18にゃ にゃんこ総師

  

 まずわれが来た場所は、大好きな匂いがする場所。

 そう。

 調理場。

 

「っあ!総帥。お疲れ様です」

「にゃ」


 挨拶をしてきたのは、全身真っ白の服を着ており、頭からは白く細長い帽子を被っている男。

 こいつはコック。


 われはここ一週間、味見係をしていた。料理をつまみ食いし、味付けや盛り方に対し魔王たる意見を言っていただけだったがいつの間にか慕われ、周りから総帥なんて呼ばれ始めた。

 なんの総師かは謎。

 まぁ悪い気はしないからいいけど。


「ベンダーはいるかにゃ?」

「おそらく奥の調理場にいると思います。もしかして……料理を見てくださるのですか!?でしたら私の新作もご一緒にいかがですか!」

「味見しに来たんじゃないにゃ。ちょっと聞きたいことがあって来たのにゃ」


 言われた奥を目指す。

 奥はここの調理長ベンダー専用の調理場。そこで新しい料理や調味料を作るらしい。らしいと言うのはまだ入った事がないからだ。

 この前入ろうとしたら、秘密とか言って追い出された記憶がある。


「あの……魔王様?」


 後ろで静かにしていたフィレが話しかけてきた。


「なんにゃ?」

「その、ベンダーさんが何か知ってるんですか?」

「そんなの知らんにゃ。それを今から聞きに行くんにゃから」

「そ、そうですよね。すいません」

「いいゃ。謝罪をするにゃら、われを抱っこするにゃ」


 われ、疲れた。


「はい!喜んで!」


 顔からヒメワリが咲きそうな程の満面の笑みを浮かべ、ちっこい手でその絶壁へわれを持っていった。

 

 うん。

 ぷにぷにがなくてもこれもまた……いい!そして、心臓の鼓動が近くて温もりを感じるかんじもいい!

 おっといかんいかん。

 われ、変な扉を開きそうになった。


「ベーンーダァー!」 

「はいはいはいはい。ちょっと待って下さい。今開けますので」


 声がしたあと、何か金属を落とした音がしてドアが開けられた。


「お待たせしましたミーニャ様………えっとこちらの方は?」


 出てきたのは真っ黒な仮面を被った男。こいつがベンダー。傍から見たら泥棒と見間違えるだろう。以前仮面を被っている理由を聞いたが、話をそらされわからずじまいだった。

 まぁそんな事は置いといて、われを抱っこしてる女が誰かって?


「われの手下にゃ」 

「手下……」

「そうですか。また、随分とかわいらしいお嬢さんですね。まさか……攫ったんじゃないですよね?」

「ふん。そのにゃことないにゃ。こいつは、われの事を慕って自分から手下になったにゃ。そうにゃよね??」 


 脅し口調なんかで言ってないよ?


「……………はい。私はミーニャ様を慕って自分から手下になりました」

「まぁ、なにか言えない事があるんですね?」

「そんにゃことより、ベンダーに聞きたいことがあるにゃ」


「それって長話になります?部屋に入って、お茶菓子でも出しましょうか?」


 部屋?


「お茶菓子…………。いらんにゃ」

「ミーニャ様がお茶菓子を断っただと………。まさか今日は何か嫌な事が……」

「にゃゃゃゃゃ!!話を進めるにゃ!」


 これだからこの男は。


「っと。申し訳ございません。

 私の悪い癖が………。して、話とは?」

「にゃ。

 われ、この旅館から出たいのにゃ。だから、出る方法を教えるにゃ」

「ここから出る方法ですか……。

 それは私は知りません」

「そうかにゃ………」


「ですが、ネートさんあたりは何か知ってるかもしれません。あの人は、ちょっと外れている部分はありますが、この旅館の副オーナーですので」


 なにそれ知らない。


「フィレ!」

「はい!」

「今すぐネートのいる場所へ行くのにゃ!!!」




























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