第11話
「そのまさかですよ。他国を侵略するとか国境の紛争を解決するとかの可能性が無くなって、最後に残ったもの言えば...」
「クーデターか...」
アズミの言葉を引き継いでハインツが重々しく呟く。
「ご明答。男爵が関与を疑われているのは、隣国の四大公爵家の内でも一番タカ派と呼ばれている家だそうです。その事実に行き当たった時、これはとてもじゃないけど私達の懐の中だけで収まるような案件ではないと判断し、陛下にご注進申し上げた次第です」
「そうだったのか...」
ハインツはやっと納得したような顔になってそう言った。
「事は一国の興亡を左右するような、そんな事態にまで発展しそうな雰囲気になって来ましたからね。ここまで大事になってしまえば、国同士の話にした方が良いでしょう。国王陛下としても自国の貴族が働いた不正を詫びるより先に、隣国におけるクーデターの可能性を示唆することで、隣国に対して政治的に優位に立ちたいという思惑もあったでしょうから」
「確かにな...それにそもそもの発端が隣国の公爵家からの誘いで、男爵家は見事そのエサに食い付いただけっていう風に話を持って行ければ、ウチには非が無いと言い切れるかも知れないよな」
「えぇ、ウチも全くおとがめ無しって訳には行かないでしょうけど、何らかの譲歩を引き出せそうですもんね」
「そうだな。そこら辺の政治的なやり取りは大人達に任せるとしよう」
「えぇ、そして殿下達に対するお仕置きも、大人達にお任せすることにします」
「うぐっ...やっぱりお仕置きはあるんだよな...そりゃ当然か...」
ハインツは頭を抱えた。
「家に帰ったら覚悟して下さいね? 男性陣には全員、ご両親によるお説教とお仕置きが待ってますから」
アズミはとても良い笑顔を浮かべてそう言った。
「あぅ...」
それに対してハインツは、まるでこの世の終わりのような顔をして俯いてしまった。
「さて、それじゃあ帰りましょうか」
そう言ってアズミは席を立った。だがハインツが引き留める。
「あ、アズミ! ちょっと待ってくれ!」
「まだ何か?」
ハインツはモジモジしながらこう言った。
「あの...その...本当に済まなかった...それでその...婚約を解消したりは...」
「したいですか?」
ハインツはブンブンと音が鳴る勢いで首を横に振った。
「安心して下さい。私含めて女性陣全員その気は無いですよ」
そう言われてハインツはホッとした表情を浮かべた。だが...
「ただし! 二度目はありませんからね!」
アズミにビシッと言われたハインツは、これまた音が鳴る勢いでブンブンと首を縦に振った。
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