第13話 狙撃!? ダークエルフからの攻撃
「珍しい木々ですね。……おっ! 実がなっている」
『ダークエルフの森』 グレンとエミリは商人ケイツの案内で歩いている。
グレンの言う通りだ。 周囲の木々は珍しい……と言うよりも、おとぎ話に出てる魔女が住む森のように、暗く捻じ曲がった木々が並んでいる。
「この森は本来なら立ち入り禁止ですからねぇ。もうこの森でしか生息していない草木や昆虫もいるみたいですね」
「はっは……それじゃダークエルフさんじゃなく、学者さんたちからも移転反対は多いでしょ? 森を1つ、土から移したって別の場所じゃ生態ってのが変わってしまう」
「おっしゃる通りですが……そもそも、都市の真ん中で森を維持しようってのが無理な話ですよ。毎年、どのくらいの税金と魔力が必要なんだと……」
よほど不満が溜まっていたのだろう。ケイツはぶつぶつと漏らしていく。
「なるほど……ところでこの実って食べれます?」
「え? あぁ、それは珍味として有名な果物ですが……あっ!」
ケイツは驚いた。 話を最後まで聞かずにグレンが口にしたからだ。
「……もしかして、ダメでした? 貴重な果実だったとか?」
「いえ、貴重ではありませんが……一部の愛好家が好んで食すほど、美味らしいのですが……」
「ですが……?」
「少し毒がありまして」
「ぶっ!」と噴き出したグレン。
「あっ、毒と言いましても死んだりするような強烈な毒ではありません。強い痺れと精神向上の効果があって……むしろ、毒の効果が人気の秘密だと言われてます」
「ふへぇ……一口でも痺れとかきます?」
「ん~ 大丈夫じゃないでしょうか?」
「それなら、よかった。しかし……不思議ですね」
「え? 何がですか?」
「だって、この果実は――――」とグレンは言いかけて止めた。
前方よりも強烈な殺意。 相当、離れた距離……すでに攻撃は開始されている。
高速で飛来してくる物体。それはダークエルフが侵入者に向けて放った矢だった。
その矢は魔弾。 通常ではあり得ない速度と破壊力。
剣で斬り落とそうとすれば、剣は弾き飛ばされ
魔法で防御壁を作っても容易に貫通させられる。
防御不能……それをグレンは瞬時に察し回避運動を行う。しかし――――
「――――回避! 間に合わない」
魔弾の速度は、グレンの反射神経を凌駕していた。
だが、グレンよりも早く攻撃を感知して、備えていた者もいた。
「危ない!」とグレンを庇うように押し倒したのはエミリだった。
2人で地面に転がり、その頭上を魔弾の矢は通過して行った。
何とかやり過ごした2人。 その背後で爆発が起きた。
どうやら、魔弾が木に接触して魔力の放出、衝撃が周囲に広がったようだ。
「ひぇ!」とグレンは短い悲鳴を出し、
「まるで兵器じゃないか。人間に向けて、どうこうして良い物体じゃないぞ」
「そうですね。しかし、ここは『助けてくれてありがとう。私のエミリ』と礼を口にすべきではないの?」
「ん! あぁ、助けてくれてありがとう。私のエミリ……ところで君、前の主人から束縛を解き放たれた後遺症で、新しい依存先でも探しているのかい?」
「それは、思っていても直接言うことではないと思うわ。デリカシーの問題よ」
「ふ~ん、否定はしないんだ」と、グレンとエミリは、どこまで本気なのかよくわからない会話を交えながら、立ち上がる。
2人共、すでに意識は攻撃者に向けている。
「二撃目……次の矢を射る準備していますね。……彼女」
「この距離でわかるのか? あぁ、私より早く動けたのは、前の主人の影響が残っているってわけかい?」
「さて……私には、前主人の記憶が抜け落ちているよね。私の感覚だと――――」
二撃の魔弾。 しかし――――
「ちょっと視力と力が強くなっただけですね」
兵器のようなダークエルフの矢。 それはエミリは素手で掴んでいた。
そして、衝撃により爆発が起きるよりも早く――――魔弾を投げ返した。
「おぉ、お見事……いやぁ、できるだけ喧嘩はしたくないね」とグレンは拍手を送った。
その後、遥か前方で爆発が来た。
「ん~ でも、相手がこの森の主……ダークエルフだったら、問題にならないかな? いや、商人のケイツさんにしてみたら、死んでくれたラッキーみたいな感じですか?」
今も地面に転がり、怯えた様子のケイツに話しかける。
「い、いや、私は……問題を大きくして、中央都市から支援金を……まさか、こんな事になるなんて……」
「あらあら、ショックで本音が漏れてますよ」
「大丈夫です」とエミリ。
「どうやら、生きてます。ダークエルフさん」と彼女の指した先。
黒い影が接近してくる。
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