第26話

「復讐という訳か...」


 しばらくしてからハインツがポロッと呟いた。


「いやいや、単なる八つ当たりでしょ? 自分が男にフラれたからその腹いせに他人を不幸にしてやろうなんて、単なるイタい女じゃないですか。同情する余地なんてカケラもありませんよ」


 ナズミが容赦なくぶった斬る。


「それはまぁそうなんだが...ちなみにワインツ、国王に強制送還されなかったら、次に誰を狙う予定だったか分かってるのか?」


「......」


「あぁうん、皆まで言わなくても分かった...さて、どうするかだが...」


「話は全て聞かせて貰ったわ!」


 突然アズミが現れた。


「アズミ!? お前どっから湧いて来た?」


「人をダンジョンモンスターみたいに言わないで頂戴!」


「大方、武器を没収したから怖くなくなって出て来たんだろ?」


「そ、そんなこと無いもん!」


 ハインツに図星を突かれたアズミはちょっと焦ってる。その時、ナズミがニッコリ笑いながら懐に手を入れた。


「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」


 アズミが仰け反った。


「お前ら落ち着け! それで!? 出て来たからには何か策があるんだろうな!?」


 ハインツが割って入った。


「も、もちろんよ! 目には目を! 歯には歯を! イタい女にはイタい男をぶつけるのよ!」


「おい、それってまさか...」


 ハインツの顔が青褪める。


「そう! 我が学園の最終兵器、オンナダイスキーを宛がうのよ!」


 アズミが高らかに宣言した。


「オンナダイスキーってあの?」


「そう、女と見れば誰でも口説く」


「良く『ハァ~イ ベイビー達~』とか『君の瞳に乾杯!』とか言ってるよな」


「時代考証が昭和で止まってますよね」


「口にバラを咥えているのを見た」


「それってどこのベルバラ?」


「時代考証が中世まで飛んでんじゃん」


「その後、口の中が血まみれになってたみたいよ?」


「清々しいくらいのアホだな」


「トゲを抜くということを知らないのか?」


 などなど...みんなして散々貶し捲った。


「フム、いいんじゃないか?」


 ハインツが纏めた。


「い、いいんですか!? 国際問題になったりしませんか!?」


 マインツが慌てて確認する。


「先に問題行動してんのはあっちなんだから、何も問題無いだろ? 寧ろオンナダイスキーを引き取ってくれたら万々歳じゃないか?」


「そういう問題じゃないような気が...」


「決まりね! オンナダイスキーには私から連絡しておくわ! ではサラバ!」


 そう言ってアズミは風のように去って行った。


「アズミのヤツ、なんかキャラ変わってないか?」


 ハインツの呟きは誰にも聞こえなかった。

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