十二月十二日 じょげん 中
空木先生へ
本条克哉様に缶けりのごくいを聞いてきました。
けることばかり教えてくれましたが、何だかズルをしているよう気持ちになりました。でも、せっかく聞いたので書きます。
一、皆で一度にけりに行く。
二、別の場所に小石を当てて気をそらす。
三、走り出したら、ひるむな。
だそうです。参考になりましたか。
私はとろいので、できそうにありません。
鬼の時の上手なやり方を聞いたら、目をつむって、音を聞けと言われました。人間なのに、犬のようにできるのでしょうか。克哉様はふしぎなことを言います。
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鈴宮さんへ
本条様にもやり方を聞いてくれたのですね、ありがとうございます。
少々、先生には難しいような気がしますが、最初から諦めたら話になりませんね。ものは試しとも言いますし、ちょう戦してみようと思います。
ちなみに、体育の得意な先生は走る速さを計算して、内側から隠れていそうな所をつぶしていくとおっしゃられていました。
これも、先生には難しいようですが、まずやってみることにします。きっと、鈴宮さんも見つけてみせますよ。
✎﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏
教室に残っていた杏は同様に残っていた辰次に双方が聞き集めてきた『ごくい』についてたずねてみた。全部を言うことが難しくて、帳面の一文を指差して途切れ途切れに聞いても、辰次は真剣に聞いてくれる。
「……小石を当てるのは、ないだろ」
杏でもできそうな方法は却下された。予想通りと言えば予想通りではある。
「いい方法、ないかなぁ」
杏の呟いた言葉に辰次は難しい顔で押し黙ってしまった。
杏は話を切り上げる機会がわからず、ちらりちらりと辰次の顔をうかがう。
あのさ、と辰次は口火を切った。
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