第11話 新しい仲間、ソフィ

「おっはーっブノワ君、もうギルドに来てたのか?」

「ああ、はい……」


 駆け足でやってきたニコルを追いかけて、ショートカットの女の子が走ってきたので、僕の目はそっちに向けられた。


「おはよう」


 返事しながら、ニコルの隣に居た女の子を眺める。


 ショートカットの髪、金色なんて……珍しい、さすが街だなぁ。


「ねぇ、この人誰だい?」


 ニコルがアリスを見上げながら尋ねてきた。


「新しいパーティ仲間だ、アリスだ」

「何だって!?嬉しいなっ、私はニコル、皆からチビって呼ばれてるけどね。ブノワ君のパーティさっ」


 ニコルが満面の笑みで挨拶するのを、


「ほほう」


 アリスはニヤニヤと笑みを浮かべながら、下調べするようにジロジロとニコルを観察する。


 アリスの行動に首をひねったニコルに、


「ニコル、そっちもこの人は誰なの?」


 僕が尋ねると、


「そうだ実はねブノワ君っ、こっちも見つけたんだよっソフィさっ」

 

 金髪の子が前に出て、


「ソフィです、よろしくね」


 凛々しい声だった。


「これはどうも、ブノワと申します」

「俺はアリスだ、よろしくなっ」


 僕らは恭しく挨拶をした。なぜだか気品みたいのがこの人からは溢れている。それに引っ張られて恭しくなってしまう。


「何のつてもない私を入れてくれて感謝いたします」

「新人同士でパーティを組むのが、俺たちみたいなモンのできる唯一の事さっ。協力してランクアップ目指そうぜ、ソフィ。そんでっ」


 アリスがニコルに歩み寄り、


「チビもよろしくっ」


 フルスイングで肩を叩いた。


「ふがっ」


 ニコルが前のめりに顔から倒れる。


「……おい、やっぱこいつ大したことないぞ」


 アリスが僕に耳打ちしてきた。


「何やってんですか……」

「ちょっとかましてやろうと思ってよ、、うっしっし」


 まったく……


「強すぎだよっ痛てて」


 ニコルが顔をさすりながら起き上がると、アリスに飛び掛かかり、


「こっちもよろしくっ」


 と、お返しにとアリスの肩をフルスイングでぶっ叩く。


「きゃっ」


 アリスが前のめりに倒れ顔から叩きつけられた。


「いったーい……」

「うわっはっは!ブノワ君、なかなか元気な子を連れて来たね、良いよ良いよ、ニコルは好きだな、こういうのも!」

「ははは、そうですか……」


 ニコルに僕は愛想笑いで返す。


 アリスはずれた眼鏡を直す事なく、ゆっくり起き上がり、


「中々やるな、てめぇ、気に入ったぜっ」


 右腕を振りかぶり、


「よろしくっ」


 もう一度、フルスイングで叩いた。


「ふがっ」


 ニコルが前のめりに倒れる。


「うぅぅぅ、いえいえ、よろしくっ」


 すっくと立ちあがるとフルスイングで叩き返した。


「いえいえ、よろしくっ」


 アリスが叩き返す。


 ……何をやってんだ、こいつら……。


「でも良かった、新人は土産をもっていかないとパーティに入れてもらえないってホントだったんですね、まったく冒険者の活動が出来ませんでした」


 そんな二人を尻目にソフィが僕に話しかけてきた。


「僕らみたいな新人ばかりのパーティはかなり珍しいみたいです」

「ブノワはどこの剣術を?」


 手に持った剣が気になったらしい。

 

「……さぁ?言えば無我夢中流ですね」

「あら、頼もしい」


 そう笑うソフィの腰にも剣が一振り刺さっている。


 レイピアか……しかしやけに長い。


「ランクが低い分、私達は技を修練しなければなりませんね」

「そうですね、練習で手合わせお願いしますよ」

「ええ、いつでも」


 ソフィが強気に微笑む。


「という事で依頼見に行きましょう、アリス、ニコル、いい加減にしろよ」


 僕らは大階段下の掲示板に移動した。


「急募、宮廷のパーティでの毒見、か」

「これしかないですね」


 当たり前だがランクの低い冒険者への依頼は少ない。できる依頼は限られていた。


「しかもこれ2人って依頼だぜ」

「同じパーティなら全員が経験値を得れるはずです、誰かが行けば良い」

「ねぇ、それどんないらいなのさっ」

「出される料理を全部事前に食べて、毒がないかを調べる依頼だよ」

「えっ、ごはんをタダで食べれるのかいっ」


 ニコルが目を輝かせる。


「はいはーい、ニコルは行くよっ」

「俺は無理、野菜嫌いだ、出されたら食えねぇ」


 アリスが首を振る。ソフィが僕に向いて、


「では……私か、ブノワかですね、コインで決めましょう」

「やりま――」

「――おいブノワ」


 突然アリスが耳打ちしてきた。


「あの手下と一緒にしちゃまずいだろ、お前が行け」

「ああ……」


 それもそうだ。


「お前と手下が言ってる間に、俺が何とかデーモンの事、ソフィにも伝えるよ」

「……信じますかね?」

「そん時はそん時っ」

「ブノワ、何をこそこそ話してるのよ」


 ソフィがコインを片手に持って僕を待っていた。


「ごめんソフィ、僕に行かしてくれ。どうしても行きたいんだ」


 ソフィは訝しい顔をしたが、


「はぁ……まぁ良いですけれど……」

「ありがとう、じゃニコル、今すぐ行くぞ」

「うーっし、じゃ行ってきまーすっ」

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