3にゃ レイン。王に会う


 時間が過ぎ、王への謁見の日がやってきた。


 謁見の部屋に案内する人は、一人だった。

 白髪の氷のような顔のした女性。

 彼女は何も言葉を発せず、私を先導している。


 話すこともないので、城を観察する。

 この城は我らの魔王城とは違い、壁に絵画が飾ってあったり、鎧が飾られていたり、花が置かれていたりと華やかだ。

  

 魔王城にも、取り入れたらいいのではと思ったが、うちには野蛮な連中が多い。

 すぐに壊されるな。

 

 私がちょうど考えるのをやめた時、女が立ち止まりこちらに向いてきた。


「こちらです」

「ありがとうございます」


 女が扉の横に立ち、手を添えていた。

 これが恐らく最初で最後の会話だろう。

 

 そんなことを思いつつ、扉を開けた。


 扉の開けた先には玉座が2つあった。

 右側に冠を被った男。

 恐らくこの人が王だろう。

 そして左側には、女が座っていた。

 王妃だろうか。


 周りにには、鎧を着た兵士がまるで置物のように、きれいに並んでいた。

 だが、威圧感を異様な放っている。

 魔族ではないが、これは人族のものでもない。

 調べる必要があるな。

 どうやら、この国は何かありそうだ。

 

「はじめまして。私は魔王様直属特別補佐レインと申します。以後お見知りおきを」


 腰の前に手を添え、お辞儀をした。


「うむ。そなたの事は風の噂でよく聞いておる。して、我がプリータ王国に何用だ」


 王は目を鋭くし私を威圧してきた。


「いやいや……。そんな警戒しなくても」

「王国に、あの策士の悪魔とも呼ばれている魔族が用事があると来たのだ。

 警戒しないはずがなかろう」


「そうですね。

 ですが、私が来た目的は王への挨拶と、言うのもありますが、今回私が来た理由はカテオの定期輸入の交渉です」

「………………カテオか。

 して、どれ程だ」


 王は私がなにか企んでいると思ったのだろう。

 予想外のことを言われ、数秒間がき聞いてきた。


「はい。 3トン程」

「…………さ、3トン?

 それほどの量食べきれぬであろう?」

「いえ。魔王城には、無類のカテオ好きがいるので」


「貴様!!さっきから無礼だぞ!

 我らをなんとしている!

 父上。

 こんな魔物に耳を傾ける必要などありません。

 殺しましょう」


 そう言ってきたのは、玉座の後ろにいた男。

 恐らく服装からして、王の子供なのだろう。


「やめんかライル!レイン殿に失礼だぞ」

「でも父上!

 あいつさっきから頭も下げないで頼み事をしてるんですよ。

 これだから、下賤な魔物は……」

「やめろといっとろうが!!」


 王の低く、威圧感のある声が部屋中に響き渡った。

 こんな所で親子喧嘩とは、何とも微笑ましい。


「っく……。わかりました……」

「すまんな。我が子が失礼を」


 頭こそ下げていないが、王が謝罪をした。

 一国の王たるものが。

 それほど、我ら魔族と敵対関係になりたくないんだろう。


「いえ。慣れてますので」

「して、カテオの輸入の交換条件は?」


 王は何事もなかったかのように聞いてきた。


「はい。

 そちらでしたらこれを」


 懐から取り出したソレを、近くの兵士に渡し、王に渡すように言う。

 これは触ってみなければわからないのだ。


「これは魔族領でしか取れない貴重な鉱石、マニシタイトです。見て頂けるとわかるのですがこの魔石は、魔力濃度が濃い場所にて取れたので、他の魔石と比べ、魔力濃度がとても濃いです。なので、様々な需要があるかと思います」

「ふむ……。

 マニシタイトか……。これは他国に輸出しているのか?」


「いえ。なにせこの魔石はつい先日見つけられた物でして、まだどこにも」

「そうか。ならば、これを我が王国にて独占輸入するとしよう」

「ありがとうございます。では、詳しい事はまた………」

「そいう言えば、魔王は来ていないのか?」

「…………はい。魔王様は重要な仕事(お昼寝)がありますので」

「そうか………。一国の王に挨拶にも来ないのか」


 ん? 

 なんだかイヤな空気


「いやなに……ある風の噂なのだが、現魔王はぐうたらで、たいして強くないと言うの聞いてな」


 殺そうか?

 いやだめだ。

 ここで暴れたら、カテオが輸入できなくなる。


 殺意を押し殺し、

 前を向き直った。

 その時

 目の前の空間が歪んだように見えた。


 これは……転移。

 どこからかの刺客か?


 一歩後ろに下がり歪みから距離を置く。

 

「む?何だこれは……」


 王が異変に気づいたその時。

 一人の影と共に、聞き覚えのある声が部屋に響いた。


「われは!魔族を統べ、見る者すべてを魅了するぼでーの持ち主!魔性の猫………ミーニャっにゃ!」(ドドン)


 魔王様……。

 なんてタイミングで……。




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