第4話 確認テスト

「おし、明日確認テストやるぞ」


何がおし、だよ。誰も確認テストなんかやりたかねぇての!


俺のクラスの担任である盛岡先生がそう言うと、俺と同じことを思った筋肉くんと丸い眼鏡くんがブーイングを起こした。


丸い眼鏡くんは、あらゆる物事を論理的に考えている人。つまり、変人というわけだ。筋肉についても筋肉くんとよく分からない会話を平気でできるし、なんなら、俺の隣に座る諏訪友香さんとどっこい。

諏訪さんは、筋肉くんの話を聞いていたとき、悲しいよね、寂しいよねと言葉を漏らしていた女子生徒だ。


俺がこの学校で過ごして2日目にして思うことはこのクラスは変人と変態によって構成されたクラスだということだ。筋肉くんと丸い眼鏡くんは言うまでもなく変人、いや変態?まぁどっちでもいいか。加藤は、いやいい。言ったら殺されそうな気がする。俺が考えているとき、なんか椅子を蹴られた。なぜにバレてるし········!


クラスメートらは盛岡先生にブーイングを言っているが、俺はそんなことを言うつもりはない。だって、盛岡先生に何かを言っても明日確認テストがあるという事実は覆らないから。つまり、俺は諦めたのだ。諦めただとあまり表現としてよくないか。戦略的撤退とでも言っておくか。意味は多分、似たりよったりだが。


「あー、大丈夫だ。このテストで赤点はない!だから、安心してぶっつかって砕けてこい!」


砕けるのかよ········


赤点がないというのはいいが、いや、砕けちゃダメでしょ········


次の日になって盛岡先生の言っていたことを俺たちは完全理解した。それは、


「大橋、お前解けきれたか?」


「········ギリギリ、な」


「まじかよ、俺解けきれなかったわ。いやーこの学校、エグいよな」


「ああ、あの問題量は人間業とは思えないものだ。国語や英語は別だが、数学は解け切らせることを思考に入れていないのだろう」


··········丸い眼鏡くん、そんなこと考えてるなら多分、お前解け切れたぞ······


頭いいのにもったいないなぁと俺は丸い眼鏡くんを見ていた。


「大橋くん、きみは解けきったといっていたな」


「うん?そうだけど」


「そうか、君はソウルソサエティから来た人材、だったか········」


·········どゆこと?


「確かにそうだな。ソウルソサエティの連中は、容赦がない。ところ構わず、剣を抜いてくるからな」


··········それ、別の漫画じゃね?筋肉くんの言ってるの丸い眼鏡くんとは別の漫画じゃね?そんな剣をガンガン抜くやつは俺の知ってる限りいねぇぞ。


「剣を抜くといったら、僕は洞爺湖のあの木剣がほしいね」


「あれか·········。見た目はただの木剣だが、実は違ってな、異世界転生したことで無双すんだよな」


だから、違ぇよ!!!!洞爺湖っつてんのになんで異世界転生!?あの漫画に異世界転生なんてねぇよ!つうか、木剣で異世界無双するってなに?魔法撃たれたら絶対折れるやろ。心と一緒に。


「それより早く帰ろうぜ」


こいつら会話すれ違っているのになぜか成立?してるからいつまで経っても話をしている。後ろの加藤なんていつの間にかいなくなってるからなぁ。周囲のクラスメートたちも半分くらいは帰っているし、残っているのは俺たちみたいに喋っている人だけだ。


名門校だから、てっきり、勉強の話題しか話さないと思っていたが、おもくそ外れた。


「大橋!」


おっ!これは、もしかして········










「トレーニングジム行こうぜ!」


違ぇよ!!!!!!!!

なんでトレーニングジムなんだよ!声かけられたからもしかして『遊びに行こうぜ』の一言があるかもしれないと期待したのに裏切られた!つうか、トレーニングジムなんて一人で行けよ!誰がついていくんだよ!いねぇよ!


「筋肉、僕も行く」


···············いたわ。丸い眼鏡くんがいたわ。というか、丸い眼鏡くん、筋肉くんのこと筋肉って呼んでるのか。


「おっ、眼鏡も行くのか。それじゃあ、行こうぜ」


··········筋肉くんは丸い眼鏡くんを眼鏡と呼んでるのか。この学校、普通に名字呼びしているのは少数なのか?じゃあ、俺も便乗して今後は丸い眼鏡くんのことを眼鏡くんと呼ぶか。


「大橋、おいてくぞ!」


「えっ?」


筋肉くんに腕を掴まれて俺は良くも分からず、筋肉くん行きつけのトレーニングジムに行くことになってしまった。なんなんだよ、これ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る