第七章

第七章 四面楚歌その一

 三時間を超えるフライトも、ようやく終わりを迎える時がやってきた。

 固定翼機が最終の着陸態勢に入ると、機体はどんどん高度を下げて、目的地である旭川空港の滑走路へと向かっていく。

 気圧の変化によって、まりんの耳がキーンとした。結局、あの後から一睡もできていない。

 ヒルに指先から体内に潜り込まれた不安と恐怖は、今もある。しかし、それをミリルや大佐に打ち明ける勇気も機会もなく、ここまで来てしまったのだ。

 やがて固定翼機が滑走路を走るスピードは緩やかになり、動きを完全に停止させる。一悶着あったフライトを終えて、無事に旭川空港まで到着できたようだ。


「まりんちゃん、少し顔色が悪いけど、大丈夫?」


「え、はい……特に問題ないですよ」


 どうやらミリルは、まりんの様子がおかしいことに気付いてくれたようだ。しかし、まりんは曖昧に答えることしかできなかった。

 やはり、航行中に、あんなことがあったと報告する気にはなれない。恐る恐るもう一度、ヒルが入り込んだ指先を確認してみれば、傷口はすでに塞がっている。

 幸いまだ身体に異変は起きていないが、それでも気がかりは拭えなかった。だが、旭川空港に着陸した今、いつまでも機内で座っている訳にいかない。

 まりんはシートベルトを外し、座席から立ち上がる。その時、やはり様子が変だと察してくれたミリルが、まりんの手を取ってエスコートしてくれた。


「ミリル、私達はこれから前線に向かわされるんですか?」


「ううん、私達はあくまで予備戦力だから、すぐに前線送りはないと思うわ。でも、いざという時には、私の異能を切り札として準備しておきたいんでしょうね。そんな事態にならないことを祈りたいわ」


 ミリルは決して楽観できる状況ではないと、笑顔に陰りを見せた。いずれ自分達が戦場に駆り出されることになると、確信しているのだ。

 とにかく、まずは降りよう。まりんが顔を上げると、大佐の方は、気が付けばすでに固定翼機の出入り口まで移動している。

 そして機内から降りようとする間際に彼は振り返り、上着のポケットから煙草を取り出しながら言った。


「おい、どうやら俺らは歓迎されてるみてぇだぜ。こっちは、たった三人だけの予備戦力だってのによ」


 大佐はそう言って、タラップを降りていく。歓迎されているとは、どういうことなのだろうか。その意味を求めて、まりんもすぐに彼の後を追う。

 まりんとミリルがタラップを伝って滑走路に足をつけると、そこには米軍人だけではなく、別国の軍人達が待ち構えていた。

 別国の軍人達は、全員がロング丈のダウンコートを着ている。そして目を引くのは、左腕に双頭の鷲に三つの王冠がある腕章を身に付けていることだ。

 確かあれは露国の国章だった気がすると、まりんは記憶を手繰り寄せた。人数は米軍人と合わせて数十人、確かにかなり手厚い歓迎ぶりだといえる。

 その中から一人の男が進み出て、ミリルに握手を求めた。コートの上からでも分かる筋肉質な体格と、強面で荒々しい雰囲気を纏った壮年の将校らしき男だ。

 細かい傷痕が無数にある顔と、赤髪でオールバックに整えられたその姿を見て、まりんは彼にも父の面影を感じ取る。


「これはこれは、話に聞いていた通りの美しさだな、ミス・ミリル・ベーカー。私は露軍のセルゲイ・ヴィクトル少将だ。東京からの長距離移動でお疲れだろうから、私達がこれから君達が滞在する宿舎まで案内しよう」


