十二月二十二日 聖夜祭―空木
空木先生へ
かぜは大丈夫ですか? 空木先生が元気になったら、やりたいことがたくさんあります。年が明けたら、またおはなしを聞いてください。
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久しぶりに見た文字に空木は頭を抱えた。よくよく思い出せば、店に行くことも、かくれんぼも約束したのに、どちらもできていない。まして、見舞いまでされて、貴重な葛湯もいただいてしまった。穴があったら入りたいを通り越して、飛び込みたい勢いだ。教師の立場としてもあんまりな状況である。
明明後日には冬休みが始まる。生徒皆に配る通信簿ができていない。徹夜してでも仕事は片付けるつもりだ。
杏との約束を挽回しようにも時間が作れない。
これ以上休んでしまったら、空木先生は結核でもう学校に来られないとまた噂をされる。それは何がなんでも避けたい事案だ。
あと、二日とちょっとをしのげば、冬休みが始まる。そうなれば、余裕ができるはずだ。
冬休みに入ってからでもいいか、とも思ったが、空木の良心が痛んで仕方がない。お詫びに菓子折りでも渡そうかとも思ったが、大層なことをしたら杏は萎縮してしまうだろう。
目をさ迷わせ、黒板に書かれた、十二月二十五日の予定が飛び込んできた。冬休み、と書かれた後に『クリスマス』と書かれている。今まで興味のなかった空木ではあるが、クリスマスはどこかの神様の誕生日を祝う日だというぐらいは認識している。そして、贈り物をする行事だった気がする。
久しぶりの仕事で頭も疲れていた空木は深くは考えなかった。
家に端切れで作った巾着がごまんとある。その中に買いためておいた金平糖をいれよう。そう決めて、空木は少しだけ心が軽くなったような気がした。
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鈴宮さんへ
心配してくれてありがとうございます。たっぷりと休んだので、大丈夫です。
冬休みまで後二日ですが、お話をたくさん聞かせてくださいね。先生の元気のみなもとです。
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