第16話 「ここでなら、先輩に、会えるんじゃないのかなって…。舞って、舞って、待っていました」「ユキちゃん!待ってくれ」 中学生男子は、弱すぎた。

 「あ…!」

 ケイは、翌日の放課後、身体と心アプリが現れていたのを見た。

 「ユキちゃん…」

 ついつい、性別ガチャを、試していた。

 「チャラ~ン…」

 …ん?

 その日の表示は、何かが、変わっていた。

 スキー場が、映し出されて…。

 「何だ、良く見たら、このスキー場って、群馬のスキー場だったのか!って、そこは良いとして…。ドキドキの、表示。

 「このアプリ、楽しんでいただけましたか?ありがとうございました。あなたのおかげで、雪が、すっかり、溶けました」

 たしかに…。

 スキー場に舞っていた雪は、すっかり、やんでいた。

 その代わり、地面には、しっかりと雪が積もっていた。

 「おお。こんなにも、積もるとはね!いつだって、ステキな銀世界に、旅立てそうじゃないか!」

 ケイは、満足していた。

 そんな満足、中学生の甘さなんだよと言われてしまえば、そうなのかも、しれなかったかな…?

 難しいんだね。

 中学生の、気持ちは。

 そして、身体と心はさ。

 トランスジェンダーのケイは、これから、どうやって生きていくの?これまで通り、そこそこ、上手く、生きていけるだろうか?

 「ああ、これから、どうなっていくんだろう?」

 卒業式の後で、足が、何となく、華道部に向かっていた。華道部の部室にいくと、ユキが、静かに、涙を流していた。

 「…先輩?」

 「…あ」

 「先輩に、会えるんじゃないのかなって…。舞って、舞って、待っていました」

 「…舞って、舞って?」

 「先輩?待っていましたよ…」

 「待ってくれ」

 ケイは、まともには、返せなかった。

中学生男子は、弱すぎた。





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