第18話 悲しみの恋は、どうなっていくの?「…先輩、ありがとうございました」「ユキちゃん!」これが、LGBTの魔法なんだろうな。 ユキの、身体は…。

 勇気のいる、告白。

 これが、気持ちを打ち明けるっていう行為なんだよ。

 「…」

 「ごめん。ユキちゃん」

 「…先輩」

 「君は、優しい子だよ…」

 「違います」

 「…え?」

 「本当に優しいのは、先輩です!」

 「…」

 「トランスジェンダーのつらさに、真っ正面から、付き合っていました!」

 「…」

 「先輩は、素晴らしい人」

 「…ユキちゃん」

 「それは、間違いありません」

 「…」

 「先輩の性別が、何であろうとも」

 ユキが、それ以上、ケイに迫ることはなかった。

 「私、大好きな先輩を、これ以上、問い詰めたくはありません」

 「ユキちゃん…」

 「私たちは、今、LGBTの魔法の中にいるんですね。せつなすぎる魔法の中に…」

 「…」

 「この世界で、良いんですよ」

 「…」

 「ここにいられれば、私たちは、雪の世界で眠れます。上手く、銀世界に旅立てると思うんです」

 「…童話だ。そんなのは、童話のような話にすぎないよ」

 「そうですね、先輩。そうですよね…。トランスジェンダーは、童話のようなものなのかもしれませんよね?」

 「…」

 「先輩は、どうか、先輩のままでいてください」

 「ユキちゃん?そういう悲しいことを、言わないでくれよ!」

 「…先輩、ありがとうございました」

 「ユキちゃん!」

 ケイは、ユキを、強く強く、抱きしめた。

 「ああ…」

 ユキの身体は、名残惜しそうに、溶けていった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る