第8話 「チャラ~ン…」効果音が、鳴って…。恋人の関係だと、他の部員に思われたくなくて、内緒の声がけもして。中学生の、わがままですか?

 本当だよ。

 放課後にだけ、その、身体と心アプリが、現れた。

 放課後は、まず、そのアプリが現れるのかどうかを調べた。そうしてから、華道部に向かうようになっていた。

 「…遅いよ。ケイ先輩?」

 「ごめんよ、ユキちゃん?」

 他の部員には聞かれないよう、内緒の、声がけ。

 こんな会話を聞かれてしまったら、間違いなく、恋人と思われてしまう。

 「…ほら、あの子?ケイと、付き合っているんじゃないのかな?」

 そんなの、ダメだ。

 「ユキちゃんに、迷惑を、かけちゃうよ…」

 っていうのに、ユキは、強かった。

 「…私は、恋人だと思ってもらっても、かまいませんけど」

 積極的なユキならではの言い方が、まぶしすぎた。

 次に、そのアプリが現れたのは、3日後。

 売り場の看板を、タップ。

 「チャラ~ン…」

 効果音が、鳴って…。

 スキー場に降り続いていた雪が、また、収まってきた感じ。

 「これは、良いな」

 3日後にも、このアプリが、現れた。

 売り場の看板を、タップ。

 「チャラ~ン…」

 効果音を聞くごとに、ケイのほうは元気になれた。

 が、ユキのほうは、おとなしくなっていくばかりだった。それは、元気をなくしていたように見えた。

 その様子を、ケイは、大きく勘違いしていた。

 「そうか。ユキちゃんは、タップすることによって、どんどん、おしとやかに、なっていくんだな」

 元気がなくなっていく子のことを、おしとやかだと捉えてしまうのが、中学生のわがまま?

 「ユキちゃん?」

 「あ、ケイ先輩…」

 「最近、元気がないんじゃないか?」

 「そんなこと、ないですよ…」

 ユキは、無理にでも、笑顔を作ろうとしていた。





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