第9話 世の中には完璧な人はいない
俺は家に帰ると早速諏訪さんからもらったラノベ?を読んでみた。そのラノベは、異世界転生ものであった。結構、ラノベでも多くある異世界転生系は俺は結構好きだ。
特に好きなのはやはりリゼロ。あれは、めちゃくちゃ面白い。それだけでなく、最近は、デスマーチからはじまる異世界狂想曲。あれもまた面白かった。
諏訪さんもきっとそれらに似たようなシチュエーションが起っていくのだろう。
「さて、見るか」
俺はペラっとページをめくった。
俺は死んだ。
··············。
い、いきなり主人公?が死ぬのか。そうか。なんか言葉足らずな気もするが、まぁ、序盤だし。こんな感じでしょ。
1ページは真ん中に『俺は死んだ』と書かれているだけのほぼ空白のものであった。俺は先を読み進めていく。
俺は、高校生探偵工藤ペン一。幼馴染の毛利パンと遊園地に遊びに行って、黒ずくめの怪しげな取引を目撃し、取引に夢中になっていた俺は背後からくるもう一人のナイスガイに気づかなかった。ナイスガイに頭をぶっ叩かれた俺はそこで死んでしまった。
···········冒頭は完全に名探偵コナンのパクリだな。工藤ペン一もそうだが、毛利パンは適当過ぎないか?諏訪さんはツッコミを狙ってやったのか?だとしたら、それは、狙い通りなのだろうけど、これはなぁ。そんでこのあと、神と会って転生するんだろ?なんかもう典型的な転生ものだな。最近、多すぎてつまらないんだよね。ぶっちゃけ。主人公が現代知識を使ってチートするのもありふれてるし。まぁ、いい。まだ序盤だ。これから話が面白くなるかもしれない。
『やれやれだね。正義感をかざして死んでしまうなど情けない』
俺は目が覚めると目前にいるひげのおじさんにそう言われた。そのひげのおじさんはひげのおじさんだった。
「俺は死んだんじゃ·········」
俺は手のひらを見てそうつぶやくとひげのおじさんが、
『何当たり前のこといってんの?アホなの?アホなのですかぁ?』
なんか腹が立ってきた。
「あんたなにもんだよ」
『見て分からないとはアホを通り越してウンコだな』
「てめぇ、なめてんじゃねぇぞ!命が欲しけりゃ、さっさとはけ!殺すぞ!」
俺はここまで読み進めてパタンと閉じた。
「これモチーフはコナンじゃないの!?工藤新一くんどこ行ったよ!完全に悪役じゃねぇか!」
コナンは正義感あふれるイケメンでそれはもうってくらいの人気を誇る。それがこんな犯罪者?みたいな発言してたらスキャンダルだわ。ネットニュースでもちきりになるわ。諏訪さん、これはないよ。ラノベ云々関係なしにこれはない。工藤新一くんをモデルにするならもっとスマートな、それでいてきざったらしいセリフを言わないと。それとひげのおじさんの説明いる?いらなくね?『そのひげのおじさんはひげのおじさんだった。』って全然意味が分からないんだけど!これ絶対、抜いても問題ない部分じゃん!
俺は文句をたらしながらも先を読んでいく。
『あーぁ、そんなんでよく君は探偵なんてできたね?』
「あっ?お前に関係ないだろ」
『まぁ、良いか。それから君の質問に対してだが、私は“髪”と呼ばれてる。毛根は死滅しているがな』
そう髪は目に涙をためながら呟いた。
俺は再びパタンと閉じた。
この人イジメにあっとる!毛根死滅してるのに“髪”って。てっきり“神”と呼ばれてるかと思ったら“髪”って。ハハハッ、ああ、笑えねぇ。
諏訪さん、完璧な人かと思ったけどうん。正直言うと、文才、まるでないね。
世の中、完璧な人はいないのか。知らんかった。
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