第11話 勘違いが知り合いに露見したときの恥ずかしさはえげつない。
キンコーンカンコーン。
授業終了のチャイムがなり、昼休みを迎えた。俺は、えへへっと薄気味悪い笑みを浮かべながら筋肉くんと眼鏡くんのもとへと歩き、
「学食行こうぜ!」
「お········おう」
「そ·······そうだな」
二人の顔はなぜだか引き攣っていた。どうかしたのだろうか。
「どうかしたのか?」
「どうかしてるのは君のほうだろ!なんだそのデレデレ顔は!ハツコイか!」
「いや、眼鏡、ハツコイは関係ないだろ······」
二人に問い詰められる形で俺は聞かれ、
「ここで言うのも何だし、学食で話させてくれよ」
「いや、そのな·······今の大橋と飯食ってたら俺たち多分、変態扱いされるだろ」
失礼な!俺は紳士そのものだぞ!なんたって諏訪さんに好かれている存在だからな!
✖本当は好かれてなどいない。しかし、大橋は今もなおその勘違いに気づいていなかった。
文句を言いながらも俺と学食を共にしてくれた。やはり二人はいいやつだ。ジャイアンなんかの比ではないくらいに。
学食では、多くの生徒達で賑わっていた。俺たちはすぐに行列となっているところへと歩き、その後ろに並んだ。昼時になると基本的に込むのだが、朝や夕方は空いている。まぁ、朝飯や夕飯を学食で済ませる生徒が少ないというただそれだけの話なのだが。
少しすると俺たちの番がやってきた。
「モリモリ定食で」
「ガツガツ定食」
「スイーツ定食で」
上から俺、筋肉くん、眼鏡くんだ。眼鏡くんはスイーツ系がおそらく好物なのだろう。それはそうとして、この学校の学食のメニュー名に注目したい。
モリモリ定食だとか、ガツガツ定食だとか。メニュー名を言われただけで脳内でどんなものが出てくるのか想像できる人はおそらく少ないのではないのだろうか。
簡単な説明をしていくと、
モリモリ定食
麺類が主でそれに天丼などがつく。麺類もそばやうどんなどが選べられ、トッピングも自由自在。学食のメニューで困ったら取り敢えずこれにするように俺はしている。
ガツガツ定食
肉が主。とういうか、ほぼ肉。肉で米が埋め尽くされ、女子の不人気具合がえげつない。筋肉くんみたいに筋肉をつけるために食べる以外は基本誰も頼まない代物だ。
他にもモソモソ定食だとか、ヒャハッー定食だとか。ヒャハッー定食は、なんか危険な気がして頼んだことはない。チャレンジャー精神はあいにく持ち合わせていないので。
頼んだものが手元にくると会計をし、すぐに席探しへと移る。空いている席はすぐに見つかり、俺たち三人はそこを占領して食べ始めた。
数分は黙々と食べ、その後、俺の話は開始した。
「実は、諏訪さんが俺のこと、好きなのが分かった」
「「···········」」
二人は無言で俺のデコを触ってきた。
「熱はねぇな」
「そうだね。36.5℃といったところだろうね」
「いやいや、熱はねぇから!」
いきなりデコを触ったと思ったら何?熱あるかの確認?何がしたいんだ!
「大橋が急に昨日見た夢の話をし始めたもんでよ」
「夢の話!」
はっ!?ゆ、夢!?いつそんな話を俺はしたんだよ!
「大橋、諏訪さんが夢の中で君の腕の中で寝ていたとしたら、それは夢だ。告白もそう。君は夢を見ていたんだ」
「いやいやいや、あれは夢なんかじゃない!」
そうだ。諏訪さんは俺を見て顔を赤らめていた。あれは、恋する乙女そのものだ。ラノベでめちゃくちゃベタな反応の一つだ。だから、諏訪さんは俺に惚れてるんだ。
✖ 諏訪さんは惚れてなどいない。泣き顔を見られて恥ずかしがっただけである。
「んなこと言ったって大橋。お前の見た目は平凡じゃねぇか。諏訪さんの
「はっ?」
今、筋肉くんはなんと言った?か、彼ピー?いやいや、聞き間違いだ。そうに違いない。
「諏訪さんに彼ピーがいるわけがない」
「それは失礼だぞ、大橋!!!!!!」
眼鏡くんが叫んだ。それのせいで学食にいる生徒たちからすげぇ見られている。
「ちょ、眼鏡落ち着け」
「いや無理だ。大橋は諏訪さんを侮辱した。万死に値する」
眼鏡くんの目がやばい。完全に殺し屋の目だ。普通の一般ピーポーに向ける目じゃない。
そんな空気に水を指すような声がかけられた。
「あれ?眼鏡くん。それに伊藤くんに大橋くん?」
そう、諏訪さんの登場である。だが、俺には気になることがひとつあった。
「学食にいたんだ」
「あの········諏訪さんのお隣に立っている男の人は」
「ええっとね·······私の彼氏」
なっ、か、彼ピーだと!!!!!!!
俺はつまり勘違いしていたのか?
✖ だからそう言っている。
「私行くね。ごめん、クラスの人と話してて」
「いいよ、別に」
話し方からイケメンだ。俺はそれに比べてフツメン。俺の昼飯はラーメン。
「筋肉くん、眼鏡くん。俺、勘違いしてたみたいだ」
「その、大橋。今日、飯おごるよ」
「僕はこのあと、飲み物をおごるよ」
「ああ、ありがとな」
俺の青春はまだ始まったばかりだし、こういうこともあるさ。きっと。
俺はそう思うことで今回の勘違い騒動の恥ずかしさをごまかした。
✖ ··········大橋の青春はそもそも始まっていない。なぜなら、高校生活が始まって一週間しか経っていないからである。
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