第五話
◇ ◇ ◇ 二日目 午後一五時 二三分
俺は『殺人鬼』ホズから逃げ切り、現場を離れた。
ケセムが事故の一件もあり、高速道路を降りられなかった為である。
俺が仕方なく隠れ蓑に選んだのは、キャラクターの設定で通っていた大学。
モダンバレーキャンパスだった。
この大学は『殺人鬼』ホズのホームだが、同時に俺のホームでもある。
ホズの情報を調べるなら、これ以上の場所は無いだろう。
そして俺は合流までの四時間を生かして、後輩設定のNPCから情報収集に努めていた。
時刻はおやつ時、カフェテリアで疲労を癒やしていると一人のおっさんが話しかけてくる。
「おぉーう。待たせて悪かったな、オノイチ」
灰紫色のスーツにYシャツをだらしなく出したおっさん。
見慣れない顔の所為で誰かと思えば、素顔のケセムだった。
「マジで頼むわ、ブラザー。アンタの腕力が頼りなんやで?」
「悪かったって、ここは奢ってやるからさ。ねーちぁん。ちゅ~もぉ~ん」
声をかけられた時は、刺客かと思ってチビりそうやったわ。
相棒は俺の恐怖体験には興味が無いらしく、周囲を見て無邪気に喜ぶ。
実際、このカフェは良い。周囲でも身なりの良い学生達が談笑をしている。
「良い雰囲気の場所じゃん? このゲームにもこういう所もあるんだ」
「このゲームも色々遊べるんや。アンタはレベリングに集中してて知らなかったか?」
スラムと下町の間にあるこの大学の敷地は、意外にも治安が良くカフェテリアも清潔だ。
日当たりの良い室内、白を基調とした天井や壁。円卓の客席には染み一つ無い。
対して椅子やガラス枠等は黒で統一し、カジュアルな雰囲気を醸し出している。
ここがゲームだと、忘れてしまいそうだ。
「俺の故郷には無い店だな」
「アンタの故郷は東南アジアだっけ……で、マスクは?」
軽く流したが、ケセムはマスクを被っていない。
彼の素顔はリアルに似せたらしく、顔はどこにでも三十代後半のおっさんだ。
東アジア系の黄色人種で、太い眉毛が特徴的な堀の深い顔立ちをしている。
俺の質問にケセムはチッチッチと舌を唸らせ、自慢げに言う。
「ここが野郎のホームだって言うんなら、マスクは被って来ない方が良いだろ~?」
普段は大きく見える身長も、今の身長は160を超える程度なので声と違和感がある。
『英雄』として活動する時は、上げ底靴を履いているらしい。
「プロって凄ぇや。雰囲気とか体型が違ぇもん」
「俺からすれば、システムアシストってなんじゃこりゃ~って感じだけどなっ!」
俺達は互いの文化の違いにゲラゲラと笑う。まるで三日前までの日常だ。
その後も一頻りジャレて、頼んでいたマンダリンを啜って喉を潤す。
マンダリンとは嫌な苦みが無く、飲み易い口触りの珈琲である。
焙焼された珈琲豆の焦げる匂いとのギャップが素晴らしい。
「ここじゃモンブランかよ。オノイチは酒飲みの癖に、甘いのが好きなのか?」
「うっせ、別に俺は酒飲みって訳じゃねぇんや」
俺は珈琲とマロンモンブランタルトの組み合わせが好きだ。
ねっとりしたマロンを舐める様に食べて、珈琲で味覚をリセットする。
そしたらタルト生地を噛み、食感の違いを楽しむ。
特にこの店はタルトがビスケットってのが良い。珈琲に良く合う。
「それで……ホズに関してどこまで調べた?」
「喜べよ兄弟。完全に捉えてるぜ?」
朝まではSNSを利用してホズを追っていたが、情報収集を終えた今は違う。
ホズの名前も行動範囲もホームも抑えた事で、常に現在地が把握できる。
具体的には三十分毎に俺の携帯へ、ホズの現在地と写真が送られてくるのだ。
その所為で携帯の写真フォルダは、ホズの隠し撮り集みたいになっていた。
「今は下町のスーパーマーケットに潜んでいるな」
ケセムは「何で?」と尋ねてくるが、俺に連続殺人鬼の考えなんて分かるか。
大方、物資の補給の為だろう。俺がそう答えるとケセムは考え込む。
「ふぅむむ、すぐにでも攻めるべきか」
「その事だけどよぉ。ここら辺で一回止まらねぇ?」