「いえいえ、将軍自らお出迎えとは、光栄ですね。それで宿舎というのは、露軍の……ということでしょうか?」


「そうだが、何か問題でもあるのかな、ミス・ベーカー?」


 まりんはフォローを求めて、ちらりと米軍人達の方を見たが、目を伏せている。

 口出しできる立場にはない、ということだろうか。

 どうやら米軍と露軍とでは、今の国連においては米軍の方が立場は弱いのだと伝わってきた。

 ミリルの話では露国は信用ならないというし、どう切り返す気なのだろう。ドキドキしながら、まりんは二人の会話の行方を見守ることにした。


「問題なんてとんでもない、将軍。大変、ありがたい申し出です。ただ、出来ることなら、どこかで近況についてお聞かせ願えれば助かりますね」


「うむ、勿論だ。彼女達を軍用車までご案内しろ。丁重にな」


「ははっ、了解致しました」


 セルゲイの背後で整列していた露軍人達が、敬礼する。そして彼らは厳しい表情で、まりん達について来るように言って歩き出した。

 まりんも追おうとするが、その際にセルゲイと大佐が視線を交わしていたように見えた。二人には面識があるのだろうかと思ったが、互いに無言のままだ。

 しかし、それはほんの僅かの間のことで、二人はすぐに視線を外して歩き始める。

 だから、まりんも特に気を留めずに、露軍人の背中を追っていった。空から降る雪がちらつく中、目を凝らすと次第に旭川空港の様子が分かってくる。

 露軍と米軍、他にも中国や欧州の国々の軍隊が駐留しているようだ。軍用車や戦闘機なども駐機させてあり、ここは北海道防衛の要の一つなのだと理解する。

 やがて露軍人達は、滑走路に停車していた軍用車の前で立ち止まると、その中の一人がドアを開けてくれた。


「ミス・ベーカー、旭川市内にある宿舎まで、我々が責任を持って送り届けよう。途中、キャンサーに襲われる心配など、させないつもりだ。さあ、乗ってくれ」


「ええ、それはありがたいですね、将軍」


 ミリルは相手を皮肉った、わざとらしい作り笑いを浮かべる。仕方なく従ってやってるんだと、暗に不快だと、訴えているのだ。

 しかし、逆らえるはずもない。渋々、まりん達三人が後部座席に乗車すると、セルゲイは助手席に座る。そして運転手の露軍人がアクセルを踏み、出発していった。

 軍用車は、スピードを上げて滑走路を走り抜ける。そのまま戦車が何台も守りを固めている空港の出入り口を飛び出して、公道に出ていく。

 旭川空港の周辺は、雪が積もった田園地帯が広がっているようだ。上空には公道を守り抜こうとしている、幾つもの軍用ヘリコプターが飛行していた。


「さて、約束通り今の状況をお話ししよう、ミス・ベーカー。我々は旭川市を拠点とし、札幌への侵攻経路を確保中だ。キャンサーからの反撃はあるものの、着実に成果を上げている」


「吉報だけではなく、ネガティブなものもお聞きしたいですね、将軍」


「ははは、手厳しい指摘だな。だが、そうだ。キャンサー共の領域に踏み込む度に、国連軍も確実に損耗していっている。そこへ救世ボランティアの別派に攻められては、戦線を維持し続けられるか、保証はできないだろうな」


 セルゲイは苦々しげな顔で、そっと自分の顎鬚を撫でた。しかし、その後、何を思ったのか後ろに顔を向け、後部座席にいるまりん達を、まじまじと見つめる。

 いや、見つめたのはミリルと大佐ではなく、まりん一人だった。厳つい顔に凝視されたまりんは、自分が何か気に障ったことでもしたのかと、ぎくりとする。


「ところで、ミス・ベーカー。露軍独自の情報網では、カルジ・カーティケヤが君の集落に送り込んだ航空母艦を撃破した少女がいたらしいのだが、もしかしてこの子がそうなのかな?」


