第24話 デーモンの焦り
階下の部屋に急ぐと、部屋の前に腰に剣を刺した革防具を装備しているホテルの警備人が集まっている。
何だと思っていると、その中心に、ピンクのフリフリの服を着たアリスがいた。背中に弓を背負って、警備人達と言い争っている。
「アリス!何やってんだ?」
「ブノワ!?」
アリスの元へ、かき分け駆け寄った。
「何でここに?」
「異変に気づいて調査していました冒険者のブノワ・ペローです」
集まっていた警備人達に腕輪を胸の前に出し敬礼をする。警備人達が僕に姿勢を正した。
「ブノワっ、ソフィがいないんだ、俺の記憶も飛んでる……気がついたら閉じ込められてたんだよ」
「わかってる。アリスが帰ってこないから見に来たんだ」
「冒険者殿、説明してもらいたい。この女性が」
警備長だろう、被っている帽子が一人だけ赤い。その髭を蓄えたがっしりした人がアリスを指し示し、
「騒ぐわ暴れるわで、ホテルの部屋がめちゃくちゃです」
「縛られてたんだ、個々の部屋に閉じ込められてよ、それで暴れたんだ!」
僕はアリスを制止しながら、
「全てはラギスールの陰謀です。やつはゴブリンがデーモンの力を借りて人の姿に化けた姿でした、死体は上の、奴の部屋にあります」
警備長に言った。しかし僕の話に半信半疑だった。
「デーモンにそんな事ができるんですか」
警備人達がざわめきだす。
「そんな事があるわけ……」
「デーモンなんてものが、そんな事……」
皆が顔を合わせ、戸惑っているのを、
「事実です。このホテルをすぐに立ち入り禁止にしてください。止まっている客も全員部屋から出ないようにしてください」
警備長に言った。
「とりあえず死体は身に行ってみてください、この部屋の丁度上の部屋にゴブリンロードの死体がありますから」
「大変な騒ぎだな」
その時、忘れもしない奴の声がした。
「これはロシュフォール様!」
警備長が叫び、僕の背後へお辞儀をしだす。
ロシュフォール!?
振り返ると、警備人達が一斉に壁側に並び道を開ける中を歩いて来て、
「警備長、また反乱者か?」
「閣下、ここは危険でございま――」
「――質問に答えろ」
「はっはい、なんでもラギスール様が魔物だったらしく、ここにいらっしゃります冒険者が討伐したとのことですが……わたくしも今から確認をしに行くところでございます」
ロシュフォールの目が僕をとらえた。
「……?たしか、昨日の」
「はい、毒見の時は助けていただき、ありがとうございました」
「……ラギスールは知己でな。それが魔物だったとはどういう事か、私も知りたいな」
「そのままの意味です、ここら一帯のゴブリンどものボスはラギスールでした、デーモンも、この街にいるという事です」
何を思ったのか、僕はこいつを試すようなことをしてした。
「とても信じられん、今までずっと普通に話してきた……」
「この部屋の丁度上の部屋、ラギスールの部屋に死体がありますので身に行ってみれば宜しいかと」
「うむ……警備長、案内しろ」
警備長に導かれ、ロシュフォールは歩き出した。僕もその後を付いて行く。
と、そこへ、
「ねぇ、ソフィは?」
アリスが引き止めて聞いてきた。
「死にました」
「……嘘だよな……」
アリスは目を見開き、同様を隠せないでいる。
「本当だ。ゴブリンだったラギスールによる食害でな」
「そっそんな……」
アリスが茫然と固まってしまった。僕はその震えている肩を持ち、
「良いか、君も冒険者だ、仲間の死に動揺しちゃいけない」
「……うん……わかってるっ……」
か弱い返事をするアリスに、またもロシュフォールに対しての何か攻撃したいという欲求から、僕は、
「ソフィは、実はこの国の姫だったんだ」
とロシュフォールに聞こえるように言った。
「……へ……?」
聞いてるか、デーモン。
「姫が食害されたんだ、国の一大事だ。そして、とても悲しい事件になった」
「ソフィが姫?」
「信じられないかもしれないが、確認した。これを見てくれ」
死亡確認紙を取り出し、
「何それ……?」
「ソフィの死亡確認紙さ。本名はソフィ・リドフォー・デュ・オブリー・ティエル。確認するかい?」
「なんだとっ!」
ロシュフォールが僕に詰め寄って来た。
「姫は食われただとっ!」
威嚇するように、怒鳴り服を掴んで僕に、
「何を言っている!なぜ姫がこんな所に居るんだ!?」
「ソフィは身分を隠し我々とパーティを組んでいました」
「なんだとっ」
「これをどうぞ」
死亡確認紙を差し出すと、ロシュフォールは僕の手から死亡確認紙を奪い取る。
……好意を寄せていたというのは、本当なんだな。焦りが出ている……。
「そんな事が……あるわけ……」
と、ロシュフォールの死亡確認紙を持つ手が震えている。
ははははは!僕がデーモンを焦らしている!僕がこいつを!こりぁ良い!
「……死体はどこに……?どこにある、探せ警備長!」
「厨房下の貯蔵庫の一番奥の部屋に食った後の体があるという事です」
僕が言うと、一瞬固まって僕を見た後、ロシュフォールは階段へと走っていった。
あんなに焦っているなんてっ!はははははははっ、笑いが顔に出さないようにするのでいっぱいいっぱいだ!最高だ!
「ロシュフォール様!」
警備長が慌てて追いかけようとするのを、
「待ってください、あなたはすることがあるでしょう!」
引き止め、
「アリス、君はここに居て。さぁ上階へ確認に行きましょう」
僕は歩き出した。
「……何やっている!お前達はロシュフォール様の元へ早く行かないか!」
回りの警備人に怒鳴り、警備長1人を残し全員が階段を駆け下りていく。
「ブノワ、俺もソフィの元へ行ってくる!」
「え?」
返事も待たず、アリスも階下へと追いかけていった。
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