俺が呟いた瞬間、ケセムの雰囲気が一変した。
その威圧感に、思わず俺の喉が「ヒッ」と鳴る。
ゲームの中で見てきた、ギャングの抗争ともホズの威圧とも違う。
敢えて言うなら、友達が唐突に巨大カマキリに脱皮した様な恐怖だ。
「アイツがスーパーに留まってるのは、待ち伏せか罠かは分からねぇけどよぉ」
「ふぅむむ。ホズが出てくる所を抑える作戦か?」
その言葉に俺は首を横に振る。
俺が言いたい事は一つだけ。もうホズを追うのを辞めようって事だ。
だが冷静さを欠いているケセムに、何となく止めようなんて言っても意味がない。
俺は奴と俺達の戦力差について言及した。
「なぁケセム、俺はミリオン・パンクで長ぇ事遊んでるけどよぉ……アイツはやべぇって」
「消極的じゃねぇか。ホズはオノイチとのチェイスで消耗してるんだろ? 攻め時だ」
俺はケセムの様子に不安を感じた。
彼の悪い癖だ。このゲームを所詮ゲームだと侮っている。
リアルで賞金稼ぎの自分が、ただのヲタクに負ける筈が無いと。
その通りではあるが、デスゲームの最中では不安を煽る材料にしか見えない。
「アンタの腕は疑って無ぇよ。あんな短時間でキャラクターを育てられたし」
実際、とんでもない話だ。
VRゲームを知らない素人が、ゲームを始めてすぐにトップランクに躍り出たんだから。
「だけどアイツはやべぇ。他の奴が徒党を組んで、ホズを狙うまで待とうぜ」
「逆も然りだろ? ホズが徒党を組んで、身を固める可能性はある」
そうだよ。それが狙いなんや。クソッ!
奴が徒党を組んで、俺達の戦力じゃ絶対に無理! ってなってくれれば楽だ。
強い徒党と他の徒党で潰しあって欲しい。その方が俺の生き残る目が出てくる。
だがケセムはそれでは我慢ならないらしい。
「なぁ、オノイチ。俺はホズと相打ちになっても構わねぇ、戦力とか利益はどうでも良いんだ」
「まぁ待てよ、ブラザー」
「いいやっ、待たないっ!! 俺が、俺がアイツを殺す事に意味があるっ!!」
「何があったかは分からねぇけど、そんな事に命を賭ける――」
価値はないという俺の呟きは、最後まで続かなかった。
ケセムが俺の胸倉を掴むと、テーブルを引っ繰り返したからだ!
「もう一回言ってみろォ! そんな事だぁ!?」
机上の料理や食器が地面に散らばり、カン高い音を鳴らして割れる。
俺は反応も出来なかった。なんせケセムの戦闘ステータスは俺よりも高い。
「ぎゅ、ぇ。し、死ぬよりは、死ぬよりは良いやろっ!」
「そういう問題じゃ、なぁねぇんだよっ!」
マンデリンが純白のフローリングに広がり、墨の様に広がっていく。
周囲のNPC達も、俺達の感情域から戦闘の発生を予感して逃げ惑う。俺だって逃げたい。
今のケセムは人を殺すだけの化物だ。振り被られた処刑剣と化している。
「死ぬ生きるの話じゃねぇんだ。殺す為に俺はここまで……」
「う、うぎィ」
俺の襟元がとんでもない力で締めあげられ、呼吸が出来ない。
苦しくは無いが、徐々に意識が失われていく。
零距離で睨んでいたケセムが、俺の様子に気づいてはっと手を離す。
俺はよろめいて、後退しつつ咳込んだ。
「悪かったオノイチ。だが俺は止まる訳には行かねぇ。お前は来なくても良い……」
「そういう訳にもいかねぇやろ。俺一人じゃ、デスゲームを生き残れねぇんだから」
死にたくは無い。出来れば安全圏に居たい。
だがケセムはミリオンパンクでは珍しい、ガチガチの戦闘職である。
それに満更、不利という訳でも無い。
ケセムのジョブ『英雄』は、『殺人鬼』のカウンタージョブなのだ。
◇ ◇ ◇
「ビィッチ、アンドッ、バットガァア~イズッ!」
響き渡る男の声。続けて真っ暗な空間に、ドラムロールが鳴り響く。
ショータイムを告げる照明が、ステージ中央を照らした。
そこにはラテン系の男アンヂーと、ぬいぐるみのキャミーがソファに腰かけている。
アンヂーはトレンドマークであるダークスーツを着こなし、観客席へ陽気に叫ぶ。
