第14話 ダークエルフの案内
接近する黒い影――――その正体は無論、ダークエルフ。
ただ接近するだけではない。 地を駆けながら、矢を放つ。
生み出される魔力が体内を暴れ回る。
それを完全に制御する事は不可能……しかし、誘導する事は可能。
優しく、ゆっくりに魔力を指先に――――矢に移して放つが魔弾。
それは精密な魔力調節が必要。走りながら連射はできない。
「だが――――」とダークエルフは矢を放つ。
それは魔弾ではない。 空気に漂う魔素の流れを読みきり、それに矢を乗せる。
手元を離れた矢は、1つの生物のようにグレンたちに向かった。
「ただの矢ならば」とグレンは剣を抜く。
高速……かつ変則的な軌道の矢であった。 しかし、グレンの剣は見事に切り落としてみせる。
無論、ダークエルフの矢は1本ではなく連射――――いや、弾幕と言っても良い。
グレンはエミリとケイツを庇うように立ち、矢を落としていく。
「――――っ!(まさに矢継ぎ早……動けぬ。逃走を防ぎ、この場に足止めする事が目的か?)」
ここで、ダークエルフの狙いは近接戦闘だと察する。
しかし、ダークエルフは矢を止めた。
駆ける速度はそのままに、低い体勢。まるで狼といった四足獣を連想させる。
そして魔力を宿した両手で地面を叩いた。
「――――これはッ!? 4人に増えた! いや、違う! 錬金術?」
走ってくるダークエルフ。その周囲から土が盛り上がり、彼女とソックリな影が出現。
その光景に驚くグレンたちにダークエルフは、
「その通り……こいつは錬金術によって作ったアタイの分身――――ゴーレムさ! さぁ喰らって死ね!」
ゴーレムの偽ダークエルフを含んだ4体(4人?)の同時攻撃がグレンを襲う。
しかし――――
「させません。貴方が本体です!」
その声はエミリのものだった。
グレンに攻撃が集中した隙にダークエルフの背後に回っていたエミリ。
ダークエルフの首を背後から掴み取り、地面に叩きつける。
その細腕に、どのような怪力が潜んでいるのか?
「やるじゃん、お前……その気配はバートリ公爵の関係者か?」とダークエルフ。
「……そのように聞いていますが、私には彼女の記憶がありません」
「そうか……彼女は無事に逝ったか。冷たく、人形みたいに残酷だったが……悪い奴じゃなかった。少なくともアタイたち魔族の価値観じゃ、悪い奴じゃなかったね」
「そう言っていただくと幸いです。……ところで」
「ん? なんだい?」
「どうします? このあと?」
「続きはやらねよ。喧嘩はアタイの負けさ」とダークエルフは立ち上がった。
「ん~ 誰だっけ? 商人の……」と商人ケイツに声をかける。
「私は、ケイツです! 商人ケイツ……この森の移転について、話を持ってきました」
「あん? 森の移転だ?」と鋭い視線。
「ひぃ!」と怯えるケイツだったが
「いいさ、古いダチの忘れ形見……とは違うが、似たような客人だ。アタイは気分がいい。話だけでも聞くよ、ついてきな!」
彼女は立ち上がり、グレンたちを先導し始めた。
「そう言えば、人間の男!」
「ん? 私の事ですか?」
「アンタ、名前聞いていなかったな。なんて言うの?」
「私はグレン……グレン・ザ・ソリッドダウンと言います」
「グレン? どこかで聞いた事あるような……まぁいい。アンタも強かったよ」
「誉れ高きダークエルフさんに褒められるとは……これは光栄ですね」
「うん、次は本気でやりたいね。アンタ、この森の果実を食べただろ?」
「……」
「おやおや、だんまりかい。くっくっく……言い訳をしないタイプは嫌いじゃないね。あとで解毒剤やるよ」
「ところで、どこに向かってるんですか?」
「あん? そりゃ決まってるだろ? アタイの家さ!」
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