17にゃ にゃんこの奥義


「にゃえ?だれにゃ……」


「私です!!私。覚えてないですか?」

「………知らんにゃ」


 われ、本当に誰かわかんない。

 こんなちびっこいのわれの周りにいないから、いたら印象に残ると思うんだけど。


「そうですか……。では自己紹介をします。私はフィレ。元魔王様専属の揉み師です。

 これで思い出しましたか?」


 フィレ?ふぃれ?

 揉み師?

 そんなやつ……いたっ………。


「そうにゃ!そんなやついた気がするにゃ。

 でも、よく思い出せないにゃ。

 こんな凄い、てくにっくの持ち主を忘れているはずないんにゃけど……」


 そう。

 アネットを超える、揉み師をなんで忘れていたんだ?

 ん?忘れる?

 なんか、そんな事出来るやつこの前会った事ある気がするんだけど……?


「魔王様……助けに来てくださったのではないのですか……?」

 

 ちびっこの顔が徐々に期待から絶望へと変化していく。


 助ける?


「何言ってるにゃ。どこに助ける要素があるのにゃ」


 そうそう。

 こんな天国みたいな場所で助ける必要なんてない。


「魔王様もここに来たとき、気づいたでしょう?

 この旅館には特別な結界が施されているのです。

 これを解除出来るのは私の知る限りでは魔王様しかいないので、助けに来てくださったと思ったんですけど。そうですよね。違いますよね……。

 ははっ私ったら、ここから魔王様が助けてくれる自分勝手な妄想ばっかして、舞い上がってました……。」


 え……?

 われ、そんな事できないよ。猫だし。 

 でも、なんかここで『助けに来てない』とか言ったらわれの立場が危うくなる気がする。


「助けに来たにゃ。さっきのはにゃんこじょーくだにゃ。ここに騙されてくるにゃんて、そんな事われがすると思うかにゃ?」


 うん。

 ないない。

 だってわれ、魔王だもん。


「はわぁ〜!さすが魔王様!!

 それで、どうやってここから出ます?」


「われに考えがあるにゃ」


 フィレが期待の眼差しで見てくる。

 ふふん。

 とうとうわれの奥義を使う時が来たようだにゃ……。


 山をも崩し、海をも切り裂くその奥義は……。


「にゃ」


 他人任せ!!

 

 リーラを呼んだら大抵何とかなる。

 われが穴に挟まった時も、蜂に襲われた時も呼んだら助けてくれる。

 うん。これが正解だな。


「………魔王様?」


 おかしい。

 呼んでも来ない……。


「にゃ………にゃにゃ……………にゃ」


 リーラ!!!どこ!!!

 このままだとわれ、フィレに失望される!

 そしてもう、揉んでもらえなくなる!


 来ない……。

 われが何とかしないといけないのか……。

 

「今のは気合だにゃ。フィレ!われについてこいだにゃ!」

「は、はい!」







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