「ミリオンパンク1999、楽しんでるゥ~?」
FOOOO、FOOOOッと思う存分囃し立てる、黒づくめの観客達。
アンヂーはOKOKと頷くと、指を鳴らす。
「という訳で今日もアンヂーっと!」
「キャミーで解説と実況をやっていくみゃ~~」
起き上がって大声をあげたのは、青狸と猫のぬいぐるみ。キャミーである。
二人の声は弾ける観客席の歓声に、負けじとステージ全体に響く。
だがキャミーは観客の様子に反して肩を落とし、祈る様に手を組む。
「アンヂー、ちょっと聞きたい事があるみゃ~」
「なんだいキャミー。何でも聞いてくれよ」
観客達の人気の一つ。二人の寸劇が始まった。
今回はキャミ―がアンヂーに、質問をする形式だ。
キャミ―は観客席を何度も指さしながら、アンヂーに問いかける。
「観客席の皆も、プレイヤーもFUCK YOUって言うの。どういう意味みゃぁ?」
OH……どよめく観客席。
アンヂーはやれやれと顔を横に振ると、人差し指で天を指した。
「マヌケ野郎って意味だよキャミー。聞いてる人がそこまで聞いてない事をペラペラと喋る上、分かりにくくて長ったらしい能書きなもんだから、物事を説明できてない馬鹿の事を指す言葉さ。分かったかい?」
「成程。分からないみゃ~っ」
キャミーが手を大きく広げて元気良く告げる。首をすくめるアンヂー。
続いて観客席から、「FUCK・YOU・アンヂー」コールが響くっ!
アンヂーはバツが割るそうな顔をすると、指を鳴らして巨大ディスプレイを生みだした。
「OKOK、悪かったよ皆っ。んんっ、先に行こうっ!」
画面にはデスゲーム中のプレイヤー達が、様々な角度から映し出される。
中には砂嵐が起きているモニターもあり、それを見たキャミーが首を傾げた。
「アンヂィ、着いてないディスプレイがあるみゃ~?」
「忘れたのかいキャミー。『殺人鬼』ホズが、特別参加枠である軍人さんを殺しただろう?」
半数の囃し声と、半数の罵倒。
ネオナチスと名乗る彼らの、複雑な待遇を物語る様だ。
対するアンヂーはそんな事は気にせず、砂嵐のモニターを見て満足そうにしている。
理由は簡単だ。ゲームが動いて喜ばない主催者はいない。
「やはりホズは優秀なプレイヤーだ。彼らのアイテム供給源『調達屋』を潰したね」
「でもでも。ただのゲーマー達で、軍人さんに勝てるみゃ~?」
「そう思うだろう? それが勝てるのさ。システムアシストならねっ!」
アンヂーが指を鳴らすと、砂嵐塗れだった画面が巨大化する。
画面から安っぽい絵柄のアニメーションが流れ出した。
恒例の二百年以上前の、カートゥーン調のモノクロアニメである。
【えぇ~ん。ゲームで無双したいのに、ジョック共がデカい顔してるよぉ】
【そんな貴方にバトルロイヤルVR!! ヲタクな君でもスーパーアクションが可能なんだ!!】
【わぁい! ボクに逆らう馬鹿共を皆殺しに出来たぞっ!!】
【しかも脳味噌に負荷をかければ、人間を超えた馬鹿力も可能!】
【銃弾だって切れちゃった!】
【ただし気を付けろっ! ストレス負荷がかかるから、下手すると……】
【うわぁっ!? 僕の脳味噌が爆発しちゃったよぉっ!】
【こうなる。疲れたらゲームからログアウトしようねっ!】
【えーんっ!! バトルロイヤル中だからログアウトできないよぉっ!!】
【寝ろ!! クソガキッ!!】
ヲタク少年とアメコミヒーローが、拳銃でアメフト選手を射殺するわ。脳みそが吹っ飛ぶわ。
悪趣味な映像が終わり、観客は大盛り上がり。凄まじい民度である。
「今日の昼間も凄かったぞぉ!! ハイウェイで大激突。しかも二回!!」
「大激突みゃっ!?」
頭上のディスプレイから、VTRがに流れ出す。
一つ目は大型トラックが、太り気味な男子高校生を壁と挟んで潰す映像だった。
ドライバーはトサカじみた髪型をした白人男性で、ラリった顔でその後も暴走を繰り返す。
続いては同じトラックが逆走し、東洋人が運転する軽自動車に正面衝突っ!
