第16話

お泊まり勉強会をしてから2週間がたって、ついにテストが帰ってきた。


俺の元には当然のごとく90点前後の高い成績の結果が帰ってくる。他人に教えながら高い点数を取れるなんて俺は天才。


そんな俺が時間をそいて教えた千紗は横でうなだれていた。いやぐっすり寝ていた。

寝る間も惜しんで勉強をしたからなー。否、させたからなー。


「もう勉強しないぃー」


寝言でも勉強から逃げようとしている。軽くトラウマを植え付けさせてしまったのかもしれない。

それでもしっかりと成果は出たようで全て赤点を回避するという偉業を達成していた。


自分がしたことに達成感を味わいながら千紗の方を眺めていると、横から元気いっぱいの声が聞こえてきた。


「夏目くん、千紗ちゃんを家に連れ込んであんなことやこんなことしたっていうタレコミが、神崎探偵事務所に舞い込んできているのですが?」


「んん?色々と誤解が生じているようだがただ俺たちは勉強会をしていただけだぞ?」


一悶着あったのだがわざわざこの女に言う必要はないだろう。そう思ってのらりくらりかわすことを決めたのだったが、


「それでは、千紗ちゃんがきょーすけが夜も寝かせてくれないって言っていましたけど、夜のお勉強会でもしていたんですか?」


そう言って煽るような笑みを浮かべる。

こいつ、何が目的なんだ……。


「言い方!言い方だろ。俺はだな、赤点を回避させるために千紗を特訓していただけだ」


「そうですか……。まぁそんなことは置いといてなんで私も誘ってくれなかったんですか!そのせいで私は赤点が……」


あぁと声を漏らす神崎。これは完全な八つ当たりだが、俺にちょっかいをかけてきたのは、ただ勉強会に誘われなかったのをなぜと言いに来ただけ。


「誘わなかったのはすまなかった。でもそんなに俺と勉強したかったのか?」


「ひ、ヒェッ。サブいよ、夏目くん」


完全に引いた目で俺を見てくる。


「あーあ。キモイこと言うから」


横で寝ていたはずの千紗が俺の事をディスってきた。美少女二人から引かれる現状。不幸だ……。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る