第10話
「なぁ、なんでさっきからそんなに挙動不審なんだ?」
今日学校に来るといつもは無反応の千紗が俺の方を見ては目を逸らしてという行為を繰り返している。
「教えない。秘密なの」
そう言ってまた前を向く。特に怒っているという気配はしない。どちらかと言うと喜んでいるような上機嫌だ。
対して俺はなんとも言えない心の重さに襲われていた。同じクラスでもある槻ちゃんに睨まれているのだ。
「夏目くん、やっぱり槻と何かあったのかな~?これはラブコメの予感!」
そう言って俺の席によってきたのは、神崎千歌。
クラスでは陽キャとして生きている。
俺とは無縁なのだが、何故か俺に、いや槻ちゃんに執着しているんだと思う。
「ほら、話してみなさい。美少女な神崎ちゃんにね?ほらほら?」
「なんもないって。あとお前は俺のタイプじゃないからな?美少女と認めん」
神崎は綺麗だと思う。白い髪をピンクのゴムで括っているポニーテール。体操服でいつも生息していて、運動部を色々と兼部しているらしい。
こういうキャラは頭は馬鹿というテンプレがあるがきっちりと守っている。彼女の明るめの声に元気が出ると言われるし、常にニコニコしているやつだ。
「え!?私の魅力に気づかない人がいたなんて衝撃。まぁ、君は馬鹿だから気づかないだけだと思うけどね?鈍感だし?」
「まぁ、俺の恋愛事情なんかよりも今日の小テストの方が、今日のお前には重要なんじゃないのか?」
「し、しまったぁぁぁ!今日はノー勉だし、さらに単語帳忘れたぁ……。夏目くん、単語帳貸してくんない?」
「いいぞ?俺の事をぎゅっとしてくれたらしてやる」
そう言うとさっきまでの元気はどこへやら。顔を赤くしてからやけくそに怒るようにして、
「えっ///――さ、さてはわたしが、恋愛経験がないからってからかってるな?殺す。殺してやる……」
「冗談だって、ほら」
そう言って英語の単語帳を渡す。神崎は受け取ると俺の事をジト目で俺の事を見てから、疑問の言葉を口にする。
「夏目くんは何故か勉強できるよね?何か秘密でもあるんじゃ……?」
「あ、俺か?予習と復習をしてるだけだが?」
「う、うざぁ……」
そう言ってとぼとぼと自分の席に帰って行った。あいつが来ると騒がしい。まさに台風のようなやつだ。
入学式早々から俺の事をストーカーバカだの色々といじってきた記憶がある。
「へぇー、モテるんですねー……」
顎に手をついて俺の事を千紗がこっちもジト目で見てきていた。
「決してそんなことはない。俺がもてたのは幼稚園の年少まで。槻ちゃん会うまでだからな!」
俺は一途を貫いてきたんだ。ちょっとくらいよそ見をしても、と今は思う。
だが俺の事を凝視している槻ちゃんがいま、怖いので下手な動きは出来ないってことだけは分かる。
♣♣
女子三人から睨まれるって最高ですね。
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