第25話 梅雨入りしても変わらない日常
物語は1週間ほど前に遡る。
もう6月も半ばになり、梅雨入りをした。雨の日が続く中、俺、大橋良太は学校へと向かう。
学校から徒歩10分程の位置に俺は住んでいて、登校中に多少は濡れるものの、気にならない程度で今のところ済んでいる。バイト場所も自宅から10分かからない程度のレストランであることも幸いだった。特に何も考えずに一人暮らしの拠点を決めてしまったが、その時の俺はなかなかの働きをしてくれているようだ。梅雨入りしたとしてもあまり濡れず、それでいて学校からも、バイト先からも遠くはない。そんな立地最強のアパートを借りることに成功している現状がそれを明確に表している。
学校に到着すると、傘を畳み、下駄箱へと向かうと、
「大橋くん、おはよう」
「おはよう、諏訪さん」
池の彼女である諏訪さんと会った。小説執筆に今も励んでおり、たまに書き上げた小説の感想をもらおうと俺に頼んでくることがあり、それがきっかけでそこそこ喋るようになった。
「池は一緒じゃないのか?」
「今日は別だよ?なにか池くんに用事でもあったの?」
「いや、いつも一緒にいるような気がしててさ」
「べ、別にいつも一緒じゃないよ」
ああ、かわいい。この慌てた顔はたまらない。そう、まるでバームクーヘンのよう。
⚫そのたとえはよくわからない
諏訪さんと教室へと向かう途中、
「池くんに聞いたんだけど、もう少ししたら、大会があるんだってね?」
「そうだな。俺も陸上の大会は久々だから、結構楽しみにしてるんだよな」
「応援に絶対行くから、頑張ってね」
「·····おう」
その応援先は俺ではなくて、きっと“池”なんだろうなぁ。なんというか、残念だ。
◇
授業が終わり、放課後になった。俺はリュックに教科書などなどを入れ込むと部室に向かう。
「良太、今日も部活行くわよね?」
「そうだけど。加藤も今から行く感じか?」
「そうよ。聞かなくても、見ればわかるでしょ?」
「······いや、わからん」
だって、加藤。まだ準備終わってないみたいだし、俺が準備終わるのを待ってた感がなんか感じられるし。気のせいならいいんだけど。
「取り敢えず、俺は先に行くな」
「ま、待って!」
俺はリュックを背負うと廊下へと向かおうとするが、加藤にリュックを引っ張られた。
リュックには教科書以外にも参考書が結構はいっている他、部活で使う運動着や靴なんかも入っているため、結構重い。だから、引っ張られるとどうなるか。簡単だ。転ぶ。
俺は後ろからの急な力に反応できず、ころび――――――そうになった。
「ご、ごめんなさい。だ、大丈夫?」
「いや、問題ない。それで加藤、なにかよう?」
「そ、その、もう少し待ってもらえるかしら。準備あと少しで終わるから」
「わかった」
俺と一緒に行くことが一体、何になるのかはわからないが、時間はまだあるし、焦らなくてもいいか。俺は加藤がいそいそと準備をしているのを眺めていた。
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