第4話

4限目が終わるチャイムがなった。今日も何も得ず……。古典の授業が1番いらないよな。くだらん。


今日は謎の虚無感に襲われたまま、お昼まで過ごした。俺はいつも通り手作りのお弁当を槻ちゃんに届けるために動き出した。


「槻ちゃ、あっ!」


し、しまった……。 、忘れていた。俺と槻ちゃんは彼氏と彼女の関係でもなんでもないんだった。進んでいく足に心がブレーキをかける。


急に弁当箱が重くなった気がした。何事も無かったかのように、俺は席に戻った。


今日は記念日だったからちょっと頑張って、作ってみたのにな……。


誰にも食べて貰えないであろうピンク色のお弁当を眺めながら、ため息をつく。


青とピンクのお揃いのお弁当箱。やはり重すぎたのだろうか。


1人で食べようと自分用に作った青色のお弁当を開けると、横で寝ていた千紗が起きる。起き抜けにだらしのない声で呟く。


「ご飯の時間」


そう言って、目をこすっている。千紗は起きるなり俺のお弁当をみて、よだれを垂らしながら、目を輝かせるのだった。


「美味しそう。お母さん、料理上手なのね」


だが、残念ながら俺のお母さんは海外に出張しているバリバリのキャリアウーマンなので俺の弁当なんて作っている暇なんてない。


お父さんはいつも忙しそうだから、料理や家事は俺の担当になっている。まぁ、勘違いされるくらい上手に作れていたのだったらい嬉しい限りである。


まぁ、食べてくれる人がいなければ意味なんてないけどさ。


「これは俺が作ったんだよ。千紗は今日学食なのか?」


俺がそう聞くと小さく縦に首を振った。そしてカバンを中を探る。最初はゆっくり探していたが徐々に体を乗り出して探す。


そしてついに探すのをやめた。ゆっくりと顔を上げ、俺の方をチラリ、チラリと見る。


「今日、お金ない。ついでに弁当もない……終わったぁ」


そう言って情けなくお腹を音をならす。そしてもう死ぬぅと机に体を預けている。


「あぁあぁあがぁ~~」


女の子が絶対に出してはいけないような汚い声を出して俺にSOSを求めてくる。口に出して助けてと言っていないが全身で伝えてきている。


そんな彼女に俺は救いの手を差し伸べてやろうと思う。しかたなくだ。


「ここにひとつ余った弁当があります。このお弁当をあげるから、俺のお願いをひとつ聞いてくれるかな?」


「食べる。けど、お願い?ま、まさかえっちぃやつ……?きょーすけ大胆」


「そんなんじゃないわ。で?いるのかいらないのか?」


「いる、と思う……」


そう言ったので俺はお弁当を渡した。しかしそのお弁当には一癖あって、少々恥ずかしいものではあった。


「きょーすけ、このハートは何?」


そうである。朝の俺は弁当にまで槻ちゃんへの愛を詰めていたのである。そしてその愛をほかの女の子に横流ししているという状況である。


「もしかして彼女さんにわたそうとしてた?」


俺は同意の意味を込めて沈黙を貫く。すると千紗は桜でんぶで、ハートを作られたお米を勢いよく食べた。


「え?おい、そんなに急いで食べたら喉をつまらすぞ?って遅いか」


喉を詰まらせて苦しむ彼女に水筒を渡す。彼女がお茶を飲んで落ち着いて、こういった。


「きょーすけのハート食べた。もう彼女への愛はわたしの腹の中」


「ん?慰めてくれているのか?」


そう言うと彼女は少し嬉しそうな雰囲気を出して


「そんなんじゃない。きょーすけのお弁当が美味しかっただけ」


といってまたお弁当に目を向けると黙ってバクバクと食べていた。

そんな姿を見てなんでこんなに胸に来るものがあるのかと思うと、あぁそうかと腑に落ちた。


(久しぶりにお弁当美味しいって言って貰えたな。)


そんなことに嬉しいと感じる自分がいることに驚いている。自分がした事を褒められるのは相手が無気力な女の子だったとしても嬉しい。


♣♣

感想を伝えて貰えるって大切ですよね。


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