軽自動車が高速道路から叩き落される所で、映像は終わった。
「だから三つも映像が無いみゃ~?」
「あぁ。もう一つのシーンも面白かったよ」
最後の映像に、感嘆の声を挙げていた観客達が爆笑する。
そこには青いスーツを着た青年と学者風の中年男性が、高速道路でカーチェイスをしていた。
「うわぁっ。『殺人鬼』ホズにゃぁ~!」
「あぁっ! 今日のお気に入りシーンだよ。色んな意味でねっ!!」
逃げる男は一輪車に乗り、涎を垂らしながら両手を万歳してペダルを漕ぐ。
追う中年男性は、煽り運転に背後から小突かれたり横から衝突されていた。
あるある。同じ経験をした観客達は、生暖かい目で二人のカーチェイスを見守る。
だが煽り運転の二連射の後に、逃げる青年が何かをしようとした所で映像が途切れた。
「みゃ”ぁ”ぁ”っ!?」
「続きは有料会員になるか、後日発売する映像集を買って見てくれよっ!」
BEEEEPPッ BEEEEPッ!!!
観客席からの大ブーイング。キャミーも両手で顔を抑える。
アンヂーはチッチッチと人差し指を振るい、指を鳴らした。
そして今まで以上に巨大なディスプレイが生まれる。メインイベントが始まる証拠だ。
「仕方ないな。これから続きを見ようじゃないか」
「えぇっ!? 続きを見せてくれるみゃぁ!?」
「昼間の続きじゃない。『一般人』と『英雄』。そして『殺人鬼』ホズが戦うんだっ!」
EEEeeeKKKッ! EEEeeeKKKッ!
ディスプレイには『五年間無敗の殺人鬼』VS『アンチジョブの英雄』と大きく宣伝が映る。
『殺人鬼』側には先程写し出された中年男性のホズが。
『英雄』側には今まで映っていなかった、マスクの男が映りだされる。
だがキャミ―はディスプレイを見て首を傾げる。
「アンチジョブゥ?」
「キャミー、良いかい? 『殺人鬼』は戦闘特化のジョブだ」
背後の映像には『殺人鬼』ホズが、昼間にオノイチの家に侵入した時の映像が映る。
具体的には家の扉をノックした時、ノックした部分が融解して砕けていた。
現実に即したシステムを取るミリオン・パンクでは起きない筈の現象だ。
「チェイスの始まりに壁を壊したスキル……『悪鬼の心(キラー・ハート)』とかが有名だね」
「どういうスキルみゃぁ~?」
それは……とホズがキャミ―に耳を貸す様に手招きして、二人はコソコソ話をするが意味は無い。
何故なら『殺人鬼』とはこのゲームの花形であり、そのスキルも有名なのだ。
『悪鬼の心』とは、攻撃に超低確率で『即死』と『必中』の効果が着くスキルなのだと。
「ぇぇええ、攻撃に『即死』と『必中』ゥウウ!?」
CLAAAANN、GGUッッ!
ピアノが鳴らす衝撃のSEと共に、キャミーが大きな口を開けてショックを表す。
「正確には必ずクリティカルで当たり、ダメージ100点を与える能力だよ」
だがこのゲームのトッププレイヤー以外は、建造物を含めてもHPは99のみ。
つまり無策で『殺人鬼』と戦い、『悪鬼の心』が発動すれば相手は必ず死ぬ。
「さ、最強のジョブみゃぁ~~!」
CLAAAANN、GGUッッ!
