おれいと くりすますのおまけ
まず、始めに。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
個人的なこだわりと致しまして、『はじまり 上中下』以外は十二月のそれぞれの日のできごととして、杏やその周りの人達の日常の一部を切り取っています。ぐだぐだした日やオチのある日、くすりと笑える日、泣いた日、いろいろありました。師走ということもあって、どたばた感やごちゃごちゃ感を気にせず詰め込みました。少しでもあるあると共感していただけたら本望です。寄り添っていただけたら、もっと嬉しいです。
あ、あと、前話で書いた克哉一人勝ち感が否めないプリン回。仕出し屋に借りた茶碗蒸し茶碗もありったけ借りてきたようにしました。学校の規模がちょっと掴めてないのでこれでご容赦を。どんだけ、金持ちなん克哉くんと思ってもらえたらいいのです(こら)
ここで白状しますと、一日だけズルをしました。携帯の電池が底辺も底辺のスカスカになったみたいで、一時、うんともすんとも言わない状態になったからです。酷使してすまんと思いつつ、どうにもならないと投げ出して寝ました。
それからそれから、を探せばいろいろ粗はあると思うのですが「缶けり」は昭和の遊びです。明治大正には存在しません。一応、日本に酷似した異世界設定ですし、知恵も足りないので諦めました。楽しめたらいいんです。反省はしています、次に活かします。
そんなこともありまして、なんとか完走いたしました(拍手)全然、読みに行けてないのに、読んでくれる方が多くてびっくりしつつ、とてもうれしかったです。
仕事でばたばたしておりましたので、年始にお邪魔させてもらおうと思います。今さら……(;・∀・)とか思わないでくださいね、絶対ですよ。
ファンタジー要素が全く入れれなかったので、おまけでつけておきます。
寒空の下でぼんやりしてて、風邪をひいて、仕事して、こじらせて、墓穴を掘りまくっていた空木先生です。
では、皆様。よいクリスマスを。
✎﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏
空木は足を止め、春を待つ桜を見詰めた。中庭でひっそりとたつ桜は狂い咲きをすることで有名だ。数年に一度の割合で、高く澄んだ秋の空の下で花を咲かせる。終戦後、散った友から一年ごしに届いたのも、そんな秋だ。
自分だけ生きているのが何処か申し訳なくて、自分だけ教師になれたことが何処か後ろめたくて、その一年を過ごした。
それを見越したような手紙は、枯れた十枚の桜の花弁が詰められたもので、空木の背中を押してくれる。風に舞う桜のように憂いた心をさらった。
強い風が空木の髪を乱し、抱えた書類を巻き上げる。
舞い上がった二枚に、出会った日のように空木は手を伸ばした。
一枚は間に合い、残りの一枚は紙はすりぬけ、あらぬ方へ飛んでいく――と思われたのに、空木の手中に収まる。見えない糸で引かれたように、不自然な動きだった。
「うそ」
それを空木は見たことがあった。彼の人が『異能』と言った力だ。
空木は四方に振り返り、彼を探した。だが、姿はない。悲しいような、懐かしいような、当然と知っていたような、妙な気持ちがすり抜けていく。
でも、会いに来てくれた。
そんな気がして、空木はさみしく笑む。
「かみさまは姿が見えないものね」
冬休みに入った学校は生徒の笑い声が聞こえない。どんなに小さな呟きでも拾えそうな静けさだ。
そうとわからないように、音もなく落ちた鉛筆が書類の束の上に戻った。
空木は気付かずに前を向いて歩き出す。仕事は山積み、今年も残すところ数日だ。悲しきかな、年が明けても仕事は山積みだ。人を相手にする仕事は、毎日が目まぐるしく待ってはくれない。
缶けりがしたいとかわいいお願いをされたり、話を聞いてもらえないと嘆く子もいる。クリスマスの贈り物だと甘くてほろ苦いカスタードプディングのおこぼれに預かることもあった。カスタードプディングで浮かれる教室の端で空木の贈り物に目を輝かせていた生徒は、他の生徒にもらった贈り物を見て首を傾げる。周りの雰囲気とはかけ離れた双方の気持ちがわかるようで、笑いを堪えるのがつらかった。
悲しい気持ちを楽しい思い出に塗り替えていく。止まりたくても止まれないのだと言い聞かせ、空木は足を動かした。
時は進むばかりで、待ってはくれない。もうすぐ新しい年が来る。
甘味伯爵 聖夜祭 かこ @kac0
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