「っ!」


 まりんは、心臓が飛び跳ねそうになった。炎の能力のことは隠し通せと忠告されていたのに、初っ端からバレてしまいそうになったからだ。

 心臓の鼓動をばくばくさせながら、心の動揺が顔や態度に出てしまっている。

 だが、今の質問の仕方なら、まだ確信されている訳ではないはずだと自分に言い聞かせた。

 ただ、かまをかけてきただけだろう。しかし、ここで対応を間違えば、疑いを持たれることは間違いない危機的な状況だ。

 そんな、しどろもどろのまりんがボロを出す前に、ミリルが答えてくれた。


「いいえ、違いますよ、将軍。こんなか弱い女の子に、仰られたような勇ましい戦いが出来るとお思いですか?」


「それを言うなら、君も同じだな。キャンサーにすら通じる、君の魂を支配する能力を、我々は評価しているのだよ。見た目と強さは、必ずしも一致しないものだ」


「それは私を買い被り過ぎですね、将軍」


「勘違いしないでくれ。私は、ただ危惧しているだけだ。かつて米国を蹂躙した、あの史上最強と呼ばれたキャンサーのことを思い出してな」


 ミリルとセルゲイは、しばらく視線を交える。どちらも目が笑っていない。しかし、セルゲイも別に責め立てるような態度ではなかった。

 先に笑みを漏らしたセルゲイは、視線を外して助手席に深く腰を下ろした。その顔は、何か満足がいったような楽しげな笑みを浮かべている。


「やめておこう、つまらない揉め事は作戦に支障をきたしかねない。カルジ・カーティケヤは、奴らの北海道内の拠点、帯広市にすでに到着したと報告が上がっている。いずれ我々、露軍も国連軍として奴らと戦うことになるだろう」


 セルゲイは、敵の拠点をさりげなく教えてくれたようだ。

 キャンサー誕生の地である札幌市は、広い北海道の中でも道央と呼ばれる地域に位置し、国連軍が駐留する旭川市は道北に、そしてカルジ達の作戦拠点であるという帯広市は道東に位置している。

 これら三都市を線で結べば、ちょうど三角形になる。これから、この範囲内で、三つの勢力が対峙することになるのだ。ただし、それは国連軍が一枚岩で団結できるのならば、という条件が前提の話だが。

 ふと、まりんはさっきから一向に会話に入ってこない大佐が気になり、横目で見やると、彼は火がついていない煙草を咥えながら、窓の外を眺めている。

 その表情は、どこか冷ややかだ。固定翼機を降りてから一言も口を利いておらず、どうしたのだろうかとまりんは思う。

 元々、口数が多いタイプでもないが、彼の心中が少しだけ気になった。

 気付かれないように彼の様子を窺ってみたものの、一向に変化はない。結局、理由は分からないまま、会話のない車内で時間だけが流れた。そして……。


「見えてきたようだな。あれが旭川市街だ。あそこではキャンサー襲撃の心配はない。宿舎に到着したら、自由にしてくれたまえ。ただし、我が露軍の監視はつくがね」


「まあ、予想していた通りの警戒され方ですね。不服はないですよ、将軍」


「ははは、それは察しが良くて助かる」


 ミリルの棘を含んだ言葉を、セルゲイは笑って軽くいなす。

 その間も車は走り続け、交通の要衝・物流の集積地として発展し、かつては法令で定められる北北海道の拠点都市だった旭川市の街並みが近づいてきた。

 現在は雪と氷に覆われ、昔ほどの賑やかさはないのだろうが、雪空で薄暗い中、街には人口の明かりが灯っていた。

 旭川市でも東京の集落のように、インフラが生きているのだ。滅びかかっている世界において、まりんにはそれが非常に心強く感じる。

 やがて軍用車は広々とした田園地帯から、旭川市街に入っていった。この都市に十年前には三十万人以上が住んでいたらしいが、今でも人の姿をかなり確認できる。

 ただし、いるのは市民ではなく武装した軍人ばかりだ。戦車も反対車線から頻繁に走ってきており、その度にすれ違った。


「この都市は初めてかな、お嬢さん。今やこの旭川市は、大きな軍事施設のようなものだ。娯楽施設はなく、君のような若い子にはつまらないかもしれないな。ところで、呼ぶ際に不便なことだし、名前を聞かせてくれるか?」


