第18話 見つからない商人ケイツの痕跡
ジルドたちは苦戦していた。
その様子をグレンたちは離れた場所から見ていた。
「あの冒険者さんたちが使用してる魔具はなにかしら?」とエミリ。
「血に反応する魔具らしい」とグレンは答える。
「冒険者全員に同じ物を持たせて森を探索させているそうだ」
「完全に行方不明者を探すより、遺体探しになっていますね」
「そうだね。エミリは、どう思う? ケイツは死んでる? それとも?」
「そうですね」と彼女は真剣な顔を見せた。それから……
「死んでるじゃないですかね?」
「へぇ、簡単に言うね。 それはカン?」
「えぇ、魔族のカンよ!」
「なるほど」とグレンは高所へ。森全体を俯瞰する。
「さて、実際はどうなのかな? 君のカンを信じるとして……」
「魔族のカンよ?」
「あぁ、その魔族のカンを信じるとして、ケイツはどのタイミングで死んだのかな?」
「何よ? どのタイミングって?」
「そりゃ、事故で死んだ場合だと考えて、私が寝ていて君たちが騒いでいる時に1人で森を出歩き、事故に会った」
「事故じゃない場合は――――私は無理よ、犯人じゃない。家の中にずっといた。それはアールさんが証言してくれる」
「そうなると、ケイツが行方不明になって、1人で捜索に出かけたアール。そこで生きているケイツを発見して……」
「あるいは、私とアンタが冒険者ギルドに駆け込んでいる間に殺ったかしら?」
「だが、それにしてはわからない事がある」
「それは、どう死体を隠したのか?」
「そうだ。短時間……と言っても深夜から早朝の間ではあるが、冒険者たちが魔具を使っても見つからないように隠した……それは、とても難しい事だ」
そして、その日。
冒険者10人による魔具を使用した調査を行ったがケイツの遺体は発見されなかった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「いえ、グレンさんたちは、帰ってもらっても構いません。我々は、もう少し調査を続けます。どうぞ馬車はご自由に使ってください」
1日かけた調査でも進展がなかったのだろう。 ジルドは落ち込んでいたのがわかる。
「では、失礼させてもうよ」と馬車に乗り込んで暫く、やはり会話は行方不明となったケイツの事になった。
それも、先ほどと同じような会話。
主題は、やはり――――
『どのタイミングでケイツは殺され、遺体はどこに消えたか?』
「アールさんは、どのタイミングでケイツさんを殺して、どこに遺体を隠したんでしょうね?」
「おいおい、そこまでハッキリと……」とグレンは苦笑した。
まだケイツが死んだと決まったわけじゃない。
まだ、アールがケイツを殺したと決まったわけじゃない。
それでも――――彼女 エミリは断言口調で話す。
「でも、深夜にケイツさんがいなくなったと気づいてアールさんが家から出て行って帰ってこなかった数時間」
それがケイツさんを殺したと思われる第一候補とエミリは続け……
「第二候補は、私とグレンさんが冒険者ギルドに駆け込んだ時間のどちらかでしょ?」
「うん、問題は数時間、たった数時間だ。その時間で魔具を使った調査でも遺体を見つからないように隠せるか?」
「森だから錯覚してますけど、ここは都市部の中心地ですからね。深夜でも、早朝でも森の外では大勢の人がいるはず……森の外に遺体を抱きかかえて運ぶのは、無可能ではないけど……目立ちすぎるわね」
「つまり、遺体は森の中に隠されていると?」
「私ならそうするわ。でも、見つからないって事は……多少、目立ってでも外に遺体を捨てたのでしょうね」
「じゃ目撃証言は、すぐに集まるか……」
そんな馬車の中の会話と裏腹に、ケイツの遺体が発見された。
しかし、それは10日後。
ダークエルフの森から離れ――――
さらにここ、旧魔王領から離れた山の中だった。
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