第8話

「これは大乱闘スカットブラザーズ。訳してスカブラと言ってだな?某人気キャラクターを使って遊ぶゲームだ」


「やってみないとわかんない。けど、わたし負けない。こういうのめっぽう強い」


そう言って、コントローラーを持つ。悪いが負けてやる気はさらさらない。これにおいては俺の右に出るやつは居ないだろう。暇な時いつもやっている俺が、初心者に負けることは無い。


◆◆


「きょーすけ弱い。相手にならない」


結果、俺が特大フラグを回収する形となってしまった。最初の方はボタン操作が慣れていない感じだったのだが、慣れてからは攻撃が当たらなくなってしまった。


「なんでそんなに強いんだ……?やった事ないんだろ?」


「わたしは敗北を知らない……。私の天才的頭脳にひれ伏せぇー」


そう言って、コントローラーを俺に向けてくる。


負けているのでぐぅの音も出ない。こいつが帰ってからは特訓を開始することを決めた京介であった。


「わたし、帰るね。楽しかった。」


俺たちはついつい7時半を超えてもなお、やっていた。どちらも熱中するタイプで、槻ちゃんはすぐに飽きてしまうので、こんなに真剣に誰かと向けあったのは久しぶりだった。


「家まで送るわ。夏だから日は昇ってるけど時間も時間だし、外はもう暗いだろ?」


「近いし、だいじょーぶ」


「不審者にあったらどうするんだ?お前は絶対に撃退できないだろ?それに俺がしたくてするんだ。気にしなくていい」


「そ、そう……?きょーすけがそう言うならそうする」


そう言って、俺たちは家を出る。暗闇を照らす街灯に群がる虫。それを見て、俺みたいだなって思う。


綺麗に光る槻ちゃんという存在に群がる虫の1人でしかないんだな。


なんて悲しいことを思うのは、まだ槻ちゃんに惹かれているからなのだろうか?って言うのはひねくれすぎか。


「夜にこんな美人なわたしと歩けるなんて良かったねー」

「あぁ、俺は幸せ者だなぁ。こんな綺麗な夜だと変な気を起こしてしまうかもしれないなー」


俺がそう言うと、ひゃっう、と変な声を出して反応する千紗。


「変な気って?」

「夜って俺一人しかいないみたいに感じるだろう?俺の中の厨二病心がくすぐられる。今は横にお前がいるから二人きりだな」


そう言うと暗くてよく見えなかったが、少し千紗は顔を赤くして、


「二人きりだけだったら、何の心配もしなくて済むのにねー。家に帰っても結局一人なんだけど」


そんな会話をしながら歩いてると高層マンションについた。気持ち、長いかなくらいの距離でいつでも行けるような距離にあった。


やはり庶民の生活から少し変わった雰囲気を纏っているマンションだ。色んな人の気持ちがこもっているが、全てが心地が良い気持ちばかりとは限らない。


「バイバイ。また遊びに行っていいかな?」


下を向きながら自信なさげに言う。こんなマンションに住んでいても、彼女自体はまだ高校生で俺と同じ人間なんだと思った。緊張もする同じ人間なんだと。


「いつでも待ってるぞ。ひまだからなー」


俺がそう言うと、俺が命令して作ってもらった笑顔より可愛く笑って見せた。


「うん。分かった」


そう言って彼女は自動ドアを開けて入っていった。見えなくなるまで見送ると、俺は一安心して自分の家に帰ろうと反対方向に足を進めると、そこには俺の見覚えのある人がいた。


俺と同じ制服を着た女の子。そう、俺のの槻ちゃんである。


「へぇ……、私に振られたら、違う可愛い子に手を出すなんていいご身分ですね。私への思いは所詮そんなものよね」


冷静に、夏に向かっている季節も冬になったのかというくらいの体温になった京介であった。


◆◆

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