第12話

あの話は俺がいじられておわり、トイレに休憩に言った時のことだった。急に手首を掴まれて人影のない階段の踊り場まで連れていかれる。


この風貌は絶対に槻ちゃんだ。踊り場まで連れていき壁にまで俺を押しやって壁ドンのような姿勢で俺に言う。


「ねぇ……。京介、童貞じゃないってホントなの?私とはしてないし、私以外の誰かとシタの?ねぇ、答えてよ!」


まじの顔で問い詰めてくるその顔には真剣味が帯びており、とても俺をからかうことが目的でやっているとは思えない。


けれども槻ちゃんが俺の事を知りたがるなんて考えられない。


「さぁな?まず俺が槻ちゃんに言わなきゃいけない義務はあるのか?」


「うぅ……。え、あ、あるわ!京介の元カノだったから、私がしたんじゃないかって疑われたら困るのよ」


「それもそうだな。でも、そう思うやつなんていないんじゃないか?俺の事を毛嫌いしてたじゃないか。それをみんな知ってる」


「それもそうだけど……。そこまで隠すってことはほんとにしたの?ねぇ?私の京介だよね?なのになんで?なんで?なんでしたのよ?ねぇ教えて?」


そう言って俺の事を睨みながら、俺にじわじわと近寄ってくる。その目にはいつものハイライトはなく、恐みがあった。たが俺は余裕があった。


「いえ、童貞ですがなにか?」


決まった。渾身のとぼけ顔と一緒にかましてやった。

槻ちゃんは一瞬驚いた顔になって理解するまでに少し時間を要してから、口を開いた。


「え?してないの?」


「当然です」


「そうなの、ね……」


そう言って彼女は去っていった。取り残された俺はなぜか楽しかったという謎の感情を手にしていた。


何故あんなに好きだった人に、壁ドンのような事をされてもドキドキしなかったのだろうか?いやしていたのかもしれない。


だってまだ槻ちゃんのことを好きなはずなんだから。でも、もしそうでは無いとしたら今度は何を生きがいにして生きていけば良いのだろうか?


そんなことを思いながら教室に帰った。そして気持ちを切り消えるために、お茶を含んでのんびりしていると千紗からノートを端をちぎった紙を渡された。何かと思って見てみると、


『きょーすけは元カノとしたんですか?』


普通なら何を?と返すはずなんだが、さっきまでのくだりがあったので、千紗の馬鹿みたいな文章に的確に返信することが出来た。


『バキバキ童貞です』


とだけ書いて渡すと千紗はそれを見た瞬間に机におでこを合わせて笑っていた。おい、俺の童貞で笑うな。そして早くその紙を処分しろ。誰かに見られたら終わってしまう。


そんなことを思っていると最悪の出来事がおこった。


「千紗ー、何を見て笑ってるの?そこ紙はなに?」


そう言って取り上げる。千紗がやばいと思って、手を伸ばすが、可愛いくらい短い彼女の腕では届くことはなかった。


「へぇ、夏目くん、可愛いぃ~」


そう言って神崎は俺の方を見てきた。そしてその瞬間に俺の人生の終わりのチャイムがなった。


◆◆

ご読了ありがとうございます。感想と星お待ちしております!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る