 セルゲイがまた後部座席のまりんを振り返って、そう言った。


「え、私ですか? わ、私は……東郷、まりんです」


「東郷……? 偶然の一致か。いや、もしや君は東郷ゼット博士の……」


「お、お父さんを知っているんですかっ!?」


 意外な人物の口から父の名前が出て、まりんはつい声が大きくなった。

 もしかしたら、この人は父のことを知っているかもしれないと、否応なく期待が膨らんでしまう。

 何しろ、やっと父親の手掛かりが掴めたのかもしれないのだ。気持ちが逸るあまり、呼吸が荒くなる程、動悸が高まってきた。


「やはりそうか。東郷ゼット博士は、国連にとっても最重要人物だ。彼はキャンサー研究の第一人者で、奴らの正体にもっとも迫っていると言われていたからな」


「い、居場所は分かりますかっ? お父さんは、どこにいるんですっ!? まだ生きているんですよね!?」


「すまないな、お嬢さん。博士は、十年前から行方不明だ。生きているのか、死んでいるのか。それすら、我々は足取りを掴めていない。ただ……」


 セルゲイは最後に少し言い淀んでから、まりんの顔をじっと確認する。そのまま見つめながら、中々、続きを話そうとはしなかった。

 焦らされているようで、まりんは苛立ち、腰を浮かして身を乗り出す。すると、ようやく彼は、薄く笑ってから再び口を開いた。


「東郷ゼット博士は、人間の力でキャンサーを倒す研究を進めていた。しかも、一定の成果を上げていたと聞く。だから、もしかしたら博士は娘である君に研究成果を託していたのではないかと、私は考えているのだがね」


「そ、そんな……私、お父さんの研究成果なんて……」


 口ではそう言ったが、心当たりがない訳ではない。父は仕事のことを家族に話さなかったが、今なら研究成果が何なのか、まりんには分かる気がする。

 それは凍り付いた東京で目覚めてから何度も命を救ってくれた、極炎の能力。キャンサーを倒せる力といえば、それ以外に思いつかないからだ。

 だが、これを素直に白状する訳にはいかない。ミリルからの忠告だし、まだ会って間もないセルゲイという男が、どこまで信用できるか分からないのだから。

 セルゲイは、しばらくまりんを眺めていたが、やがて興味を失くしたように、軍用車の前方を向いた。

 いや、まさか、興味がない訳がない。現在でも最重要人物として扱われている人物の研究成果なら、露軍にとって喉から手が出る程、欲しいはずだ。

 ひょっとしたら北風と太陽の童話のように、無理やり口を割らせるのは、困難だと判断したのかもしれない。


「東郷ゼット博士の娘が、何の因果かキャンサー発祥の地に現れた。ふふ、本当にどんな因果なのだろうなぁ。あるいは、これは予兆なのか。十年ぶりに硬直していた事態が動き始める何らかの、な」


