15にゃ にゃんこ極楽


「にゃふ〜極楽極楽だにゃ〜」


 体全体から力が抜けていくのを感じる。

 われ、生きててよかった。

 われ、寝そう。


「ちょっと!あなたが入るとお風呂の中に毛が入るから、この桶の中に入っててって言ったでしょ!」


 そう言ってきたのは、すっぽんぽんの巨乳銀髪女。


「うるさいにゃ!われもお風呂に入りたいにゃ。それよりクロイ!」

「はぁ〜……なによ」

「見よ!われの猫掻きを!!」


 にゃ。にゃ。

 われの美脚を見よ。

 われの筋肉(脂肪)を見よ。


「はいはい。すごいすごい」


 そう言いながらお風呂の中に入り、近づいて来た。


 まさか、お前もやるのか……。

 猫掻きならぬ人掻きを!

 そんなふうに息を呑んでいたら、手がわれの首の後ろにいった。


「にゃ!?われを掴んでなにするんだにゃ!にゃー!離すのにゃ!われ、もっとお風呂の中に入りたいにゃ!」

「この桶で我慢しなさい。この中でも十分温かいでしょうが」


 まぁ確かに温かいけど!

 われ、もっとでかいお風呂入りたい。


「いやにゃ。われ、おっきい方がいい。

 ―ベフ。

 ―ベフ。

 ―ベフ。

 な、なんにゃ。見えない壁があるにゃ……」

「っはっはっは………。ベフって……っはははは!」


 その女は全裸で腹を抱えながら笑った。


「にゃ………。まさかお前がやったのかにゃ?」

「そう………いや、違うわよ。うん。私じゃないわ。誰だろうね?桶の周りに結界なんて張った人?」


「……お前にゃ」



♡★♡★



「にゃほ〜!!なんにゃ!この美味しそうな匂いは!!」

「おまたせしました。

 こちら、ハンオの燻りでございます。」


 目の前に置かれたのは、魚!  

 われの好きな魚!

 の黒いやつ!


「クロイ。早くわれに食べさせるのにゃ!」

「はいはい……」


「「にゃーん」」

「もぐもぐ」


 ………

 


♡★♡★



 部屋の外はもうすっかり真っ暗になっていた。


「にゃ……寝るにゃ……」

「あら?そう。なら、私も寝るわ。おやすみ」

「おやすみにゃ」


 そう言って猫用ベットに入る。

 このベットはふかふかで体が沈んでいく。


 あぁなんて気持ちいいベットなんだ。

 われ、ここで一生寝てたい………。


「……って違うにゃゃゃ!!」

「どうしたの……?寝るんじゃなかったの?」


 クロイが目を擦りながら眠そうに聞いてきた。

 こいつ……。

 やっぱり、われよりばかだな。


「にゃぁ……にゃぁ……われ、こんな所にいる場合じゃないにゃ」

「?何言ってるの?目的の場所に着いたじゃない?」

「わ!れ!は!こんな旅館に来たんじゃないにゃ!ぷりーて王国に行きたいんだにゃ!」

「プリータ王国じゃない?」

「そんなの知らないにゃ。早く出るにゃ!」


 そう。

 われは目覚めた後、目と鼻と耳を布で覆われてこの場所に連れ込まれたのである。

 そう。

 誘拐である。


「明日行くわよ。全くせっかちな猫だこと」

「本当かにゃ?」

「ええもちろん」


 そして、一週間が経った。



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