6にゃ にゃんこ。女に捕まる


「にゃふふふ………」


 われはチャンスを逃さない猫。

 宿屋の階段を降り外に出た。

 そこには沢山の人がいた。

 

 朝だというのに………。

 人族はどうかしてる。

 二度寝もせず、こんな時間から働いている。、

 

 人混みの中へ足を踏み入れた。

 だがそこは想像を絶するものだった。

 われを踏みつけそうになったり、蹴られそうになったり。

 避けて、また避けて。

 どんどん目がぐるぐるしてきた。

 

「にゃ………にゅ……にゃ……にゅ………」


 われを掴んだものがいた。


「あらあら。

 こんなところに猫ちゃんが……。

 どうしたんですか?」

「にゃっにゃ………」

 

 だが、われはくらくらしていてまともに答えられなかった。


「困りました………。

 そうだ!私の家に来ませんか?

 きっと気に入ってくれますよ?」

「にゃ…………」


 そうしてわれが、目が回っているうちに連れて行かれた場所は、われの大好物の匂いがする場所だった。


「カテオ!!」


 口が反射的に動いた。


「っわ!猫ちゃん、喋れるんですか?」

「そんなことどうでもいいにゃ!

 カテオは?

 カテオはどこにゃ!!」


 それはもう、鬼の形相でカテオを探していた。


「?カテオなら、店の調理場にあると思いますが………?」

「にゃに〜〜!

 あんにゃいするにゃ!」


 猫は、腕に抱かれながらも偉そうに言った。


「えっと………。

 料理の材料なので、その……」

「なんにゃ?

 はっきり言うにゃ!」

「無理です」

「にゃ、にゃんだと………」


 目の前にある物が無理だと……。

 一瞬盗めばいいと言う言葉が頭の中をよぎったが、それはだめだ。

 前に、アネットのお菓子を盗み食いした時に


『魔王は盗みなんてしてはいけません!」


 と、言われお尻ペンペンをされた。

 もうあんな思いしたくない。

 猫はわずかに身震いした。


「ごめんなさい。猫ちゃん……」

「われは猫ちゃんじゃないにゃ!

 ミーニャにゃ!

 ちゃんと名前で呼ぶのにゃ。

 あと、特別にわれの頭を撫でる権利をお主にやるにゃ。喜ぶがいいにゃ」


 われは、この女に盗み食いはだめだと思い出させてくれた褒美をやらねば


「ありがとうございます?」


 なぜ疑問形?


「なでなで」

「うにゃ………にゅ………

 そにゃた、なかなかヤるにゃね?

 そのまま続けるのにゃ」


 気持ちよくなってしまった。

 これは決してアネットとの、浮気ではない。

 …………いや、浮気なのか?

 まぁバレなきゃ大丈夫。


「えっと……?

 分かりました」


 5分経過 

 うむ。もっと撫でるがいい。

 10分経過

 にゃ、にゃんだこの撫で方……。癖になる!


 30分経過

 にゃふふふ。

 きっもちいにゃ〜〜。

 にゃふふふ。


「あの………。

 これあとどれ位すれば?」


「にゅ?

 もういいにゃ。

 われ腹減ったにゃ。

 昨日の昼からにゃんも食べてないにゃ」


 正直これ以上されたら、あのナデナデに依存してしまいそうだ。


「そうだったんですか………。

 任せてください!」

「にゃ?なんかくれるのかにゃ?」


「はい!少し待っててください」


 そう言いわれを椅子に座らせ女はどこかに行ってしまった。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る