第4話 ティエル家の領地、マノンの街

 慣れない山道と悪天候、魔物に怯え移動していく日々。20日もかかって僕は、マノンの西城門にやっと到着した。


 西門の警備兵3人が、僕を取り囲み検査を始める。槍先を向けられたまま、ポケットというポケットを調べられる。


 革製の手甲に脚に脚絆、身軽にいでたった姿、腰にナマクラ剣を付けている僕は怪しいらしい。


「荷物もほとんどないな、流れ者か?」


 厳つい顔の男が慣れた口調で聞いてきた。


「はい、この街で冒険者になろうとおもいまして」

「ロシュフォール領から来たのか?」

「はい」

「最近多いな……何か起こってんのか?」

「領主がデーモンになってしまったんです」

「はははっそれは大変だったな」


 警備兵らが検査を終え、荷物を元に戻す。


「行って良いぞ」


 と言うと、全員がさっさと中に戻っていった。カードの続きをし始めながら厳つい顔の男が、


「冒険者ギルドはここから入って通りをまっすぐ、右側にあるスベガミ神の紋章が目印の門が見えるから、すぐわかる」


 僕の顔を見ずに、カードを配りながら教える。


「ありがとう」


 ジグザグに配置された柵を抜け、城門をくぐった。


 マノンの街が視界に広がる。


 レンガ造りの高い建物がどこまでも大通り沿いに続いて、青い空が遮られていた。遠くにマノン城が見える。


 さすが豊かな国は違うな。美しい街並みだ、行きかう人も活気がある。


 行き交う大量の荷物を積んだ馬車やロバを横目にゆっくりと進む。道沿いに並んだ店々からは活発な商人の声が僕を呼び止めようと発せられ続ける。


 ずっと頭を左右に振りキョロキョロしながら歩いていると、やがて4つの丸がひし形に並んだ紋章が掲げられた門が見えてきた。


 ギルドだ。


 ……なんか緊張してきちゃったな。


 ドキドキを感じながら門に近づくと、緑の芝生の庭が広がっていた。何十人もも鎧を着た冒険者がのし歩いている。


 庭の奥にぶっとい円柱の建物があった……あれがギルドだな。


 広い庭を早歩きで横切る。そして素早く建物内に入ると、その上に僕の家が立てるほどの大階段が僕を拒むように設置してあった。


 佇んでギルド建物内を見渡す。


 大階段左側の酒場では呂律の回ってない叫び声が上がり、右側に神水晶がずらりと並んでいた。


 円柱の建物は吹き抜けになっていて、2階はすべて武器、防具屋、道具屋が並び、買い物している冒険者、剣を振っては掴み心地を確かめている冒険者達が、ここから望められた。


 3階は、薬屋や、マッサージとかの看板が見える。


 よし!


 僕は、胸を張り肩で風を切って冒険者で溢れるエントランスの、奥の受付へと向かった。


「冒険者登録を!したいのですが!」


 すぐ目の前にいる人に、そう叫ぶように言ったのでびっくりされた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る