十二月四日 そうだん 上
空木先生へ
空木先生、ごめんなさい。この帳面を見られてしまいました。
男の子や男の人のことがよくわかりません。平気で悲しいことを言ってきます。
お父ちゃんはゆかいな人です。兄ちゃんはがんこ親父と言ってるけど、和菓子が大切だからだと思います。
✎﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏
読み終えた空木があぁとこぼすと今度は後ろの席が動いた音がする。後ろを振り返り、決まりが悪そうに笑った空木は肘をつき、組んだ手におでこをつけた。眼下にはふるえた字。どれだけ勇気を出して書いたのだろうと考えると胸が引き裂かれそうだ。
どこまで踏み込んで、どこまで背中を押せばいいだろう。一つずつ言葉を無言で噛み締めて帳面に向かった。
✎﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏
鈴宮さんへ
それは大変でしたね。鈴宮さんは悪くないと思うで、落ち込まないでくださいね。できたら、これからも続けないです。
男の子や男の人
そこで、空木の手が止まった。空木も交流が広いわけではない。頭に浮かんだ男の人は穏やかに笑う人だ。時にいたずらっぽい笑みを浮かべるけど、木漏れ日のように穏やかで掴めない人だった。
空木は震えそうになる手を叱咤して書き進める。
鈴宮さんへ
それは大変でしたね。鈴宮さんは悪くないと思うで、落ちこまないでください。できたら、これからも続けたいです。
男の子や男の人と限らず、相手の気持ちは先生でもわかりません。相手も私たちの気持ちがわからずに、言ってしまったのかもしれませんね。鈴宮さんが悲しいことは変わりませんが、鈴宮さんはどうしたいですか。
お父さんとお兄さんのお話が聞けて、とてもうれしいです。会ってみたくなりました。お母さんは元気にされていますか。鈴宮さんに向けていたお母さんの笑顔が先生は好きです。
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