第19話

「あの~? 一ついいですか?」

  

 ナズミが手を上げる。


「ナズミ、何か名案があるの!?」


 アズミが勢い込んで促す。


「あ、いえいえ、そうじゃなくてですね? そもそもの話、王女様の目的ってなんなのかなぁ? って思ったんですけど」


「目的ってそれは...」


 そう言われてアズミは考え込んでしまった。


「男性陣に粉掛けたりしたんでしょうか?」


「いや特には...」


 ハインツは思い出しながらそう言った。


「僕にも特に何も...」


 マインツが続く。


「俺にも何もなかったな...」


 ヤインツも続いた。


「ボクも同じです...」


 ラインツも更に続いた。


「あ、私は口説かれました...」


 ワインツが言い辛そうに呟いた。


「「「「 いやお前かよ! 」」」」


 まさかの展開に男性陣がキレイにハモった。


「えぇ、なんでも教会の活動に興味がお有りらしくて『今度、ミサにご一緒させて頂いてもよろしいかしら? その後、出来れば二人っきりになりたいですわ!』と仰って、その...私に体をグイグイと押し付けて来られまして...目もなんだか上気した感じでウルウルしてました...」


「ワインツ様、私初耳なんですけど?」


 ナズミの声が固い。


「ご、ゴメン...なんだか言い辛くて...」


 ワインツは消え入りそうな声で呟いた。


「それで? なんて答えたんですか?」


 ナズミの声が冷たい。


「み、ミサには参加して貰ってもいいけど、ふ、二人っきりになるのはちゃんとご遠慮頂いたから! ほ、本当だからね?」


 ワインツが必死でそう言った。


「いいでしょう。信じますわ」


 ナズミにそう言われてラインツはホッとした表情を浮かべた。


「ふうん...ということは、まさかのワインツ様狙いってことで...あっ! ワインツ様、まさかなんて言ってすいません...」


 アズミはうっかり発言を謝った。


「あ、いえいえ、お気になさらず。自分でも分かってますから」 

  

 そう言ってワインツは苦笑した。


「でも...だとすれば私達に絡んで来た理由が不明よね...カズミ、チリーヌ王女って隣国ではどういった評判なの?」


「それが...実はつい最近まで外国にずっと留学していたみたいで、詳しいことは良く分からないんですよね...」


「外国ってどこ?」


「海を渡った海洋諸国連合です」


「そう...海洋諸国連合に詳しい方はいらっしゃいます?」


 誰も手を上げない。


「仕方ないわね...カズミ、出来るだけチリーヌ王女の情報を集めて頂戴。ナズミ、ワインツ様の手綱をしっかり握ってチリーヌ王女に付け入る隙を与えないように」


「「 分かりました 」」


 アズミが場を締めた。

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