キャミーがひっくり返って、嘆く様に叫ぶ。
「それでも『英雄』は対抗できる。タイマンが得意なジョブだからね」
「あっ、知ってるみゃっ! 『雑魚は引っ込め(ショー・タイム)』とか!」
『雑魚は引っ込め』。自動銃を一人に撃つ事で、システムアシストを得るスキルである。
『英雄』にはそうした単独の強敵と戦う事に特化したスキルが多い。
『殺人鬼』が複数戦を得意としてると考えれば、まさに水と油である。
だがアンヂーはそれだけでは無いと笑う。彼がニヤける時は悪趣味な事をする時だけだった。
「ケセムとホズには因縁があるらしい。という訳で運営がケセムを招待してあげたんだっ!」
「なぁ~んて、ロマンチック!! 優しい運営さんだみゃぁ~!!」
アンヂーは「人の喜ぶ顔が好きだから」なんて茶目っ気たっぷりにウィンクする。
だが観客達は白い目で見ていた。どうせ悪趣味な筋書きがあるのだろうと。
彼らは知っている。アンヂーがこういう態度を取る時は、悲劇のオチで終わるのだ。
キャミ―は冷える観客席に気づいておらず、新たな疑問をアンヂーに投げかける。
「それでもう一人の、紺色のスーツの人はどんなジョブなのみゃぁ?」
キャミ―の元気が良い質問に、アンヂーの顔が暗くなって俯く。
キャミーが震えながら、恐々とアンヂーの顔を見上げると……大きな口を開けて固まった。
「彼のジョブは『一般人』。ミリオン・パンク最弱のジョブなんだ」
「みゃ、みゃんだってぇええええっ!?」
CLAAAANN、GGUッッ!
本日三度目の衝撃のSEを鳴り、キャミーがソファからズリ落ちた。
そして観客席全体の空気もお通夜に変わる。「あぁ、死んだなアイツ」という雰囲気だ。
それも仕方ない。『一般人』はデメリットスキルを嫌うプレイヤーの為のジョブなのだから。
「彼が使えるスキル。仲間や友達を呼ぶ『お隣さん(コネクション)』は今回、意味が無いだろう」
「そもそも戦闘向きじゃないのみゃぁ? でもシステムアシストならっ!」
「そうだね、キャミーッ! 彼らのステータスを見てみようかっ!」
アンヂーが指を鳴らすと、観客席に見える様に三つのディスプレイが現れる。
そこには三人分のステータスがグラフチャートで表されていた。
【プレイヤー:『英雄』ケセム】
LIFE 【前科:六 扶持:五 魅力:五 学歴:五 戦闘:一二】
BATTLE【体力:五 精神:五 敏捷:八 命中:五 筋力:五】
【プレイヤー:『殺人鬼』ホズ】
LIFE 【前科:九 扶持:四 魅力:四 学歴:六 戦闘:一五】
BATTLE【体力:六 精神:六 敏捷:八 命中:六 筋力:六】
【プレイヤー:『一般人』オノイチ】
LIFE 【前科:五 扶持:五 魅力:五 学歴:五 戦闘:五】
BATTLE【体力:五 精神:五 敏捷:五 命中:五 筋力:五】
「ちなみにステータスが、三以上離れていれば格上だ。六ならば抵抗のしようが無い」
OHH……。
アンヂーの説明に、観客から思わずため息が漏れてしまう。
「ケセムしゃんに、勝ってる項目が無いみゃぁ~!」
「ホズの戦闘力と比べて、三分の一だと?」
ぴたりと静寂が降りる会場。見てはいけないモノを見てしまった感がある。
冷え切った会場を見た実況の二人は、同時に咳をすると空気を入れ換えた。
「ではVTRをどうぞっ!」
「生き残って、オノイチしゃん~!」
【「ヘキサゴン・プレミアム。大処分セールっ!!」】
【「デコ助に送るレンコンにマメ、お花」】
【「消費期限ギリギリの乾燥アンパンは、何と1グラム150ドル】
【「同じくアイスが400ドルに~」】
【「チョコは40ドルっ!!!」】
【「カマシも、型にハメてもいませんっ!」】
【「毎月二と九の着く日は、ヘキサゴン・プレミアムっ!」】
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