第4話

「ホヘットさん、お疲れ様でした。もう帰って結構ですよ」


 アズミは自分の侍従にホヘットを送らせた後、全員に向かってこう言った。


「さて、実はここからが本題です。もうちょっと付き合って下さいね。ただ本題に入る前に、男性陣の方々にお聞きしたいことがあります。今どんな気分ですか?」


 そう問われた男性陣は顔を見合わせ、代表してハインツが答えた。


「上手く言えないが...霧が晴れたような...モヤモヤが解消したような...なんだか清々しい気分だ」


「それは良かった。解毒は上手く行ったようですね」


「解毒だって!?」


 ハインツが目を剥く。


「解呪と言った方がいいんですかね? とにかくあなた方は魅了されていたんですよ。あの女に...ホヘットに」


 男性陣は声も無かった。


「最初にあなた方がおかしくなり始めた時期と、あの女が生徒会室に出入りするようになった時期とが、ちょうど重なっていたんで怪しいと思っていたんですよ。そうしたら案の定」


 そこでアズミはビニール袋に入れたクッキーを懐から取り出して見せた。


「このクッキーに見覚えありますよね?」


「それは! 差し入れだと言ってホヘットが持って来た手作りクッキー!」


 ハインツが叫ぶ。


「えぇ、その通りです。調べてみたら、このクッキーに魅了の効果を持つ媚薬が練り込まれていました。それともう一つ」


 アズミはビニール袋をもう一つ取り出した。


「ティーポットに残っていた茶葉です。この茶葉からも同じ成分が検出されました。お茶を入れてたのは?」


「...ホヘットだ...」


「つまりこうしてずっと皆さんを薬漬けにしてたって訳ですよ。皆さんが生徒会役員であるのを良い事にね」


 そう、生徒会長がハインツで、副会長がマインツ、書記がヤインツ、会計がラインツ、庶務がワインツとなっている。


「なんてことだ...」


 ハインツが項垂れてしまった。


「そもそもなんで部外者であるあの女を生徒会室に入れたんです?」


「彼女がその...手伝いたいって言うから...」


 ハインツの歯切れが悪い。


「はぁ...それで絆されちゃったんですか? 全く...ちょっと可愛いからと言って...男ってのはこれだから...」


 アズミがため息を吐いた。男性陣は何も言えない。


「まぁでも、やっと正気に戻ったんで良しとしますか。疑いなく飲ませるシチュエーション作りに苦労しましたけど」


「えっ!? ということはこのお茶が?」


「えぇ、あの女のせいで疑心暗鬼になっていたあなた方に、自然に勧めてるような演技をしました。上手く行きましたね」


「道理で何度も勧めて来た訳だ...」


「美味しかったでしょ? ちゃんと茶葉は厳選しましたからね」


 そう言ってアズミは笑った。

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