第22話 ピークを逃すと痛い目に合う
私は陸上部が活動をしているグラウンドへと来ていた。私が来たときにはすでに何人かいて、良太は私のすぐ近くに立つ面良池とかいう男と喋っている。
初めに会ったときに挨拶と自己紹介をしたのだけれど、何、面良って?どこらへんがいいわけ?良太はすごいイケメンイケメンと言っているけど、あなたのほうがイケメンだと思うのは私だけ?正直、名前負けならぬ名字負けしてる気がするわ。彼女がいるという話だからモテてはいるようだけれど、私の好みでは全くこれっぽっちもないわね。
「あれ?君は見ない顔だね?新しい入部希望者かな?どうなんだい、大橋くん」
「はい、青春先輩。マネージャーをやりたいと言うので今日、連れてきました。おい、加藤。挨拶」
「マネージャー希望の加藤雪女です」
「そうか。マネージャー·········うんうん、いいね。今日から活動できる感じかな?」
「はい」
「それはいい。今日はそこそこメンツがそろうからね、“入部前テスト”をやってもらおうか」
「あ···········」
良太が顔を青ざめて私に頭を下げてきた。
「きゅ、急に何よ」
「いや、めちゃくちゃ大事なことをいい忘れてた。この部活、入部するときに入部前テストってことでこの学校の校歌を歌うことになってるんだ、“朝礼台の上”で」
どういうことよ、それ!!!!!!!!はぁ?人前で歌えと?それも朝礼台!?恥ずかしすぎてできるわけないでしょ!!!
「りょ、良太もやったの?」
「···········やったけど、正直、思い出したくない」
どんだけやばいのよ、それ············。
「よし、セッティングも終わったし。加藤さん、どうぞ」
そんなにこやかな顔で地獄へ誘わないでよ。私は恐る恐るといった感じで朝礼台の上に登った。私を陸上部所属の人たちが見ている。
(これって、あれよね。4月に入っていればそこまで目立たなかったのよね?ピークを逃したせいでこうなってるのよね?)
早く決断できなかった私がにくい。ウジウジしている時間があったら、早く入部を決めて地獄を乗り越える心の準備をしていたのに。
私はすべてを諦めて、校歌を歌った。歌詞は一応、覚えていたから大丈夫だった。
歌い終えると大きな拍手があがった。
「すばらしいよ、加藤さん!君は有能なマネージャーになれる!」
『きみはヒーローになれる』みたいなノリで言わないで!
それから私はマネージャーの仕事を先輩たちに教わりながら1日をなんとか乗り切った。
もう二度とピークは逃さない。逃すと痛い目に合うから。
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