話し合いをしましょう
真理亜
第1話
ここイロハニ学園は国のTOPを担うエリートを養成するための学園である。
通っているのは王侯貴族を始めとする貴族のみで、将来国の重要なポストに就くべく日夜研鑽に励んでいる。
そんな学園に最近不穏な影が漂っていた。その渦中に居るのは男爵令嬢のホヘット。彼女は一年前に男爵家に引き取られた婚外子である。今年入学して来た。
元々が貴族としての教育を受けていなかった庶民なので、貴族のマナーに疎く、特に異性との距離の詰め方に問題があった。端から見ると妙にベタベタとくっ付き、媚びを売っているようにも映った。
しかも彼女は、決まって婚約者の居る男子生徒ばかりを狙って近付いているように見えた。特に高位貴族の子息がターゲットになっているようだ。
彼女の容姿は可憐で儚げで、思わず守ってあげたくなるような雰囲気を醸し出しているため、夢中なってしまう男子生徒が後を絶たなかった。
そうなると当然、婚約者との間はギスギスしたものになってしまう。彼女が入学してから僅か半年の間に、破局を迎えたカップルが何組も出ていた。
そのような状況を打破すべく動き出したのは、公爵令嬢のアズミである。彼女はこの国の第2王子ハインツの婚約者である。彼女とハインツの仲も、ホヘットの存在によってギクシャクしたものになってしまった。ハインツの側近の有力貴族の子息達と、その婚約者達の仲も同様である。
ある日、アズミは会議室に関係性全員を集めた。
「皆さん、お忙しい中お集まり頂きましてありがとうございます」
会議室のテーブルには、正面から見て右側に男性陣。第2王子のハインツ、宰相子息の公爵令息マインツ、騎士団長子息の侯爵令息ヤインツ、魔道騎士団長子息の辺境伯令息ラインツ、大司教子息の伯爵令息ワインツが並び、
正面から見て左側に女性陣。マインツの婚約者である侯爵令嬢のカズミ、ヤインツの婚約者である辺境伯令嬢のサズミ、ラインツの婚約者である伯爵令嬢のタズミ、ワインツの婚約者である子爵令嬢のナズミが並ぶ。
既に会議室内は険悪なムードに包まれていた。
「それで? 僕達をここに集めた理由を聞かせて貰おうか?」
不機嫌さを隠しもしないでハインツが問い掛ける。
「まぁまぁ、もうお一方この場にお呼びしていますので、その方がいらっしゃるまでお茶でも飲んでお待ち下さいな」
そう言われては仕方ない。全員がお茶を飲みながらしばし待った。と、そこへ「トントン」と控え目なノック音がした。
「どうぞ~」
アズミが入室を促すと、
「し、失礼します...」
オドオドした様子でホヘットが入って来た。驚く男性陣の隣の席に腰を下ろす。
「これで役者は揃いました。さぁ、話し合いを始めましょうか?」
ホワイトボードを背にアズミがそう言った。
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