10にゃ にゃんこ。圧倒される


「われは魔王にゃ」

「はぁ? 魔王?? っははは」


 銀髪女は、素っ頓狂な顔をしたあと笑った。


「なんにゃ! われをバカにしてるのかにゃ!?」

「いえ。そうじゃないわ。 

 バカにはして……っぷ……」


「にゃふー! ばかにしてるニャ!!」


 こいつ許さない!

 われの部下にして、こき使ってやる!


「はいはい。してますしてます。

 バカにしましたすいません」

「にゃ? やけに素直だにゃね?」

 

 われはもっと馬鹿にされると思ったが、女は頭を下げ謝ってきた。

 われ、潔い人嫌いじゃない。


「だって、あなたと喋ってたらきりなさそうだし」


 え?

 口達者って褒めてるの?

 褒めてるの?


「ま、そうゆうことにしてやるにゃ。

 でお前誰にゃ。もしかして……泥棒かにゃ?」

「はぁ? 泥棒?? 私はこの家の主です。

 あなたこそ泥棒………では無さそうですね」


 銀髪女は、われの体を舐めるように見たあとそう言ってきた。


「にゃ。われは疲れたから休んでただけにゃ」

「っあ…………そう。

 それで猫がどうやって小屋まで来たの?

 ここって、普通にはこれない場所にあるのだけど?」


「われは自由をもとめ進み続けたのにゃ」


「自由?」

「そうにゃ自由にゃ」


 自信満々に言ったのが気に食わなかったのか、


「それでは答えになってないんだけど?

 どうやってここに来たの?」


 威圧しながら聞いてきた。


「にゃ………壁にゃ」

「壁?」

「そうにゃ壁にゃ。

 壁にあった穴を抜けて、出た先が草原で走り回ってたらここについたにゃ」


「壁?……草原?………いやでもそんな事って………」


 銀髪女は後ろを向き、なにか呟きながら考えている。


「なんにゃ?

 なんかやばかったのかにゃ?」

「うん……まぁそうね。

 ちょっとドアの先を見てみて?

 そうすれば分かるから」


「…………抱っこしろにゃ」


 われ動きたくない。


「分かりました魔王様」


 いたずらっ子のような顔をしながら言い、箒を壁に掛けわれの体に手を回してきた。

 

 うん。

 ばかにされてもわれ魔王。

 うつわが海のように広い猫。

 

 そう自分に言い聞かせながら、女の手を受け入れた。

 女に抱っこされ気づいたのだがこいつ、胸が意外とある。外見では服のせいでか、あまり無さそうに見えたのだが確かにわれの体にその弾力が伝わってくる。

 大きさは分からないが、ぜひとも一度猫パンチをしてみたいものだ。

 

「見なさい?」


 われに命令口調でそう言ってきた。

 われが上の空だったのか、顔を無理矢理動かしてきた。


 怒りたいところだが目の前の光景が衝撃でそんな事しなかった。


 あたり全体が緑。

 それは変わらない。

 だが、明らかにそこは草原ではなかった。

 蔦が絡みついている木。

 苔がびっしり付いている石。

 地面には木ノ実や、落ち葉が土を隠すかのように落ちている。

 

「ここ、どこだにゃ〜!?」

「この小屋は森の中にあるのよ?

 草原なんて………この小屋が転移でもしない限りありえないわ………」

 

 

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