 セルゲイは、どこか嬉しそうにそう呟いた。彼だって世界の運命を背負って戦っている軍人の一人、それも将校だ。

 全人類が窮地に陥っている現状を打開したいと考えているのは彼も同じなのだと、今の口ぶりから、まりんには思えた。

 ただし、それを自身の、ひいては露軍の手柄にしたいという腹積もりなのかもしれないが。

 やはり油断はしない方が賢明だと、改めてミリルの忠告を心に刻み込む。

 まりんと彼との会話が終わり、それから十数分ほど経過しただろうか。走り続けていた軍用車が、速度をゆっくりと緩め、やがて停車した。


「着いたようだぞ、ミス・ベーカー。部下に部屋まで案内させるから、ここで長旅の疲れを取ってくれたまえ」


「え、ここが……?」


 まりんが軍用車の中から、窓の外を見やる。そこにあったのは、壁と堀に囲まれたコンクリート造の大きな屋敷だった。

 堀の入り口側の左右には二本の高い塔が埋め込まれ、彼女にはそれがまるで何かを監視するために建てられたように見えた。

 壁の高さは六メートル程度で、屋敷の正面以外をぐるりと一周している。壁と塔だけではなく屋敷自体も、時の流れを感じさせる年季の入った古びた外観だ。

 屋根には雪が降り積もり、作りは頑丈そうだが、どこか陰鬱な気分にさせられる暗い雰囲気を醸し出していた。


「元々は、変わり者の資産家が建てた監獄風の別荘だったそうだ。そこを我々、露軍が改装し、宿舎として使っている。手入れはしてあるから、お気に召して頂けるといいがね」


「堅牢そうな建物を選んだってことでしょう? 構いませんよ、将軍。まりんちゃん、大佐、さっそく降りて軍人さん達のお世話になりましょうか」


「はい、そうですね……」


 ドア側に座っていたまりんが先に軍用車を降り、ミリルと大佐も続けて降車する。

 この建物が建てられた経緯を聞いてから改めて屋敷を見れば、確かに監獄とは言い得て妙だった。

 見た瞬間、気が滅入ったのは、きっと無意識にそれを悟っていたからだろう。

 塀の入り口付近で見張りとして立っていた軍人が、軍用車の助手席にいるセルゲイの指示を受けて、返事をしている。

 どうやら彼が、この宿舎の中にあるという部屋まで案内してくれるらしい。


「私は仕事があるのでね、部屋割りは彼に聞いてくれたまえ。それでは、どうぞごゆるりと、ミス・ベーカー御一行殿」


 セルゲイはそれだけ言い残して、軍用車で遠くに走り去っていった。後に残されたまりん達は、露軍人に言われるまま、塀のない入り口から足を踏み入れる。

 敷地内はそれなりに広く、露軍人達が所々で哨戒していた。そんな彼らの警戒対象には、まりん達も含まれているであろうことは、目を見れば明らかだ。

 これから彼らの監視の元、この宿舎で過ごさなくてはならない。そう思うと、あまりこんな所で厄介になりたくないなというのが、まりんの本音だった。

 ややあって宿舎の玄関ドア前に辿り着くと、案内役の露軍人は振り返って忠告する。


「部屋割りはこちらで決めてある。お前達は客人扱いになっているが、誤解を生むような妙な真似は控えることだ」


「し、しませんよぉ……そんなこと」


 まりんはそう訴えたが、露軍人はさっさと入れと目で言っている。

 ここで押し問答をしても仕方がないと判断したのか、ミリルが厚みのある鉄製の両開きドアを両手で押し開けた。

 まりん達三人が全員ドアを潜るのを見届けた後、露軍人も遅れて玄関に入る。宿舎の外観からも予想はできたが、やはり内部も質実剛健な作りになっていた。

 広々とした玄関にも、数人の露軍人が見張りに立っている。一体、誰を相手に使用するつもりなのか、全員が火力の高そうな自動小銃を装備していた。


「靴は履いたままでいい。それと、これはお前達の部屋のキーだ。くれぐれも失くすなよ」


 まりん達が来るのを見越して、予め用意していたのだろうか。露軍人が上着のポケットから三本のキーを取り出して、ミリルに手渡す。

 ただ、やはり言葉も態度も、目に見えて非友好的だ。セルゲイからどんな命令を受けているのか、聞かなくても察せてしまう。

 しかし、そんなまりんの心中など、露軍人は気にしている様子もない。彼はそのままその足で玄関を上がり、宿舎内を各自の部屋まで送ってくれるようだ。

 彼を先頭に、玄関の正面にある木製の階段を、まりん達は一段一段上っていく。

 その度にぎしぎしと軋む音がして、湿っぽい気分になった。ここでの暮らしが落ち着かないものになると暗示している気がして、仕方なかったのだから。

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