っていたら、女性同士の付き合いになっちゃう。できないよ。ユキちゃんに、つらい思いをさせちゃうかもしれないものな」

 振り返れば、後悔ばかり。

 ケイの心は、締めつけられた。

 「つらいなあ、こういう、モヤモヤ。中学生って、どうして、こんなにも未熟なんだろう。自分自身のあちこちが、痛い感じになっちゃうんだ…」

 「…ケイ先輩?」

 「…ユキちゃん?」

 「はい」

 「いつもは、ごめんね?」

 「え?」

 「今日は、一緒に帰ろうか?」

 「はい!」

 どこかで、気持ちの切り替えができなければ、ダメなんだ。

 2人の付き合いは、意外に、良い感じだった。

 一緒に、コンサートにいった。

 ハイキングにもいった。

 映画館にもいって、「鬼滅」を見た。

 「…ユキちゃん?」

 「何ですか、ケイ先輩?」

 「鬼滅のタンジロウって、のど飴みたいな名前だよね?」

 「…え?そこですか?」

 ケイが不思議だったのは、プールや海水浴にいこうかと言ったとき、ユキは、絶対に、首を縦には振ってくれないところだった。

 「海とか、きらいな子なのかな?」

 残念。

 「でも、まあ、俺も同じか…」

 そう。

 ケイだって、海水浴に誘われていたとしても、いかないタイプだったんだから。

 「そりゃあ、そうだろ。俺は、本当は、女の子なんだ…」

 海水浴にはいけなくても良いと、感じられなければならなかった。

 「…大人になろう。俺は、お父さん、お母さん、じいじにばあばの世代には、ならないからな。一緒に生きるの、きついよな。あいつら、いくつの男子だよ」

 あきらめなんかじゃあ、なくって。

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