〇ひたすら胸に迫る! 人物・心情描写が秀逸な歴史物

源平合戦の時代を描いた歴史小説です。

1話平均2,500字程度でちょうど読みやすい字数に押さえてあるのですが、
本当にすごいと思うのが、ほぼ毎回、たった2,500字の中で読み手の心を震わせるような感動を与えてくれることです。
何度も泣きそうになりました。
武者震いとはこういうことかと思いました。

どの人物も実に生き生きとしていて、姿かたちまで目に浮かぶようです。
声も聞こえてきます。

白状すると私は、武士がたくさん出てくる戦乱物って、登場人物の名前が似ていて誰が誰だか分からなくなりがちなんです。
でもこの作品は、たとえ名前を忘れていても「ああ、あの武士か!」とはっきりエピソードを思い出すことができる。
一人一人が生きているんです。

歴史物なので当然ながら、結末――というか「頼朝が鎌倉幕府を開くこと」は誰でも知っているはず。
だから「この先どうなるんだろう!?」というハラハラは少なめ。逆に「こんな状態でどうやって鎌倉幕府を開くんだ?」」という疑問が浮かぶくらいです。

でも小説って、ストーリーの続きが気になることだけが読む理由じゃないんですね。
というかむしろ一番大切なのは、心が動くことなんです。
感情を揺さぶられるために、人は小説を読むんだなあと、根本的な部分に立ち返らせていただきました。

人物や心情の描写だけでなく、自然の描写もものすごく美しいです。
登場人物が感動するその体験を、そのまま自分も追体験できるのです。

小説を書いている人なら一度は読むべき。
一見地味なシーンですら、描写のうまさで最高の場面にできる。
この作品は本当にすごいです。
読まれていないのはもったいない。
おすすめ度100%です!

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