概要
【あらすじ】
大庭景義は、ふところ島(現・神奈川県茅ヶ崎)を本拠とする老武者である。若いころに負った戦傷のため、左脚が動かず、太い杖にすがって歩いている。
都から流されてきた罪人・源頼朝。
領地もない。財もない。屋敷もない。家来も養えない。名のある人々からは目の仇にされている。配流されて、すでに二十年。このまま辺境の地に、罪人として埋もれてゆくのか?
……生気を失った頼朝を、力強く励まし、援助する、景義。
まさかこの流人が、全国の武士たちの頂点に君臨することになろうとは、このとき誰も考えていなかった。
奇跡の大逆転が起こり、罪人・頼朝が、万騎の主となる、五ヶ月の大戦乱を描く。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!″つわもの″の生き様が心を打つ
一体何度、涙が溢れた事でしょう。
この物語は、源平合戦の時代を舞台にした本格歴史小説です。
武士の理、組織としての戦略、人の情、その狭間で生まれる葛藤、決断、愛が熱量たっぷりに綴られています。
主人公は、頼朝の麾下の老武者、大庭 景義(おおば かげよし)。
ふさふさした真っ白な眉毛と口ひげのおじいちゃんです。
え、誰? と思った方! 実は私もそうでした。
けれど、読み始めたらそんな事は全く問題無く、もうぐいぐいと物語世界に引き込まれました。
情景描写も素晴らしいのですが、登場人物達の会話シーンが秀逸です。
作者さん、その場に居合わせたのではなかろうか?
と思うくらいリアルで…続きを読む - ★★★ Excellent!!!かつてこれほど見事な日本人たちがいた
時代ものですが、しっかり今の時代にチューニングされた読みやすい文章です
難しい漢字や歴史考証などは脇に置かれ、とにかく分かりやすく楽しいに特化したエンタメ作品でした
これだけでも作者さまのなみなみならぬ力量を感じます
一話ずつの完成度が本当に素晴らしく、胸を打たれて読後に呆然とすることが何度もありました
これほどの見事なもののふたちがかつてこの日本にいた、その精神性の高さに日本人として誇りを感じます
オイゲン・ヘリゲルの『弓と禅』に通じる感動でした
時代劇や時代物が苦手な私が、巧みな話術に聞きほれるうち、気がつけば景義の大ファンに
本当に読んで良かった、読んで損なしの名作、心から皆様…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人生の後半戦を生き抜くことの美しさ
主人公は、鎌倉幕府成立期の重鎮の一人ではあるが、誰もが知る有名武将ではなく、戦場を駆け抜ける若武者でもなく、足のわるいおじいちゃん。
そのおじいちゃんが戦乱の鎌倉で八面六臂の大活躍するかというと、そういうわけでもない。
歴史の大転換期を、村の長老ポジションで、飄々と生きていく。
長い話ではあるが、各場面が短編の密度で描かれており、登場人物の心情や空気をじっくりと味わうタイプの作品のため、読み通すには時間がかかる。
お手軽で刺激的な、タイムパフォーマンス重視のエンターテインメントが好まれる時代に、地味な主人公による長い物語は、多くの読者にとって、最もとっつきにくい作品だと思う。
結果、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!〇ひたすら胸に迫る! 人物・心情描写が秀逸な歴史物
源平合戦の時代を描いた歴史小説です。
1話平均2,500字程度でちょうど読みやすい字数に押さえてあるのですが、
本当にすごいと思うのが、ほぼ毎回、たった2,500字の中で読み手の心を震わせるような感動を与えてくれることです。
何度も泣きそうになりました。
武者震いとはこういうことかと思いました。
どの人物も実に生き生きとしていて、姿かたちまで目に浮かぶようです。
声も聞こえてきます。
白状すると私は、武士がたくさん出てくる戦乱物って、登場人物の名前が似ていて誰が誰だか分からなくなりがちなんです。
でもこの作品は、たとえ名前を忘れていても「ああ、あの武士か!」とはっきりエピソードを思い出…続きを読む